臨床化学
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癌の診断・治療における臨床検査の目指すもの
前原 喜彦織田 信弥沖 英次徳永 えり子杉町 圭蔵
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1997 年 26 巻 3 号 p. 125-133

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抄録

近年, 癌の診断学の発展は目ざましいものがある。多くの腫瘍マーカーが開発・応用され, 癌遺伝子, 癌抑制遺伝子の異常に関する検討が可能となった。癌に関する検査において目標とするものとして, 1) 臨床的にその存在が明らかな癌については, 的確に癌の進展や予後など, 癌の特性を推定する指標が得られること。2) 癌の転移能を評価し, 再発の早期発見のため, 全身の微量な癌細胞の存在を検出できること。3) 発癌のリスクの高い集団を同定し, 臨床的に癌細胞が出現する前に癌への罹患の有無を知る指標を得ること, などが考えられる。1) については最もポピュラーなCEAを選び, 腫瘍マーカーとしての臨床像とCEAの生物学的働きについて示した。2) では上皮性細胞のサイトケラチンを指標とした微小転移の検出および意義について考察した。3) では癌の高危険群を同定する一つの手段として, ミスマッチ修復異常を検出する高感度な検出系を開発したので, その有用性について報告した。臨床検査の積極的な利用と新しい検査法の開発が, 癌の治療成績向上に結び付くことを期待したい。

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