AI・データサイエンス論文集
Online ISSN : 2435-9262
2 巻, J2 号
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  • 永谷 圭司, 阿部 雅人, 大須賀 公一, 全 邦釘, 岡谷 貴之, 西尾 真由子, 松原 崇充, 筑紫 彰太, 池本 有助, 淺間 一
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 1-7
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    建設業では,少子高齢化問題に起因する建設業の労働者不足を解決するための生産性向上に貢献する技術ならびに,多発する自然災害に適用可能な応急復旧システムの開発が期待されている.このような背景の下で,筆者らは,内閣府ムーンショット型研究開発の目標 3「自ら学習・行動し人と共生する AIロボット」というグループにおいて「多様な環境に適応しインフラ構築を革新する協働 AIロボット」というプロジェクトを開始した.このプロジェクトでは,ロボット技術による「自然災害の応急復旧」と「月面インフラ構築」という目標を設定し,多様な環境に適応しインフラ構築が可能なロボット技術の研究開発を進めている.このような研究を進める上で,鍵となる概念は,ロボットの「開いた設計」であると筆者らは考えている.本稿では,本プロジェクトの概要を紹介すると共に,「開いた設計」という考え方に基づいて進めている(1)環境になじむロボット,(2)メニーモーダル環境評価 AI技術,(3)動的協働 Physical AI技術の研究について紹介する.

  • 杉崎 光一, 阿部 雅人, 山根 達郎, 全 邦釘
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 8-19
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    様々な分野でAIの導入が検討されており,特にビッグデータから学習したAIの実務への活用が期待されている. しかし,AIに限らず,知識の活用において,インターネット上のばらばらな情報を利用者の状況に応じて適用することで様々な問題が生じていると考えられており,この問題に対して,知の構造化の必要性が言われている.インフラメンテナンスにおけるAI活用においても,データから学習したAIを実務に利用することは容易ではないこともあり,インフラメンテナンスの知の構造化が必要と考える.本論稿では,インフラメンテナンスにおける知を構造化したものを専門知と呼ぶ.インフラメンテナンスにおける専門知を明らかにしないまま,AIの活用方法を検討することは困難であるという立場に立ち,国鉄のメンテナンスの歴史や看護などの他分野での実践知などの分析を参考にして,メンテナンスの専門知を明らかにした上で,ルールベースなどの演繹的な方法と,帰納的な方法との連携からAI活用の在り方を検討した.

  • 楢崎 泰隆, Vedhus Hoskere, Billie F. Spencer Jr.
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 20-28
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    画像データを用いた構造物の維持管理の高度化の技術が近年急速に発展しており,様々な手法が提案されている.それらの手法を実構造物に効果的に適用するためには,対象とするシナリオを模した実験的環境において手法を実際に適用し,ユーザーの経験を蓄積するとともに得られる効果を定量評価・最大化することが重要である.一方,画像データを用いた点検・モニタリング手法は対象とする構造物や環境,期待されるアウトプットによって内容や要求が大きく異なり,それら個々の適用シナリオに即した解析と評価をおこなうのは困難である.本論文では,この問題への解決策として,コンピュータグラフィックスを活用した構造物のシミュレーションに着目し,点検・モニタリングへの適用手法と事例について述べたのち,今後の展望について議論する.

  • 吉倉 麻衣, 南 貴大, 福岡 知隆, 藤生 慎, 高山 純一
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 29-36
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    橋梁点検において,近接目視点検の代替手法の1つに,橋梁写真から深層学習による画像認識で損傷を自動検出する手法がある.この手法では,事前に画像から損傷を自動検出を行うことで,点検技術者の損傷判定業務を支援し,点検作業の省力化に期待ができる.しかし,損傷検出モデルの学習データ作成には時間がかかることが課題となっている.検出結果の表示に多少の粗さが許容されれば,学習データの作成時間は削減できる.ただし,損傷検出結果が不明瞭だと損傷判定に影響が生じる恐れがある.近接目視点検と同じ精度の判定を行うためには,損傷判定に影響しない検出結果表示をさせる必要がある.本研究では,橋梁点検の点検項目の1つである遊離石灰を画像認識で自動検出し,橋梁診断員の損傷判定に必要な検出結果の表示サイズについて検証した.

  • 吉田 龍人, 藤井 純一郎, 大久保 順一, 天方 匡純
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 37-46
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    道路橋定期点検要領の改訂など,AIを活用したインフラ維持管理の運用に向けた気運が高まっている.一方で,現場で撮影される画像は天候などの影響によって特性が大きく変化するため,多様なシーンで撮影された画像からAIが安定して変状を検出できないといった課題がある.

    これを受けて本稿では河川護岸のひび割れSegmentationをテーマに,河川の左右岸別に画像の特徴量を比較することで,異なる状況で撮影された画像特性の違いを定量評価した.さらに画像の見かけの違いに頑健になると言われているInstance Normlizationをひび割れ検出モデルに導入し,特性の異なる画像間で安定してひび割れを検出できるモデル構造を検討した.

