2022 年 3 巻 J2 号 p. 446-455
本論文は豪雨災害時の河川水位予測にスパースモデリングを適応することを目指し,L1正則化項のみを考慮したLasso回帰,L2正則化項のみを考慮したRidge回帰,及びこれらを一般化したElastic netによる予測結果を比較した.水位予測モデルの学習には令和2年7月豪雨の被害を受けた3河川6地点の過去10年分のデータを用い,豪雨災害期間の実測値で評価した.その結果,Lasso回帰とRidge回帰は異なる説明変数に重みをつけた学習をする傾向があるが,Elastic netはLasso回帰とほぼ同等の予測性能であり,選択される説明変数も多くが共通した.流域面積が広い場合はスパースモデリングによる予測モデルはリードタイムが長い傾向にあった.平成30年北海道豪雨のデータを用い,時系列を考慮したリカレントニューラルネットワークによる水位予測とも比較し,ほぼ同精度で安全側の予測が可能であることも明らかとした.