【背景】新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の流行が続いている.当地域ではJPTECをはじめとする各コースを通じ, 救急医療に関わる消防職員と医療機関職員との間で顔の見える関係が構築され, 活発な意見交換を行っていた.しかし, COVID-19流行に伴いコースは軒並み中止となり, 以前のような日々生じる疑問の解決や意見交換の場は激減した.そこで, 代替手段としてオンラインでの意見交換会を実施した.本研究はオンライン意見交換会が消防職員と医療機関職員の日常業務に効果を及ぼすか否かを明らかにすることを目的として行った.
【方法】対象は地域救急医療に携わる医療従事者12名 (消防職員7名, 医療機関職員5名) で, オンラインでの意見交換会は, 2020年5月~2022年5月の間に計10回実施した.内容は, 現場判断に苦慮した症例の検討, 災害発生時のオンラインシミュレーション, 後進育成に関する意見交換など, 多岐にわたった.効果の検討はアンケート形式で行い, COVID-19流行前後および意見交換会実施前後での主観的指標の変化を解析した.
【結果】意見交換会の実施は日々の活動・業務の中で感じる孤独感や疑問・不安の低減および意欲の増加, 所属での教育・実務における知識の活用につながり, 参加者全員がCOVID-19流行収束後も継続することを希望した.
【考察】COVID-19流行下においてオンラインを用いた意見交換会は, 孤独感の軽減や知識・技術習得への動機づけに一定の効果があることがわかった.また, この手法はCOVID-19流行収束後であっても場所に縛られず意見交換が可能であり, 特に人口密度が希薄で広い医療圏を有するわれわれのような地域においては有効な手段と考えられた.今後も活動を継続し, その成果を発信していきたいと考えている.
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