  • 山田 大樹, 新谷 美菜, 辛 寄語, 秋山 充良
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 47-54
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    鉄筋コンクリート(RC)部材では,鉄筋腐食が発生するとその表面に腐食ひび割れが現れる.腐食ひび割れは,RC部材内部の鉄筋腐食量を推定するための貴重な情報となり得るが,腐食ひび割れ幅は,その直近にある軸方向鉄筋の腐食量のみではなく,その周辺にある軸方向鉄筋の腐食の影響も受けるなど,腐食ひび割れ幅の分布とRC部材内に生じている空間的な鉄筋腐食量の分布は極めて複雑な非線形の関係にある.本研究では,擬似的に作成したデータベースとpix2pixを用いることにより,腐食ひび割れ幅の分布から,RC部材内部に生じている2次元鉄筋腐食分布を推定した.ケーススタディでは,鉄筋腐食分布の推定と非線形有限要素解析に介在するモデル誤差を考慮することで,腐食ひび割れ幅の分布が与えられたとの条件下で対象劣化RCはりが保有する曲げ耐力の確率密度分布を提示した.

  • 岡崎 慎一郎, 岡崎 百合子, 山路 徹
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 55-61
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    RC構造物の表面塩化物イオン濃度に関する設計式について,港湾基準では,実測データを朔望平均満潮位(H.W.L.)からの距離のみで線形回帰した式が用いられるが,この式は未だ実測データの全てに対し十分に再現しうるものではない.本研究では,上述の線形回帰式の構築に用いられた実測データに対してデータ駆動型アプローチとして機械学習を援用し,環境に関するデータから,回帰性能の向上に寄与する変数を抽出するとともに,それらを説明変数とした新しい回帰モデルの構築と性能評価を行った.その結果,有義波高を説明変数に加えることにより,特に海面付近の表面塩分濃度の回帰性能が向上できることを確認した.

  • 小林 誠治, 天野 直紀, 久米 仁司
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 62-66
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,可聴音を用いた測定装置を使用し,機械学習の一つであるDeep Learningを用いて道路照明柱のき裂検出を行った.対象照明柱に対して本測定装置を使用しデータを収集後,機械学習を行い実際のき裂の長さと機械学習の予測値とを比較した.目視で確認できるき裂に関してき裂を検出できたことから,本手法のき裂検出の可能性を示した.

  • 松本 麻美, 三和 雅史, 大山 達雄
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 67-78
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    列車が軌道上を繰り返し走行すると,荷重により線路のゆがみである軌道変位が徐々に大きくなる.そこで通常は,定期的に軌道形状を検測し,大きな軌道変位があると軌道保守を行う.しかし稀に軌道変位が局所的かつ急激に進む急進が発生することがある.よって,列車の走行安全性を確保するため,こうした急進が発生する予兆を検知し,発生前に保守を行う予防保全が求められている.本研究では,軌道変位と保守実績の履歴データに対してクラスタ分析を適用することにより,大きな軌道変位の発生可能性が高い箇所を事前把握するモデルを構築した.また,本モデルを軌道検測の都度適用し,前回の軌道検測時と比べて注意を要するクラスタの中心に接近した箇所やクラスタ間を移動した箇所を抽出することで,注意すべき箇所を事前に検知できる可能性を示した.

  • 林 俊斉, 齋藤 淳, 小島 弘道, 長田 茂美
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 79-86
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    良質な材料を使用し,適切に配合選定されたコンクリートを使用しても,打込み・締固めが不適切であれば,コンクリート本来の性能は発揮されない.従来,コンクリートの締固めの程度の判断は,締固め作業従事者の経験に基づく感覚と目視評価によって行われている.昨今,技術者の減少や働き方改革に伴うコンクリート工の生産性向上が求められており,品質を確保した上で省人化,省力化あるいは無人化技術の開発が望まれている.筆者らは,従来の技術者の目視評価を AIが代替することができるシステムを考案し検証を重ねてきた.その結果,ビデオカメラで撮影した映像から得られるフレーム画像に技術者の完了判定を正解ラベルとして学習することで,AIがコンクリートの締固め完了を技術者に近い形で判定できることを示し,その有用性を確認した.

  • 久保 栞, 全 邦釘, 伊藤 克雄
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 87-96
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    高度経済成長期に建設されたインフラ構造物の老朽化に伴い,膨大な維持管理コストが必要となっている.導水路トンネルにおいては,大型機械の投入が困難である点や点検時に断水を伴う点を鑑み,AI技術を活用した維持管理の効率化が望まれる.本研究では,そのような状況を考慮し,トンネル内壁面における変状箇所やその状態を効率よく把握することを目的として,YOLOv5を用いたチョーキング箇所の検出を行った.その結果,データ数が多く,チョーキング箇所が明瞭である場合には,高精度で検出可能であることを確認した.さらに,IoUが低い場合であっても,チョーキング箇所の一部を捉えられているため,検出結果から劣化状況やその分布を把握することで,劣化原因の究明や劣化状況に合わせた補修計画の立案が可能となろう.

  • 大関 誠, 中村 聖三
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 97-102
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    各種業務の効率化や高度化の観点から,土木工学分野でのAI研究および活用が進められている.画像から損傷の判定や領域の抽出を行うアプリケーション等,維持管理分野において様々な研究がなされて既に実用化されている技術がある一方,AI活用が期待されているものの研究自体があまり進んでいない分野も存在する.本稿では,AIの適用対象を鋼構造に限定し AI活用の現状と課題,および展望と期待を述べる.AI活用の現状と課題では,土木分野全般におけるAI活用事例やコンクリート部材を対象とした事例と比較することで,鋼構造におけるAI活用状況を整理する.展望と期待では,様々な分野でのAI活用事例を参照し,鋼構造でのAI活用の方向性の検討や活用を進める上で関連しうる技術,検討活性化に向けたアイディアを提示する.

