抄録
本研究では,認知症サポーター養成講座と複数の介護サービスのオンライン見学を通じた実際の認知症の人々の様子の観察や認知症の人々との交流を組み合わせた認知症理解促進のための短期プログラムを考案し,実感・印象,態度,知識の変容の点からパイロットスタディを行った。対象は認知症に関する専門授業を未受講の大学生6名であった。結果では,実施前後で複数の認知症に関する実感・印象に有意な改善が認められ,認知症の人に対する態度も改善傾向がみられた。自由回答の記述やグループインタビューへの発言も実施前は認知症の脅威や症状に関するものが多かったが,実施後では認知症や認知症の人の状態像が多様で柔軟なものへと変化した。しかし,実施前後で認知症の知識に有意な改善は認められなかった。よって本プログラムは認知症の人の印象や態度への肯定的な変化に寄与することが示唆された。今後は統制群を設定し標本数を拡大した検証が求められる。