2016 年 57 巻 3 号 p. 438-449
ソーシャルスキルトレーニング(social skills training: SST)は,集団参加行動,コミュニケーションや自己コントロールなどのスキルを伸ばし,成功体験を積み重ね自尊心を高めることで,日常生活場面での適応を伸ばしていく目的で行われる。注意欠如・多動症(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: ADHD)をもつ児童に対するSSTは,一定の有効性が報告されているが,養育者などの行動評価によるものが主で,生物学的指標で評価されている報告はない。これまで,健常児と比べてADHD児は,事象関連電位(event-related potentials:ERP)において,P300の振幅の低下と潜時の延長,またmismatch negativity(MMN)の振幅の低下が報告されている。今回,われわれはADHDと診断された児童15名に対し,SSTを行い,その前後でP300とMMNを測定し,比較検討を行った。その結果,SST前と比較しSST後のMMNのC4における振幅が有意に増高しており,生物学的な側面からもADHD児に対するSSTの有効性が示された。