  • 中村 和樹, 和泉 勇治, 子田 康弘
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 103-112
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    橋梁の損傷が加速していくことが推察される中で,効率的な点検に基づく維持・管理が求められている.鋼橋の点検支援として機械学習の1つである畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を適用することは,有効性が高い方法の1つと考えられる.CNNでは画像そのものを分類する方法や画像内の物体が占める領域を識別する手法がある.とくに,画像内においてピクセル単位で腐食検出を実施するには計算コストが高く,このような手法は点検技術者が現場で利活用することは現時点において難しい.このことから,本研究では点検技術者が現場において腐食検出とその広がりを把握できることを考慮するため,CNNによる腐食検出を実施し,引き続き計算コストの低い二値化を用いた画像処理を利用した画像中の腐食割合を算出する一連の手法を検討し,その結果を評価した.

  • 髙森 真紀子, 大久保 順一, 藤井 純一郎
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 113-120
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    公共空間利活用によるまちづくりが注目される中,都市空間における行動観測のニーズが高まっているが,その解析作業は計測員によるビデオ観測や目視記録に依存しており,膨大な労力を要する.本研究は,歩行者の流動をより簡便,短時間で解析可能とすることを目指し,深層学習による物体検出技術と物体追跡技術を応用し,特に屋外の都市空間を想定した人流解析技術を低コストで開発したものである.

    三鷹駅北口地域での社会実験におけるビデオデータと人手による人流解析結果をもとに,実務での活用を想定した「メッシュ」や「丸め閾値」プログラムを設定し,AI解析における精度を検証した.結果,人手調査の1/4の解析時間で人流の傾向を概ね正確に把握でき,活用可能性が見いだされるともに,カメラ設置方法や映像のゆがみ補正の必要性など,実務で活用するための課題を明らかにした.

  • 森崎 裕磨, 藤生 慎, 高山 純一, 平子 絋平
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 121-127
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    2021年現在,世界中で新型コロナウイルス感染症の拡大は続いている.新型コロナウイルス感染症は,生命を脅かすだけでなく,各国の政治,経済にまで影響を及ぼしている.さらには,通勤・通学行動,受療行動,購買行動等,人々の日常生活行動に変化をもたらしている.本研究では,受療行為の変化に着目し,国民健康保険データを用いて新型コロナウイルス感染症拡大前後の外来受診行動の変化に関する把握を行った.国民健康保険データは 2012年 4月から 1ヶ月単位で蓄積が続いており,医療費情報,医療行為情報,疾患情報などのレセプト情報が個人ごとに記録されている.本研究における分析を通して,新型コロナウイルス感染症拡大前後において,地域住民の外来受診行動には明らかな変化が見られることが明らかとなった.

  • 天方 匡純, 石井 明, 宮﨑 利行, 宮本 崇
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 128-139
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    従来,ダム流入量予測モデルは確定性のある観測データに基づきパラメータ等が最適化され実運用投入されてきた.一方,実運用時のモデルへの入力は不確定性のある予測雨量とするのが一般的である.観測データと予測データは特性が異なり,従来プロセスでは予測雨量が精度向上するまでダム流入量予測の精度向上を期待できない.そこで,モデル構築時と運用時のデータ特性差を小さくするため不確定性のある予測データを含めてモデル学習・構築する.この行為を本稿では「予測学習」と呼ぶ.運用時と同じ不確定性のあるデータ条件下の「予測学習」が運用時のダム流入量予測の高精度化に寄与することを示す.また,予測データに土木的解釈を加えてAIモデルを簡素化できること,「予測学習」では1~6時間先のダム流入量予測精度が劣化しないこと,を示す.

  • 宮本 崇
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 140-151
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    近年に大きな発展を遂げたデータ科学の方法論は,従来の科学的方法論が直面していた課題に対して柔軟な表現性能と高速な計算手段を提供する一方で,計算の解釈性やデータ数に対する外挿的予測への需要といった,これまでに無かった課題も同時に顕在化させている.従来の物理的方法論とデータ科学的方法論を統合した手法は,両方法論を相補的に利用する新たな数理分析手法であり,様々な科学分野で研究が進んでいる.本稿では,科学論的観点からこのような統合手法の意義や重要性を指摘すると共に,具体的手法や応用事例について調査と体系化を行い,当該の研究領域における現在の知見を整理する.

  • 宮本 崇, 西尾 真由子, 全 邦釘
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 152-156
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    物理現象の入出力をデータ駆動的に再現するサロゲートモデルは,物理問題の高速な予測を行う代替的な手段としてその利用が進んでいるが,得られた解が物理的な条件を満足する保証がない問題が知られている.これに対して,Physics-Informed Neural Networks(PINNs)は支配方程式による拘束を表現した損失関数を導入することで,支配方程式をデータ駆動的に求解するニューラルネットワークである.本稿では,1次元連続体の自由振動問題に対してPINNsの定式化とコード実装を行う.

