高齢者のケアと行動科学
Online ISSN : 2434-0553
Print ISSN : 1880-3474
外来通院中の軽度認知障害と初期認知症の高齢者本人におけるニーズおよび生活への願望の把握
藤田 雄大庭 輝宮 裕昭中野 明子園田 薫杉野 正一
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 25 巻 p. 84-98

詳細
抄録
本研究の目的は,第一に外来通院中の軽度認知障害(MCI)と初期認知症の高齢者本人のニーズおよび生活へ の願望の内容と出現頻度を把握することであり,第二に MCI と初期認知症それぞれのニーズおよび生活への 願望の特徴を検討することである。対象はもの忘れ外来通院中の MCI 17 名,初期認知症 20 名の計 37 名であ った(男性 11 名,女性 26 名,平均年齢 80.6 ± 5.50 歳)。半構造化面接によりニーズおよび生活への願望を 聴取し,得られた回答をテキスト化し,計量テキスト分析をした。計量テキスト分析には KH Coder 3 を使用 した。調査の結果,ニーズがひとつでもあると回答したのは MCI の 58.8%,初期認知症の 35.0%であり,初 期認知症の本人は身体面に関するニーズ以外はほとんど表出しない特徴があった。MCI と初期認知症の比較 では,初期認知症は MCI に比して否定的感情が少なく,夫との関係に関するニーズが 0 個だったことが特徴 的であった。一方,生活への願望はすべての対象者から表出された。MCI,初期認知症ともに最も出現率が高 かったのは,現在の生活の維持・継続であった。ただし,初期認知症は MCI に比して自己充足的な活動や楽 しみについて表出しない点が特徴的であった。ニーズや生活への願望の抑制には,認知機能障害だけでなく, 発症前後から長期間に渡って傷ついた自尊心も影響すると考えられた。
著者関連情報
© 2020 日本老年行動科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top