2016 年 57 巻 2 号 p. 310-322
Strengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)は児童の適応と精神的健康状態を測る尺度で,世界中で広く利用されている。しかしわが国では,教師版の研究や臨床評価との関連を見た研究はあまりない。
われわれは小学1年生307名を対象とし,保護者および教師にSDQへの回答を依頼した。加えて教師に児童についての聞き取り調査を行い,心理的・社会的機能をChildren’s Global AssessmentScale(CGAS)を用いて評価した。これらを用いて,教師評定SDQと保護者評定SDQおよびCGASとの関連を検討した。
276名より回答が得られた。その結果,保護者評定SDQと教師評定SDQでは,全般的困難度(Total Difficulties Score,以下TDS)と多動・不注意では中程度の相関が認められた。ただ,平均値や分布が異なるため,保護者と教師で別の基準を設ける必要が認められた。
CGASによる評価の結果,適応困難児は8.0%であった。CGASと,教師評定SDQにおけるTDS,行為面,多動・不注意との間に比較的強い相関が認められ,学校場面で行為面や多動・不注意の問題が多く認められる児童ほど適応困難に至りやすいことが示唆された。
CGASの臨床評価をもとに,教師評定SDQによる適応困難児の判別を検討した結果,12点をカットオフ値とすると感度が0.86,特異度が0.87となり,教師評定SDQは教師が適応困難を感じている児童を抽出する上で有用であると考えられた。