  • 木村 延明, 石田 桂, 皆川 裕樹, 福重 雄大, 馬場 大地
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 157-164
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,リカレントニューラルネットワーク(RNN)を用いて複数の大気大循環モデル(GCM)の気象データを入力としてダム湖の表層水温予測を行ったものである.将来の気候変動に強く影響を受ける中緯度地域に位置する北海道のダム湖を対象に,現地観測データ(気温と水温)で学習させたRNNを用いて,対象地域に力学的ダウンスケーリングした過去・将来(シナリオRCP8.5)の気候変動データに基づき,ダム湖の表層水温の予測を行った.過去と将来の各GCMの気温データの差異は,将来気温の方が月毎の平均値で2~4℃上昇し,RCP8.5の効果を確認できた.この気温の差異は,RNNで予測された水温の差異と概ね同様な上昇傾向(月毎の平均値の差分で0~1℃)を示した.但し,春季と夏季の一部において,過去気温で予測された水温値の方がやや高めの傾向を示した.

  • 箱石 健太, 一言 正之
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 165-171
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,深層強化学習を用いたダム操作モデルの改良・検証を行った.同モデルの既往研究では,計画洪水を大幅に超過している仮想洪水での検証にとどまっており,実際の洪水時における有効性は検証されていない.本研究では既往研究のモデルの課題を踏まえ,過放流抑制のための条件設定の追加,および報酬関数の改良を行った.また深層強化学習に用いる学習データの洪水規模を調整することで,計画規模の洪水に対する効果的な放流操作の獲得を狙った.近年の災害が生じた洪水事例を対象に,改良したダム操作モデルと,既往研究のダム操作モデルとの比較を行った.改良したモデルでは,既往研究モデルに比べピーク放流量を低減しており,また実際に行われたダム操作の放流波形と類似することを確認した.

  • 宮﨑 利行, 石井 明, 宮本 崇, 天方 匡純
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 172-181
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    従来,ダム流入量の予測手法としてタンク・モデルなどの物理モデルが使われてきた.物理モデルは実際の現象を近似する関数と考えることができるので,ニューラルネットワークで代替すれば物理モデルと同等以上の性能で予測ができるはずである.そこで本研究ではタンク・モデルとニューラルネットワークとで入力データなどの条件をできるだけ揃えた上でダム流入量予測の比較を行った.本研究のタンク・モデルは直近の観測量を用いた改良を施すことにより大規模出水時の流入量を比較的精度よく予測できた.一方,条件を揃えて訓練したニューラルネットワークはタンク・モデルと同等かそれ以上の予測精度を示した.この結果はニューラルネットワークの予測性能の下限が物理モデルで与えられることを示唆している.

  • 加村 晃良, 長尾 和之, 澤野 幸輝, 権 永哲, 芳賀 奈津美, 大塚 智貴, 風間 基樹
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 182-193
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,豪雨に起因する東北地方の高速道路の切土法面崩壊を対象として,降雨データの分析を実施した.その結果,深層学習に用いる降雨データは気象庁解析雨量が適していること,および誘因(降雨データ)のみから切土法面の崩壊可能性を判定することは困難であること等が明らかとなった.さらに,雨量分析に基づく誘因と素因を組み合わせて新たにデータセット化した深層学習モデルを構築し,切土の崩壊可能性の判定を試みた.その結果,正解率92~96%,敏感率65~74%を有する深層学習モデルが構築された.ただし,構築したモデルは,時間最大雨量や素因においてリスクが高いケースをやや崩壊側に偏って判定する傾向を示し,更なる学習データ蓄積の必要性も明らかとなった.

  • 大塚 智貴, 加村 晃良, 風間 基樹
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 194-201
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    高速道路における豪雨時の切土法面の崩壊確率推定に深層学習を適用するため,斜面崩壊の素因を対象として深層学習の教師データに関する妥当性評価を実施した.先行研究では,法面の素因の特徴量を人為的に重み付け点数化し,崩壊リスクを定量評価する手法が提案されている.本研究では,データセットの客観性や汎用性を向上させることを目的として,特徴量の重み付け点数化をせずに,項目のみを客観的にデータセット化して深層学習を行い,先行研究による手法との比較および妥当性評価を実施した.その結果,データセット中の素因に対して,重み付けした評点を用いない方が,最新の崩壊事例に対する予測精度が向上することが確認された.

  • 伊藤 真一, 酒匂 一成
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 202-210
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    豪雨災害発生時において,人的被害の軽減や住民の避難ルート確保のためには,土砂災害によって道路が通行不能になる降雨の程度をあらかじめ把握しておくことが重要である.本研究では,「通れた道マップ」の情報を機械学習におけるラベルとして用いて,令和2年7月豪雨時のデータを学習させた道路の通行不能予測モデルの構築を試みた.しかし,構築されたモデルは実際に通行不能になったラベルに対する再現率が低く,道路が通行不能になる降雨の程度を把握するためのモデルとしては不適切であることがわかった.この理由として,災害発生箇所の特定に問題があったこと,入力データとして地形的特徴と降雨情報だけでは不十分であったことが明らかになった.

  • 内藤 昌平, 友澤 弘充, 森 悠史, 中村 洋光, 藤原 広行
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 211-222
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    災害発生直後の被害状況把握を目的に,ヘリコプターやドローン等により斜め方向から撮影された航空写真を用いた深層学習により,画像内の建物や斜面崩壊箇所を自動抽出するとともに,建物被害については無被害,損傷,倒壊にそれぞれ相当する3段階に自動判別するモデルを開発した.このモデルを用いて未学習のテスト用航空写真を用いた判別を行った結果,各区分におけるF値の平均値が約64%,mAPが約0.35の判別性能を確認した.

