陰圧性肺水腫 (negative pressure pulmonary edema, 以下NPPEと略す) は, 上気道閉塞や過度の吸気努力により, 肺毛細血管の透過性亢進が起こり発症する肺水腫である. 周術期におけるNPPEの既報は, 気管チューブ抜去に関連したものがほとんどであり, 非気管挿管下の手術中にNPPEを発症した報告は非常にまれである.
生来健康な40歳代女性が, 鎮静・非気管挿管下に内視鏡下副鼻腔手術を受けた. 術中, 鼻出血の誤嚥を契機に経皮的酸素飽和度が70%まで低下し, 高流量酸素投与でも十分な酸素化が得られなくなり, 気管挿管のうえ人工呼吸管理を開始した. 胸部X線画像で肺門部を中心に蝶形状陰影を認め, 胸部CT画像で両側対称性, 上中肺野, 背側優位にすりガラス陰影を認めた. 陽圧換気により画像所見, 酸素化ともに改善し, 第3病日に人工呼吸を離脱し, 第7病日に独歩退院した.
鎮静・非気管挿管下の手術であっても, 誤嚥を契機にNPPEのような重篤な呼吸器合併症が起こりうる. そのため, 術中の呼吸状態急変時にはNPPEを鑑別診断のひとつに想起することが重要である.
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