2021 年 2 巻 J2 号 p. 172-181
従来,ダム流入量の予測手法としてタンク・モデルなどの物理モデルが使われてきた.物理モデルは実際の現象を近似する関数と考えることができるので,ニューラルネットワークで代替すれば物理モデルと同等以上の性能で予測ができるはずである.そこで本研究ではタンク・モデルとニューラルネットワークとで入力データなどの条件をできるだけ揃えた上でダム流入量予測の比較を行った.本研究のタンク・モデルは直近の観測量を用いた改良を施すことにより大規模出水時の流入量を比較的精度よく予測できた.一方,条件を揃えて訓練したニューラルネットワークはタンク・モデルと同等かそれ以上の予測精度を示した.この結果はニューラルネットワークの予測性能の下限が物理モデルで与えられることを示唆している.