  • 叶井 和樹, 久保 栞, 山根 達郎, 全 邦釘
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 223-231
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    日本では, 地震や豪雨に伴う土砂災害が数多く発生している.国土地理院は,被害状況把握のため,土砂崩壊地を示した崩壊地等分布図を作成しているが,土砂崩壊地の判読を技術者が手作業で行っており,多くの時間を要している.また,近年,深層学習による機械学習を用いて土砂崩壊地の検出を行う研究が行われている.しかし,深層学習により土砂崩壊地を検出する研究は少なく,研究は発展途上にあり,手法や解析データの蓄積が必要な段階である.そこで,本研究では,土砂崩壊地の選定作業の効率化を目的とし,深層学習の一種であるMask R-CNNによるSemantic Segmentationを用いて土砂崩壊地を検出し,そして学習データの違いによる検出結果の比較を行う.本研究は,災害後の航空写真のみを用いて土砂崩壊地の検出を行い,効率的な被害状況の把握を目指す点にも有用性があり,今後の災害査定への活用も期待することができる.

  • 森崎 裕磨, 藤生 慎, 高山 純一, 平子 絋平
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 232-240
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,頻発する地震災害時において,災害時要配慮者の人的被害が大きい.将来,発生が想定される南海トラフ地震のような通信環境が途絶する規模の地震災害時には,要配慮者の存在位置・ニーズ把握を網羅的に把握する手法が求められている.筆者らは上記の問題に対して,SAR画像に反応するリフレクタを用いた要配慮者の存在位置・ニーズ把握手法の開発を行っている.本研究では,開発を行っている手法の実用化を目指し,リフレクタを配布する対象者選定のための検索システムの提案を行う.地域に存在する要配慮者を把握するため,医療ビッグデータの国民健康保険データを活用する.本研究の分析を通して,要介護状態,ICD-10による疾患情報を考慮した検索システムを作成することができ,防災工学,保健学の専門家による有用な評価を得ることができた.

  • 斎藤 隆泰, 竹田 晴彦, 廣瀬 壮一
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 241-250
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,レーザ超音波可視化試験(LUVT: Laser Ultrasonic Visualization Testing)と機械学習を用いた,CFRP-コンクリート複合構造における未接着部分の非破壊検査法について検討する.一般的に,LUVTでは,レーザ照射面における超音波伝搬の時刻歴画像(動画)を得ることができる.その際,検査員は目視で得られた超音波伝搬の時刻歴画像を確認し,欠陥の有無等を判断することとなる.しかしながら,将来,検査技術者の不足が懸念されていること,CFRP中の超音波伝搬は音響異方性を示し複雑であること等を考慮すれば,この目視での欠陥有無の判定をAIに代替することができれば,検査技術者の負担も軽減できると考えられる.そこで,本研究では実際にCFRPとコンクリートを接着させた試験体を複数作成し,LUVT試験を行い,深層学習を用いて,未接着部分の検出を自動的に行うことを検討する.深層学習の結果より,CFRP試験片の厚さが薄く,かつ適切に学習させれば欠陥の有無を判定できることがわかった.

  • 諏訪 太紀, 藤生 慎, 森崎 裕磨, 福岡 知隆, 石塚 久幸, 田中 尚人, 多田 完人
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 251-260
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    モルタル吹き付けのり面は高度経済成長期に多く施工され,老朽化が一斉に進んでいる.モルタル吹き付けのり面の変状のうち浮きについては,目視により確認することは困難であり,打音検査により確認する.しかし,点検技術者の不足,国や地方自治体の財政難などの状況下において,今後打音検査のみによる浮きの診断を継続的に行うことには限界がある.本研究では浮き部と健全部で熱容量に差がある特徴を活用して,UAVに搭載した赤外線カメラより取得した赤外線画像を用いて深層学習モデルの構築を行なった.また,学習に用いていない画像を用いた実験の結果,モルタル吹き付けのり面に存在する浮き部の推定を精度良く行う事が出来ることを確認した.

  • 湯本 耀大, 藤生 慎, 轟 直希, 柳沢 吉保, 高山 純一
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 261-271
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    国土交通省は,人口減少・超高齢化社会の傾向が都心部に比べて,より顕著な地方都市において,まちの郊外化や財政的懸念等から集約型都市の実現が必要であると指摘している.集約型都市への実現には,生活拠点を設定した上で拠点内の生活利便性と歩行回遊性を高めることが不可欠であり,中心市街地の活性化が重要であるといえる.本研究では,長野市中心市街地を対象として,トリップ数と移動距離から算出した移動抵抗を含んだ変数である目的充足度合いを作成した.この変数と中心市街地内活性化事業によって変化する可能性がある政策変数を組みこんだ回遊行動モデルを構築し,立ち寄り数のシミュレーションを行った.この結果から,組み込んだ変数条件値を変容させたことによって,市街地内の回遊行動にもたらされる立ち寄り数の変化が明らかになった.

  • 湯本 耀大, 出水 瑛, 藤生 慎, 高山 純一
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 272-283
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,我が国では人口減少・少子高齢化といった社会問題からまちの外延化が深刻化している.そのため,国土交通省は集約型都市の実現のため公共交通ネットワークや都市機能インフラのストックがある中心市街地を活性化させることが重要であるとしている.

    本研究では,金沢市中心市街地を研究対象地域として,スマートフォンアプリ「TriPre」から得られたGPSデータを活用し,行動抽出によるデータ変化の分析を行った.分析手法としては,移動軌跡及びカーネル密度推定を用いた.研究結果から,交通手段別や昼夜間別,新型コロナウイルス流行前と新型コロナウイルス禍による移動軌跡における行動圏の変化を確認することができた.

