臨床化学
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26 巻, 3 号
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  • 中西 豊文, 岸川 匡彦, 宮崎 彩子, 象清 水章
    1997 年 26 巻 3 号 p. 115-124
    発行日: 1997/09/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    異常ヘモグロビン症, 神経変性疾患をはじめ種々の病気の原因となる異常蛋白, 例えば異常ヘモグロビン, アミロイド蛋白, スーパーオキシドジスムターゼ, プリオン蛋白などを簡便かつ確実に検出しうる分析手段の確立が望まれている。DNA解析は, 変異部位の同定手段として汎用されているが, 翻訳後修飾, 蛋白一DNA間の相互作用などのPost-Genome解析や異常/正常蛋白の定量に関しては無力と言わざるをえない。その点, 質量分析では検出可能である。1994年, 我々のグループは, アフィニティ精製法に代えて目的変異蛋白に対する特異抗血清と臨床材料を混合し, 得られた免疫沈降物を直接, MS分析し変異蛋白を検出・同定する手法を確立した。本総説では, ソフトイオン化質量分析法, 特にエレクトロスプレーイオン化質量分析を用いて疾患関連変異蛋白質 (変異スーパーオキシドジスムターゼ, 変異トランスサイレチン, 異常ヘモグロビンなど) を検出・同定し, 病気の診断に応用した自験例を中心に紹介する。
  • 前原 喜彦, 織田 信弥, 沖 英次, 徳永 えり子, 杉町 圭蔵
    1997 年 26 巻 3 号 p. 125-133
    発行日: 1997/09/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    近年, 癌の診断学の発展は目ざましいものがある。多くの腫瘍マーカーが開発・応用され, 癌遺伝子, 癌抑制遺伝子の異常に関する検討が可能となった。癌に関する検査において目標とするものとして, 1) 臨床的にその存在が明らかな癌については, 的確に癌の進展や予後など, 癌の特性を推定する指標が得られること。2) 癌の転移能を評価し, 再発の早期発見のため, 全身の微量な癌細胞の存在を検出できること。3) 発癌のリスクの高い集団を同定し, 臨床的に癌細胞が出現する前に癌への罹患の有無を知る指標を得ること, などが考えられる。1) については最もポピュラーなCEAを選び, 腫瘍マーカーとしての臨床像とCEAの生物学的働きについて示した。2) では上皮性細胞のサイトケラチンを指標とした微小転移の検出および意義について考察した。3) では癌の高危険群を同定する一つの手段として, ミスマッチ修復異常を検出する高感度な検出系を開発したので, その有用性について報告した。臨床検査の積極的な利用と新しい検査法の開発が, 癌の治療成績向上に結び付くことを期待したい。
  • 宍野 宏治, 佐伯 修一, 武内 望
    1997 年 26 巻 3 号 p. 134-142
    発行日: 1997/09/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    ポリアクリルアミドスラブゲル電気泳動法を用いて-Ia, IIb, IV型に分類された高脂血症患者血清中のLDLサブクラスの出現頻度を測定し, 血清中アポリポ蛋白濃度との関連で検討した。A-4 濃度は, IIa型高脂血症群では健常者に比しやや高値を示したが, IIbおよびIV型高脂血症では差が無く, B, C-II, C-III, E濃度およびB/A-I比は何れの高脂血症群でも高値を示した。また, アポリポ蛋白濃度が高い症例ほど, LDLサブクラスの低分子量化が認められた。低分子量LDLサブクラスは, 脳梗塞, 心筋梗塞, 高血圧, 合併症を伴う糖尿など血管障害で増加傾向があった。
  • 日高 宏哉, 戸塚 実, 山内 一由, 中林 徹雄, 菅野 光俊, 勝山 努
    1997 年 26 巻 3 号 p. 143-149
    発行日: 1997/09/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    HDL-C直接法と沈殿法の相関関係で大きく反応性が乖離する検体を見出した。この検体はslow αリボ蛋白を含む高アポE血症であった。そこでslowαリボ蛋白を含む3例と健常人1例の血清検体について, 直接法と沈殿法とゲル濾過クロマトグラフィーのコレステロ上ルパターンで比較したところ,(1) HDL-C直接法と沈殿法とゲル濾過クロマトグラフィーのコレステロールパターンの定量値が一致する検体,(2) 直接法と沈殿法は一致するが, ゲル濾過のコレステロールパターンの定量値と乖離する検体,(3) 直接法と沈殿法とゲル濾過のコレステロールパターンの定量値がいずれも一致しない検体, が存在した。アポEリッチHDLまたはslowαリボ蛋白といわれる異常高分子HDLは, 少なくとも由来および物理化学的性質の異なる3種類以上が存在することが示唆された。
  • 山内 一由, 戸塚 実, 日高 宏哉, 中林 徹雄, 青木 義政, 勝山 努
    1997 年 26 巻 3 号 p. 150-156
    発行日: 1997/09/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    超遠心法により分取したリボ蛋白を試料として2社のHDL一コレステロール (HDL-C) 直接定量法の反応性について検討した。硫酸シクロデキストリンと化学修飾酵素を用いるa社試薬では VLDLと約6%, 分散型界面活性剤とポリアニオンを用いたb社試薬ではLDLと約5%の交差反応性を認めた。HDLに対する反応性には, HDL3では測定方法の違いによる差異がみとめられなかったが, HDL2に対しては両直接法が沈殿法 (デキストラン硫酸-リンタングステン酸-Mg2+) に比べ高い測定値を示した。HDL2分画をヘパリンアフィニティクロマトグラフィによりさらにアポE結合型とアポE非結合型とに分離し, それを試料として測定した結果, 両直接法は沈殿法では沈殿画分に存在するapoE結合型HDL2との反応性を認めた。また, それらの定量値はHDL分画の総コレステロールの測定値とほぼ合致していた。
  • 大野 弘子, 神保 英子, 青木 芳和
    1997 年 26 巻 3 号 p. 157-161
    発行日: 1997/09/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    NCCLSの提案指針にそって, 総コレステロール (TCHO), トリグリセリド (TG), HDL-コレステロール (HDLC) の基準範囲を設定する目的で, その除外基準の選定について検討した。健常者群と疾患群の平均値の差の検定を実施するとともに, 1回の作業により35検査項目の影響を調べるために, 重回帰分析の手法を用いた。本法からTCHO, TG, HDLCに対する影響力のランキングを算出した。その結果, 疾患では高血圧症, 高脂血症, 高尿酸血症, 糖尿病などの代謝性疾患と肝臓病が血清脂質に対し影響が大きいことを確認した。検査項目ではLDH, ChE, UA, GLU, BMIなど栄養状態と関連の深い項目と高い相関性を示した。
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