異常ヘモグロビン症, 神経変性疾患をはじめ種々の病気の原因となる異常蛋白, 例えば異常ヘモグロビン, アミロイド蛋白, スーパーオキシドジスムターゼ, プリオン蛋白などを簡便かつ確実に検出しうる分析手段の確立が望まれている。DNA解析は, 変異部位の同定手段として汎用されているが, 翻訳後修飾, 蛋白一DNA間の相互作用などのPost-Genome解析や異常/正常蛋白の定量に関しては無力と言わざるをえない。その点, 質量分析では検出可能である。1994年, 我々のグループは, アフィニティ精製法に代えて目的変異蛋白に対する特異抗血清と臨床材料を混合し, 得られた免疫沈降物を直接, MS分析し変異蛋白を検出・同定する手法を確立した。本総説では, ソフトイオン化質量分析法, 特にエレクトロスプレーイオン化質量分析を用いて疾患関連変異蛋白質 (変異スーパーオキシドジスムターゼ, 変異トランスサイレチン, 異常ヘモグロビンなど) を検出・同定し, 病気の診断に応用した自験例を中心に紹介する。
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