  • 湯本 耀大, 出水 瑛, 藤生 慎, 高山 純一
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 284-294
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    政府は,多くの地方都市において人口減少による少子高齢化やモータリゼーションスパイラルによる市街地内の賑わいの低下している.地域活性化には,人の流れに着目し,滞在人口等を考慮した上で市民や観光客に向けて施策を検討していくことが重要であるといえる.そのため,本研究では,事前に行ったアンケート調査と属性情報付きモバイル空間統計データから,新型コロナウイルス感染症の拡大による行動特性の分析を行った.結果から,新型コロナウイルス感染症の拡大によって,属性に関係なく行動特性に影響を受け,地域別では,4メッシュ共に地域特性が時間帯・時期によって異なることが確認され,特に都心軸エリアと住宅街エリアの差異が大きいことが確認された.

  • 湯本 耀大, 藤生 慎, 山谷 径, 小林 拓磨, 久冨 哲兵, 高山 純一, 森崎 裕磨
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 295-306
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    新型コロナウイルスの感染拡大によって我が国は,新たな生活様式への転換が求められるようになったが,感染拡大によって特に変化した生活行動として購買行動が挙げられる.これまでの店舗に直接赴き,買い物を行う購買形態からEC(Electronic commerce)での購入や食品配達,さらには,モバイルオーダーといったサービスが急速に進んだ.そのような背景から本研究では,変化した生活様式として特に購買行動に着目し,購買ビッグデータを活用して石川県の市町村を対象地域として分析を行った.結果から,市町村の規模により購買圏域に変化が見られた他,購入金額,主要購入品目についても地域や年齢や市内購買,市外購買等に着目することで新型コロナウイルス感染拡大前後の変化に対する考察を得ることができた.

  • 鈴木 琢也, 中村 壮志, 水島 大地
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 307-313
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,従来とは異なるアプローチでの構造最適化手法として,構造最適化問題を対戦型ゲームに見立て,そのゲームをプレイするエージェントを強化学習によって構築することで構造最適化を行う手法を提案し,例題を用いてその適用性を検討するものである.まず,対戦型構造最適化ゲームの概要を説明し,つづいて,エージェントの構成および学習計画について述べる.さらに,構築されたエージェントによるゲームのプレイ結果を確認することで,提案手法による構造最適化の可能性を検証する.その結果,汎化性能などに課題があるものの,構造最適化エージェントを強化学習によって構築できる可能性があることが確認された.

  • 森崎 裕磨, 藤生 慎, 諏訪 太紀, 古田 竜一, 高山 純一
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 314-323
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    地震災害は規模が広域化するほど被災者ニーズの収集が難しくなり,細やかな被災者支援の実現も困難を極める.また,地震災害が甚大化するほど携帯電話,防災アプリ等の使用が困難になることが知られている.筆者らは SAR衛星が観測可能かつ後方散乱係数が異なる複数のリフレクタを開発し,大規模地震災害発生直後に被災者に設置していただき,存在位置・ニーズを把握する仕組みの提案を行っている.本研究では,物体検出アルゴリズム YOLOv5及び時系列SAR画像を用いた異常検知手法を組み合わせることにより,広範囲SAR画像の中に観測されたリフレクタを検出する手法の提案を行う.本研究における分析を通して,10×10kmのSAR画像に観測された9個のリフレクタに対して,8地点で検出が可能となった.

  • 森脇 佑太, 藤生 慎, 髙山 純一, 森崎 裕磨
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 324-332
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    近年わが国では,頻発する大規模災害において避難行動要支援者が被災することが多く,大規模災害発生時にどのように避難行動要支援者の避難行動支援を行うかが課題となっている.特に河川氾濫などの,時間経過に伴い被害が大きくなる災害時には迅速な避難行動が要求される.そこで本研究では,石川県小松市における梯川の氾濫を想定し,自動運転自動車を用いて避難行動要支援者の移動に関する支援を行った際のシミュレーションを行い,乗車時間,呼びかけ時間,準備時間から避難に要する時間を算出した.その後一人当たりの乗車時間,呼びかけ時間,準備時間を変化させた場合の所要時間の変化から,自動運転自動車を用いて避難支援を行う際の所要時間には乗車時間や準備時間などの避難者の行動が大きく関係することが得られた.

  • 門田 峰典, 宮森 保紀
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 333-340
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    わが国では,土木分野の各段階の情報を 3次元モデルに集約する BIM/CIMの導入が進んでいるが,既設構造物の 3次元モデルの生成には多くの労力を要する.特に維持管理では,損傷の把握や補修補強で活用するためには高い詳細度が必要となる.このような場合,レーザや写真から生成される点群情報は構造物の現状に即して詳細なモデルを得られる可能性がある.本論文では,維持管理や保全業務での 3次元モデルの現状を把握し,技術開発や普及の課題について考察する.具体的には,点群データ取得方法の概要を述べ,実用化されている技術について調査し,構造分野における課題と将来像について述べる.さらに, 3次元モデルの高度活用のために,構造解析可能な 3次元モデルへの変換に関する研究動向についても述べる.

