抄録
てんかんは古くから記載されている疾患であるが, 最近になってやっと分子生物学的研究への糸口が開けてきた。責任遺伝子が明らかになった病型のほとんどはまれな家族性てんかんにであるが, 同定された遺伝子から今後のてんかんの分子病態解明の手がかりが見えてくるかもしれない。今までの発見の中で特筆すべきことは, 発作間激期に随伴神経症状が少ない特発性てんかんの病因に脳で発現するイオンチャネルの遺伝子が深く関係している点である。突発的なチャネル機能異常は, てんかんの分子病態の一部を説明するのかもしれない。ここから特発性てんかんにチャネルの異常が関係しているという作業仮説 (チャネル病仮説) が生まれている。臨床像や脳波によっていたてんかんの診断に分子生物学的診断法が加わり, 分子生物学的病態に基づく抗てんかん薬の開発が行われることも将来可能であると思われる。