児童青年精神医学とその近接領域
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特集 乳幼児精神医学
母子関係と乳幼児精神医学
山下 洋
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2016 年 57 巻 2 号 p. 261-272

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抄録

母子関係が子どもの心身の発達過程に与える影響の大きさは数十年にわたる発達早期の情緒発達に関連する臨床研究の成果により実証され,母子の関係性は乳幼児精神保健の重要なターゲットとなっている。近年の周産期医学と発達脳科学の橋渡し研究は母親の脳機能の妊娠,出産,子育て期を通じた可塑性とストレスや精神疾患による変化,さらに母子への治療的介入による回復過程をあきらかにしている。

DC 0-3R(Zero to Three)など発達早期のこころの問題の包括的な診断手続きも開発され,関係性障害は多軸診断の重要な要素として乳幼児精神保健の臨床的フォーミュレーションの中に位置づけられるようになった。母子関係の問題には母親側の問題としてボンディング障害,周産期の精神疾患,特に心的外傷後ストレス障害があり,乳児側の要因として神経発達のリスクや難しい気質,過剰な泣きや哺育障害などがある。これらの問題に対し母子二人組みや家族を対象として,相互作用や愛着表象に働きかける精神療法的介入が数多く開発されている。発達早期の乳幼児-親精神療法の有効性の検証には縦断的研究が必要であり,さまざまな子育て支援の実践からの知見が蓄積されている。

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© 2016 一般社団法人 日本児童青年精神医学会
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