  • 石毛 成, 浅本 晋吾, 岡﨑 百合子, 岡﨑 慎一郎
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 341-348
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,コンクリートの乾燥収縮実験のデータベースを用いて,示方書予測式,複数の機械学習モデルで乾燥6か月の収縮ひずみの予測及び回帰分析を行った.機械学習のパラメータの最適化で予測精度はわずかに向上したが,本検討で用いたデータベースと学習モデルではデフォルトの設定でも一定レベルの予測が可能であった.また,予測子に乾燥28日の収縮ひずみを用いると,機械学習による乾燥6か月の収縮予測の精度は大幅に上昇した.予測子の重要度分析では,単位水量や骨材密度に関するパラメータの重要度が高く,乾燥28日の収縮ひずみを用いると重要度が最も高くなった.乾燥途中の収縮ひずみは材料特性,施工性などの要因も包含し,機械学習を用いることで,設計上のパラメータ以外の要因による影響が大きいケースも抽出できることが分かった.

  • 亀田 敏弘, 中川 佳大, 中川 諒, 大町 正和, 梅本 秀二
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 349-354
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    AIへの活用のみならず,社会基盤の各種データへの大量供給のニーズは今後ますます高まることが予想され,データの詳細度を高めるためにデータプラットフォームへのデータ供給を効率化することが求められている.本研究では,計測されたデータの供給の自動化と即時多方面利用を実現可能な手法として,MQTTプロトコルの活用に着目して,LPWAによる自動データ計測と組み合わせた場合の自動計測データ供給の効率化について検討を行った.データ配信時のセキュリティ確保については,LoRaWANのAES暗号化手法に加えてMQTTのTLS接続を用いた.また,計測とデータ供給を行うプロトタイプを構築し,公開プロトコル仕様であり,1対多の接続が可能であるMQTTの特徴を生かした社会基盤データのリアルタイム供給の可能性を検討した.

  • 藤井 涼, 森崎 裕磨, 藤生 慎, 髙山 純一
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 355-361
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    2019年11月に中華人民共和国湖北省武漢市付近で発生が初めて確認されたCOVID-19は、その後世界中に感染拡大しパンデミックを引き起こしている.人と人との接触による飛沫感染や国内へのウィルス流入を防ぐ為,世界各国は国民の外出禁止措置や国境封鎖という対策を行った.人の移動が国内・国外に関わらず大幅に制限されたことは、航空業界に甚大な影響をもたらした.本研究ではCOVID-19による航空業界への影響の詳細な把握を試みた.分析には飛行中の民間航空機の現在位置をリアルタイム表示するアプリケーションであるFlightradar24より得られるデータを使用した.本研究による分析を通して,COVID-19の影響による航空機運航数を時系列的に把握することが可能となった.また,同一路線における航空会社ごとのCOVID-19への対応の差異等を明らかにするとともに,利用者数の面で考察を行った.

  • 齊藤 駿, 藤生 慎, 福岡 知隆
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 362-369
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    社会インフラの維持管理分野において,少子高齢化の深刻化によって技術者が不足している.加えて,老朽化が進行した構造物が増加しているため,維持管理コストの削減が求められる.このような人手不足の解消やコストの削減に期待がもてる技術として,近年,近接目視点検の代替手法となるICTを活用した点検が注目されている.VR(Virtual Reality)を用いた手法では,現場に赴く必要がないため社会インフラの点検業務の省力化が期待できる.本研究では,VR技術を活用し現実の橋梁をVR空間上に再現し,AIを用いて検出した損傷を表示することで,点検環境の構築及びAIの結果表示による点検支援の可能性の検証を行う.

  • 九澤 賢太郎, 寒河江 雅彦, 藤生 慎, 森崎 裕磨
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 370-377
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では石川県羽咋市を事例として,到達圏解析を用いて施設からの徒歩10分圏内の生活充足施設の有無,種類で各町の施設カバー率を得点化し,k-means法を用いて生活脆弱性の可視化と施設の撤退可能性を考慮した生活脆弱性の将来推計を行った.

    分析結果として2020年と2045年の生活脆弱性を比較することで,高齢化の進展による徒歩可能範囲の縮小化と人口減少による施設の撤退が要因となり,準生活充足圏から準生活脆弱圏へ,準生活脆弱圏から生活脆弱圏へのシフトが見られた.また,生活脆弱性の高い地区が大幅に上昇する.生活充足圏が現状を維持するという結果になったが,これは生活脆弱性を持った町字から市の中心部への流入と集中化がみられ,都市そのものの縮小化が予想される.

  • 田井 政行, 関屋 英彦, 岡谷 貴之, 中村 聖三, 清水 隆史
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 378-385
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    耐候性鋼橋梁の点検・診断は,防食機能の劣化状態の判定に基づき行われており,その判定には外観評点法が用いられる.しかしながら,外観評点法により的確な評価を行うためには,相応の経験を要するが,昨今の人材不足や点検費用の確保などの課題があり,簡易かつ精度が高い評価手法の確立が求められている.本研究では,耐候性鋼橋梁のさび近接画像と既存の CNNモデルを活用し,外観評点の識別精度について検討を行った.また,識別精度に及ぼす学習・検証用近接画像の画像サイズの影響についても検討を行った.その結果,VGG19及び SEnetの CNNモデルが高い識別精度を示した.また,入力画像サイズが大きいほど識別精度が向上することを明らかにした.さらに,学習と検証に用いた画像の解像度が異なる場合,識別精度が低下する傾向があることを示した.

