抄録
健常人において, 血清アルカリホスファターゼ (ALP) のJSCC標準化対応法による測定値および小腸型ALPの測定値は共にABO式血液型のA, AB型とB, O型の間に有意差 (P<0.001) を認めた。しかし, JSCC標準化対応法から小腸型を差し引いた値はABO式血液型における各群多重比較の結果, 有意差が認められなかった。またJSCC標準化対応法による総ALP活性およびL-フェニルアラニンを用いた選択的阻害法による小腸型ALP活性のABO式血液型群別の基準範囲を最尤推定法により求めた。その結果, 総ALPがA, AB型群で110~340U/l (中央値: 201U/l), B, O型群で153~379U/l (中央値: 239U/l) であり, 小腸型ALPがA, AB型群で1~16U/l (中央値: 4U/l), B, O型群で2~73U/l (中央値: 21U/l) であった。また, IFCC標準化対応法 (x) とJSCC標準化対応法から小腸型を差し引いた値をIFCC標準化対応法に換算した方法 (y) との相関性はr=0.998, 回帰式y=1.003x-1.4となった。このことから, JSCC標準化対応法から小腸型を差し引いた値はIFCC標準化対応法とのコミュータビリティが確保されるため, 適当な検量物質があればIFCC標準化対応法とのトレーサビリティが図れることになる。我々の開発した選択的阻害法6)は小腸型ALPを簡便かつ迅速に定量できるので, この方法は比較的容易にグローバルハーモナイゼーションの問題解決の手段として有効であることが確認された。