日本救命医療学会雑誌
Online ISSN : 2758-1055
Print ISSN : 1882-0581
症例報告
悪性症候群を背景として心停止に至り, その後再発によって長期間の加療を要した1例
柳澤 薫前田 敦雄柿 佑樹高安 弘美中島 靖浩佐々木 純土肥 謙二林 宗貴
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 36 巻 p. 10-13

詳細
抄録
症例は43歳, 女性. 意識障害を理由に救急搬送され, 直後に痙攣重積状態となった. ジアゼパム10mg投与で痙攣は頓挫した. 入院中はミダゾラムの持続投与による鎮静とレベチラセタム1000mgの点滴投与を開始した. 第2病日に40℃の発熱, 脈拍130bpmの頻脈と血中CK 4012 IU/L, 血中ミオグロビン7671ng/mLと筋逸脱酵素上昇を認めた. 翌第3病日にも発熱, 頻脈の遷延に加えて筋強剛が出現した. 血液検査でも筋逸脱酵素上昇が遷延しており, 抗精神病薬内服歴もあることから悪性症候群と診断し, 補液とダントロレンナトリウム40mgの投与を開始した. 第3病日に急激に心機能低下を認め, 経皮的心肺補助装置 (以下V-A ECMO) の導入準備中に心肺停止に至った. その後, 徐々に全身状態は改善し, 第8病日にV-A ECMOを離脱し, 第13病日からダントロレンナトリウムの減量を開始した. しかし, 第17病日に38℃の発熱と筋逸脱酵素上昇を認め, 悪性症候群の再燃と判断した. 減量していたダントロレンナトリウムを120mgまで増量し, ブロモクリプチンメシル酸塩は7.5mg×3回/日で投与を開始した. その後, 症状の再燃はなく全身状態が安定し, 第52病日に療養目的で転院となった. 悪性症候群では発熱, 筋強剛など非特異的な症状が散見されるが, 本症例のように心停止に至り, 再発することで全身状態悪化を呈した症例報告は少ない. 悪性症候群は体内のカテコラミン産生に寄与している可能性があり, たこつぼ心筋症を発症した際には循環動態が崩れる危険性が高い. そのため, 悪性症候群を考慮した際は早期から補液とダントロレンナトリウム投与を開始する. ダントロレンナトリウム投与にも関わらず, 身体所見と血液検査から効果不十分であると判断した際はドパミン受容体作動薬の追加投与も早期から行うべきである.
著者関連情報
© 2022日本救命医療学会
前の記事 次の記事
feedback
Top