2017 年 58 巻 2 号 p. 236-245
自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)においては,行動や情緒の問題が注目されがちであるが,これらに加えてしばしば学習困難を伴う。その中にはLDが含まれており,ASDには約26%,ADHDには30~40%の頻度でLDが高率に併存するという報告もある。
ASD児やADHD児の行動や情緒の問題の背景には,学習困難が深く関与していることがある。この場合は,学習困難に対する適切な支援がなされることで,行動や情緒の問題が改善される可能性がある。外面的な問題にとらわれず,ASDやADHDにはLDが併存している可能性を考えて,常に学習の評価を行うことが望ましい。
ASDやADHDを併存するLDの病態には,一般的なLD同様に音韻処理能力の障害が存在すると考えられる。その他,実行機能の障害やワーキングメモリの障害などが存在すると考えられ,一般的なLDと比べて異なる認知特性も有する可能性がある。
これらの子どもへの教育的支援は,一般的なLDと同等と考えてよいが,加えてASDやADHDのそれぞれの特性に配慮する必要がある。なお,ADHD併存例においては不注意が学力向上の大きな妨げになるため,積極的にADHDの薬物治療を行うことが望ましい。