2016 年 57 巻 2 号 p. 254-260
近年,自閉スペクトラム症(ASD)の有病率の増加が注目され,ASDの病態解明や早期診断,早期介入についての研究が世界的に盛んに行われている。ここでは,ASDを中心とした発達障害の,国内外において推奨される早期診断について文献を通じて整理し,わが国における5歳児健診の現状と課題について考察する。海外の研究では,疫学調査やバイオマーカーが多数報告される一方で,ASDには後になって診断基準を満たさなくなる中間表現型が存在することが報告されており診断面での課題である。わが国では1965年に制定された母子保健法に基づく乳幼児健診が広く普及しているが,法定健診による乳幼児健診では,注意欠如・多動性障害(ADHD)や特異的学習障害(Specific Learning Disorder),知的障害を伴わないASDなどでは発見が困難である。このため,国の政策に発達障害の早期発見,介入に向けた取り組みが盛り込まれ,地方自治体による5歳児健診の実施が推奨されている。しかし,5歳児健診は1歳半や3歳児健診のような法定健診ではなく全地域の実施には至っていないこと,また実施されている地域においても評価が標準化されていないことなど多くの課題がある。さらなる科学的な検証が必要である。科学的な解明により,ASDをはじめとする発達障害に対する認識や具体的な支援は今後変化していくであろう。乳幼児健診が歴史的に乳幼児死亡の減少に貢献したように,ASDを中心とした発達障害の早期診断,早期支援への貢献が期待される。