  • 小山 茂, 纐纈 恭敏
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 386-392
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    構造物の長寿命化のためには,劣化や損傷を早期に発見することが重要である.その方法として,構造物の健全な状態と損傷した状態における振動特性の違いから損傷を同定する様々な技術が提案されている.しかしながら,自然災害や長期にわたる劣化などにより多くの箇所に損傷が発生する場合,それらを正確に評価することは難しい.そこで,振動特性として固有振動数と固有振動モードに着目し,複数の損傷を有する単純梁と片持ち梁を対象に,入力の異なる2種類のニューラルネットワークによる損傷の同定を試みた.本研究では,高次の振動モードおよび振動モードに含まれるたわみ角成分に着目し,同定精度に及ぼす影響を検討した.また,それぞれの境界条件に適したデータの前処理の必要性を示唆した.

  • 山洞 智弘, 中津川 誠, 小林 洋介
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 393-399
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,利水ダムに適用可能なダム流入量予測の一般化手法の提案である.近年,全国的に頻発している大洪水に対し,事前放流によるダムの治水機能向上が注目されている.しかしながら,観測情報が少なく,具体的な治水操作が定まっていない利水ダムでは,利水への弊害も懸念されることから,事前放流の実施に難しい判断が必要となり,管理者の負担が大きくなる.これに伴い,利水ダムでの流入量予測精度の向上が望まれている.本研究では,少ない情報からデータ間の関係性を特定することを目的に活用が進んでいるスパースモデリング手法であるElastic Netの結果に基づき,ダムの流入量を予測できる回帰モデルを提案した.これによって,観測情報の少ない条件下でも予測可能な手法を提案できた.

  • 荒木 健, 邱 騁, 一言 正之
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 400-407
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    山間部の積雪水量の把握は水利用や防災の両面で重要であるが,積雪の観測箇所は限られ,その空間分布を正確かつ迅速に把握することは難しい.本研究では,衛星データから得られる積雪範囲や観測地点の実測値など,リアルタイムの観測情報を入力し,深層学習により積雪深の空間分布を求める手法を提案した.過去の実測値がない積雪深分布や積雪範囲などの学習データの作成には,積雪・融雪過程をモデル化した物理シミュレーションを活用した.2か年分の冬期間のデータを学習し,学習対象とは別の年の推定を行ったところ,積雪・融雪期の積雪深変化傾向を概ね再現できた.学習対象データを変えた複数ケースの比較からは,学習対象の積雪深規模が推論時の積雪深の傾向に影響を与えること,学習データを増やすことで精度向上できることが確認された.

  • 林 詳悟, 髙畑 東志明, 橋本 和明, 内田 純二
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 408-417
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,頻発している異常降雨に伴い,土石流による自然災害の発生が多くなっている.NEXCOでは土石流対策を重点課題として講じてきたが,その被災状況や要因は多様化しており,流域面積の小さい小規模渓流でも土石流災害が発生している.小規模渓流は本線沿線の広範囲に多数存在するため,専門技術者が現地踏査して全ての危険個所を特定することは困難である.そこで,本論では,令和2年7月に発生した小規模渓流の土石流災害個所の地形特徴に着目した危険個所の絞り込み技術について検討を行った.航空レーダ計測による3次元地形データを画像として用い,AIにより地形の類似性を評価することで危険個所の絞り込みを行った.さらに,現場踏査により類似性評価の適応性を確認し,踏査結果をフィードバックして判別精度の改善を図った.

  • 稲富 翔伍, 全 邦釘
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 418-427
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    社会基盤構造物の点検自動化・効率化を目標として点群が取得されるケースが増えている.点群の活用においては点群を部材毎に分類するセグメンテーションが求められる.本研究では橋梁点群データを部材毎に自動的にセグメンテーションする技術の構築を目的とする.3次元の橋梁点群を2次元画像化した後,Deeplabv3+を用いた画像ベースのセマンティックセグメンテーションにより部材推定を行い,推定結果をもとの3次元点群に反映することで点群のセグメンテーションを行った.

  • 稲富 翔伍, 全 邦釘
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 428-436
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,橋梁の維持管理において 3次元モデルの活用が期待されており,3次元モデルの自動生成の実現は有益であると考えられる.本研究では橋梁から取得される点群を用いて自動的に構造物表面を表す平面領域を個別抽出する手法の基礎的検討を行った.本研究では,構造物表面を成す平面を,RANSACを改良した手法により抽出するとともに,得られた各平面上の点群を DBSCANにより選別した.得られた平面の交差により構造物のエッジを捉え,平面グラフ法を用いて構造物表面を構築した.RANSACに対して点群の法線とモデル平面の法線を用いた推論を加える改良を施すことで,複雑な表面形状に対して適切な平面の抽出が可能となった.

  • 湧田 雄基, 山下 明美, 吉田 啓佑, 龍田 斉, 関 和彦, 有井 賢次, 熊谷 兼太郎, 中畑 和之, 長沼 諭
    2021 年 2 巻 J2 号 p. 437-446
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/17
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文では,インフラマネジメント分野における AI(Artificial Intelligence)の活用を目的として,分析性能とモデルの解釈性に着目し,AI活用の可能性についての考察を行う.特に,近年,機械学習のコンペティション等で好成績を上げているアンサンブル型学習手法を中心に, XGBoost,LightGBM,CatBoost, Random Forest,決定木分析について,その数理的背景の概要を述べる.これらの手法により橋梁の劣化の推定を試行した結果について報告する.また,この結果について,個々の手法の特性をふまえ, AIのインフラマネジメント業務における活用の視点より考察を行った結果について報告する.

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