抄録
過去の疾患と考えられていた脚気が昭和48年頃に再燃した。また, 最近では高カロリー輸液施行時にビタミンB1欠乏のため重症な乳酸アシドーシスをきたす症例の報告があった。ビタミンB1欠乏症の診断のためには血中ビタミンB1値の測定とその標準化が必要である。そこで, 3種類のHPLC法 (ポストカラムHPLC法, プレカラムHPLC法, プレカラムGP-HPLC法) を用いてヒト全血ビタミンB1濃度の標準化を検討した。対象は1, 800kcalビタミンB12mg (実測値1.74mg) の食事をとっていて, 潜在性ビタミンB1欠乏者が母集団にいない者である。その結果, おのおのの測定方法で血中ビタミン濃度は26~47ng/ml, 28~51ng/ml, 28~56ng/mlであった。したがって, 基準値下限は26~28ng/mlである。しかし, 母集団の数が少ないので参考値として, 今後さらに基準範囲を検討せねばならない。