高齢者のケアと行動科学
Online ISSN : 2434-0553
Print ISSN : 1880-3474
24 巻
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 山中 克夫, 大庭 輝, 野口 代
    2019 年 24 巻 p. 2-12
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/20
    ジャーナル オープンアクセス
    「ケアと研究の出あいの場」という設立当初の学会の理念に沿い,研究委員会は,実践感覚を持ち,実践現場との協働を積極的に行う「実践的研究者」の育成を目指している。同時にケアの現場の会員には,研究感覚を持ち,実践現場で疑問に思ったことについて研究者と協働で研究を行う「研究的実践家」を育成したいと考えている。研究委員会は,そうした協働の促進や「実践的研究者」や「研究的実践家」の育成をねらい,2018年の第 21 回埼玉大会において,「実践家と研究者の協働」「研究計画の立案」「研究助成の書類の書き方」に関するワークショップを開催した。本稿はその内容に「学会発表の仕方」を加えてまとめたものである。また,学会全体を通じた後進の育て方,職場で学会発表を促進するための提案,協働を進めていくための今後の課題についても触れた。本稿が契機となり,若手から協働による研究助成の申請や研究発表が増えることを期待する。
  • 齋藤 建児
    2019 年 24 巻 p. 13-24
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/20
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,高齢者が主体的な選択に基づいて外出する場所を所有するならば,ストレスフル・ライフイベントを体験した場合でも,その程度に関わらず主観的ウェルビーイングが増進する直接効果があるという仮説をたて,その検証を目的とした。本調査は,山形県酒田市に住む一般高齢者 400 人を対象に無作為抽出法による郵送調査を実施し有効回答数は 222 人あった。二要因の分散分析を用いて分析した結果,1) すべてのストレスフル・ライフイベントと主体的外出場所との間で交互作用は認められず,2) 主体的外出場所と「主観的健康感の減退」,「生きがい感の減退」,「配偶者との死別」の 3 つのストレスフル・ライフイベントにおいて主効果が認められた。このことから,主体的外出場所があることは,ストレスフル・ライフイベントの体験・認知の程度に関わらず,主観的ウェルビーイングが増進する直接効果を持つことが示唆された。
  • 佃 志津子, 大川 一郎
    2019 年 24 巻 p. 25-41
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/20
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,人生に危機をもたらす病いの体験からの肯定的変化について,中高年の女性がん体験者に焦点をあて,肯定的変化とそこに関連する要素,要素間の相互作用を明らかにすることを目的とした。40 代から 60 代の 9 名(乳がん 7 名,子宮がん 2 名)に面接調査を行い,内容分析を行った結果,43 の概念から 18 のカテゴリー,12 の大カテゴリーに統合された。がん体験者の肯定的変化の研究に見られる外傷体験後成長(posttrau- matic growth ; Tedeschi & Calhorn, 1995)との比較において,「変化への希求」「行動レベルでの変化」など,新たな要素が認められた。属性による傾向としては,罹患からの経過期間が 5 年未満の 50 代の乳がん体験者で子どもがいる方が,肯定的変化および関連要素を多く表現していた。カテゴリーの関係は,相互に作用するものが多くみられ,内的要素と外的要素を行き来しながら変化するモデルが示された。がん体験の様々な苦悩のなかで,外的な資源を動員しながら,熟考し,気づきや変化を認識するとともに,変化の後も,新たな気づきや外的な資源と関連しながら,変化していくことが示唆された。中高年の女性がん体験者における関係性は複雑であり,選択と決定にも影響することから,支援に携わる者は,個別の心理社会的背景,社会との関係を考慮した支援が必要である。
  • 伊藤 順子
    2019 年 24 巻 p. 42-52
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/20
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,高齢者ボランティア活動の意義と課題について,とくに参加動機とボランティア活動満足感,活動から得た利益および生活満足度との関連を明らかにすることである。研究の方法は,調査研究で,島根県東部地域でボランティア活動をしている 60 歳以上の高齢者約 500 名を対象に郵送調査を行った。分析方法は,相関分析,多元配置分散分析で分析した。 効回答数は 229 名であり,回収率は 43%であった。分析をした結果,ボランティア活動満足感,ボランティアから得た利益には,活動動機の自己志向性と他者志向性に有意な関連があった。両志向性がともに高いほど,ボランティア活動満足感,ボランティア活動から得た利益が多いこと,両志向性がともに低いほど活動満足感も得られた利益も少ないことが示された。また,統制変数とした活動開始時期が 10 年以上前の者にボランティア活動から得た利益も大きくなることも明らかとなった。生活満足度は,活動動機と有意な関連はなかった。
  • 栗原 明美
    2019 年 24 巻 p. 53-62
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/20
    ジャーナル オープンアクセス
    特別養護老人ホームで看取り介護の選択を意思決定するにあたり影響を及ぼしている要因を明らかにするために,特別養護老人ホーム入居者の家族で,施設から看取り介護について説明を受けた 107 名に対し,自記式質問紙調査を行った。回答者家族を看取り介護了承群,迷い群,未了承群の 3 群に分け,「入居者の認知機能」,「入居者の活動度」,「施設の介護力」,「家族の生き方」,「家族の死生観」,「入居前の家族の介護負担感」について比較した結果,了承群は迷い群や未了承群に比べ,入居者の認知機能を低く評価し,施設の介護力は高く評価していた。
  • 石川 愛, 野口 代, 山中 克夫
    2019 年 24 巻 p. 63-76
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/20
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,認知症の行動・心理症状(BPSD)の対応について,介護現場における行動コンサルテーション(BC)全体のパターンをふまえた系統的な手順を考案し,フローチャートを開発した。その上で,BPSD がみられる 6 事例に BC を実施し,適用可能性を検討した。BC のパターンは,① BPSD の概況確認で緊急性が認められ,医療機関等の適切な施設へのリファーを勧める,② BL 期の情報収集のみを行う,③介入計画を立案し職員に実施してもらう,④介入計画を実施したが BPSD が軽減せず,介入厳密性の点から問題点を明らかにし改善策を実施するの 4 つを設定した。適用可能性は,各事例の BC の内容が手順のフローチャートに沿いBC のパターンに網羅されていたか,職員から相談された問題が実際に解決したか,上記の③ ④の介入したパターンで実際に標的行動が軽減したかの 3 点を検討した。結果では,6 事例中 5 事例の BC の内容が手順のフローチャートに沿って BC のパターンに網羅されていた。なお該当しなかった 1 事例は,④のパターンで問題が解決せず,標的行動の見直しを要するものであった。また,全事例で相談された問題は解決し,介入により標的行動が軽減したことが職員により確認された。今後は,開発した BC の手順のフローチャートに標的行動の見直しのパターンを加え,頑健な研究デザインにより,その有効性を検証する必要があると思われた。
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