日本救命医療学会雑誌
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症例報告
フクジュソウ中毒における心電図の経時変化
杉本 貴史大野 雄康安藤 維洋関 恒慶山田 勇小谷 穣治
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2023 年 37 巻 p. 59-65

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抄録

 フクジュソウの全草には, 強心配糖体構造をもつシマリンやアドニトキシンが含まれている. フクジュソウ中毒の報告は少なく, その臨床像は十分に理解されていない. 腎機能障害のない54歳の邦人女性が, ホームセンターで購入したフクジュソウ全草2株を風乾させ, 煎液を自殺目的に摂取した. 摂取8時間後, 嘔気嘔吐を主訴に当院に救急搬送された. 来院時心拍数40回/分の徐脈を認め, 興奮し多弁であった. 12誘導心電図でMobitz II型の2度房室ブロック, およびⅡ, Ⅲ, aVf, V2–4誘導にジギタリス効果様のST盆状低下を認めた. 摂取11時間後, 心拍数25回/分の徐脈と血圧低下を発症したが, アトロピン硫酸塩1.0mg静脈内投与により改善した. 摂取24時間後, 中枢神経症状が軽快し, 次いで摂取72時間後, 消化器症状およびジギタリス中毒様の心電図変化が改善し第5病日に後遺症なく独歩退院した. フクジュソウ中毒では,ジギタリス中毒同様の重症不整脈が起きる可能性があり, 注意が必要である.

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