抄録
腎透析患者 (Hemodialysis patients: HD患者) に対する活性酸素の関与について好中球活性酸素産生能, 血中superoxide dismutase (SOD) 値およびメチルグアニジン値を測定し, 臨床的に腎疾患に用いられる温脾湯 (漢方薬) を投与して, その作用について調べた。好中球の産生する活性酸素量はフローサイトメトリーとチトクロームC還元法で測定した。HD患者は健常人に比して無刺激あるいは, phorbol myristate acetate (PMA) 刺激による活性酸素産生能は両者共に有意に上昇した。HD患者に温脾湯を投与し好中球活性酸素産生能, 血中SOD値およびメチルグアニジン値の変動を調べた。それぞれは, 投与前値に比して有意に低下した。次に好中球活性酸素産生に対する温脾湯の作用についてPMA, N-formyl-methionyl-leucyl-phenyla-anine (fMLP) およびオプソニン化ザイモザン (OZ) を刺激剤としチトクロームC還元法にて検討した。PMA刺激では温脾湯は好中球活性酸素産生能を抑制するが, fMLPおよびOZ刺激では抑制しないことが明らかとなった。