抄録
抗凝固薬 (リバーロキサバン) を内服中の69歳男性が約4m下の地面に墜落した. 来院時, ショック状態であり大量輸血プロトコルを発動し, Trauma Pan-scanを実施した. 弓部大動脈から腎動脈分岐部に至る外傷性大動脈解離, 左多発肋骨骨折, 左血気胸, 左寛骨臼骨折を認めたが, 造影剤の血管外漏出像は認めなかった. 胸部ステントグラフト内挿術を行ったが, 左胸腔ドレーンからの出血が持続した. 再度造影CTを実施し左肺動脈下葉枝, 左上殿動脈, 左腸腰動脈, 脾動脈末梢枝からの活動性出血を認め, 緊急血管内塞栓術および第Xa因子阻害薬中和薬投与を行い止血した. 第7病日に左寛骨臼骨折に対する内固定術を実施し, 第14病日に気管切開術を実施, 第26病日に転院した. 初療時に血管外漏出像を認めなくても, 抗凝固薬内服の有無を速やかに確認し, 適切な中和薬を機を逸することなく投与する必要がある.