2021 年 2 巻 J2 号 p. 457-465
社会インフラの老朽化から,効率的な維持管理技術が求められている.本研究では,維持管理に重要な橋梁の状態を推定するため,デジタルツインモデルの構築と適用を目指す.既設の長大鋼斜張橋全体を対象に,精緻に再現した大規模有限要素モデルを構築し,死荷重およびプレストレスによって各部材に生じる応力の再現を試みた.さらに対象橋梁の主桁形状,ケーブル張力および残留応力の測定を行い,設計想定の変形状態と実際の変形状態の差分から,実橋梁の状態再現における課題を考察した.また,健全性の評価を見据えて,大規模モデルを用いた耐荷力解析を実施した.非線形性を考慮した 2億自由度規模の橋梁全体の解析が可能であることを示した.また,精緻なモデリングによって局所から広域への降伏領域の拡大状況を把握できることを示した.