2025 年 25 巻 1 号 p. 13-20
ハロメタンやハロエチレンなどの低分子ハロゲン系炭化水素類(HHCs)は溶剤や原料として幅広く利用されているものの,毒性の高さや化学的安定性の高さによる土壌・海洋中での残存といった問題があった。本研究では,これらのHHCsを直接的に有用化成品へと変換可能な新たな合成法の開発(ケミカルアップサイクル)を目指した。我々のグループ独自の酸化改質技術である,二酸化塩素への光活性化をカギとするC-H酸素化反応を活用し,クロロホルムを反応系中で高活性なホスゲンへと変換し,種々のホスゲン化生成物を得る手法を見出した。アミンとの反応により,カルバモイルクロリドやウレア誘導体を,アルコールからはカーボネート誘導体を得ることができる。本稿では,これらの反応の詳細と二酸化塩素光改質法の今後の可能性について紹介する。