AI・データサイエンス論文集
Online ISSN : 2435-9262
3 巻, J2 号
選択された号の論文の123件中1~50を表示しています
  • 松原 崇充
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 1-5
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    土木・建設分野では,人口減少や他産業よりも高い高齢化率,建設機械オペレーターをはじめとする労働者の不足の問題を抱えており,AI を活用した自動施工や建設機械の自動運転化の実現が急務となっている.本稿では,建設機械による掘削および整地作業の自動化に向けた,模倣学習および強化学習による著者らのアプローチを概説し,シミュレーションおよびロボットを用いた簡易的な実験環境における,掘削および整地作業タスクに対する実験検証の結果を紹介する.

  • 板倉 健太, 林 拓哉, 野秋 収平, 上脇 優人, 細井 文樹
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 6-16
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    大規模な圃場の収量を自動的かつ高精度に把握する方法が求められている.本研究では,テンサイを対象として,収穫機に取り付けたカメラから撮影した動画を用い,場所ごとの収穫量の分布を求める.はじめに,YOLOなどの深層学習ネットワークを用いて,収穫機中のベルトコンベア上のテンサイを自動的に検出した.そして,それらの物体追跡を行うことで,連続した動画フレームにおけるテンサイの紐づけを行った.例えば,ベルトコンベア上に流れるテンサイの個数を847個中840個であると精度よくカウンティングすることができた.そして,画像からテンサイの寸法を求め,あらかじめ得た回帰式を用いて,重量に変換した.収穫機に取り付けたカメラは位置情報を有しており,この位置情報と動画の解析結果を統合することで,場所ごとの収穫量を求めることができた.

  • 北岡 貴文, 山本 雄平, 水谷 未来, 小林 泰三
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 17-22
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    地盤構造物の設計では,地盤調査で得られた結果から設計計算に直接必要なパラメータへ変換するが,その変換誤差は課題とされている.人工知能により地盤構造物の設計,地盤数値解析に必要な地盤定数を精度よく推定することができれば,解析に必要な情報量の増大が期待される.そこで本研究では,関西圏地盤情報データベースから地盤の物理試験や粒度試験等,三軸圧縮試験による内部摩擦角の計296セットデータを整理し,人工ニューラルネットワーク(以下,ANNと称す)により内部摩擦角の推定を試みた.その結果,UU試験を除外することで,0.657の決定係数を示した.本論文では,現状のANNの推定レベルと課題,今後の展望について言及したものである.

  • 石橋 寛樹, 西山 起史
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 23-34
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    機械学習とハザード評価に基づく,豪雨時の斜面崩壊危険度評価および対策優先度判定手法を提示する.リサンプリングにより機械学習用データの不均衡問題を改善し,ランダムフォレストおよび LightGBM を 用いて,降雨の時間変化を考慮した雨量指標や地形・土壌・地質・植生に関する種々のデータを説明変数とする斜面崩壊予測モデルを構築する.一般化極値分布を用いたハザード評価により得られる確率雨量指標(再現期間に対する雨量指標の期待値)を予測モデルに入力することで,再現期間に対応する斜面崩壊発生箇所を推定する.各機械学習手法の分類精度を検証した結果,LightGBMによる予測モデルが防災上優れた精度を示すことが確認された.ケーススタディでは,提案手法により再現期間に基づく優先度を設けた段階的な斜面防災対策の立案が可能であることが示された.

  • 福井 智大, 黒田 一郎
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 35-46
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,AI技術を用いた腐食ひび割れの打音判定において教師データ,テストデータ収録時の打撃条件が判定結果に及ぼす影響について検討を行った.腐食ひび割れが生じたRC供試体への打音を収録し,ニューラルネットワークによって腐食ひび割れの有無を判定する実験を行い,教師データとテストデータでの最大衝撃力の違いや最大衝撃力のばらつきの範囲が判定結果に及ぼす影響について考察した.その結果,両データ間で最大衝撃力が同程度の場合には最大衝撃力が大きいほど正解率が向上し,両データ間で最大衝撃力が異なる場合や両データの内いずれかの最大衝撃力のばらつきの範囲が広い場合には正解率が低くなり,打音収録においては最大衝撃力を大きく,ばらつきの範囲を狭くした上で両データ間の最大衝撃力を同程度にすることが望ましいことを明らかにした.

  • 川野輪 壮太, 林 詳悟, 岡谷 貴之, Kang-Jun Liu, 全 邦釘
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 47-55
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    コンクリートの熱画像を撮影することで内部損傷を遠隔で検出する赤外線サーモグラフィ法は,人間の 判断では損傷部の見落としが多い.また,赤外線法に Convolutional Neural Network(CNN)による自動検 出を導入する動きはすでに始まっているが,教師データが不足しているため十分な精度は得られていない.そこで,本研究では自己教師あり学習に着目した.自己教師あり学習には,教師ラベルが少なくても高い 精度を実現できる可能性がある.本研究では,自己教師あり学習を赤外線法に導入する方法の一例を示し,その有効性を検証した.

  • 伊藤 真一, 酒匂 一成
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 56-64
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    物理情報を考慮できる深層学習の方法としてPhysics-Informed Neural Networks(PINNs)が注目されている.本研究では,土柱法による保水性試験を対象として,不飽和浸透シミュレーションに対するPINNsの適用性について検証するとともに,PINNs モデルの構築方法について考察した.その結果,適用性に関しては,PINNsモデルによる不飽和浸透シミュレーションは十分に可能であることが明らかになり,PINNsモデルの構築方法としては,損失関数の計算方法として平均二乗誤差よりも二乗和誤差を用いた方が良いこと,PINNsモデルから出力する物理量としては圧力水頭が望ましいことなどがわかった.

  • 設楽 広太, 全 邦釘
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 65-75
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    インフラマネジメントを効率的に行う手法の確立が求められる中で,Deep Learning等の技術の社会実装を見据えたシステムを構築することは重要である.本稿では,画像キャプション技術を活用したWebシステムを構築し,その過程での設計についてまとめている.さらに,本研究で開発したシステムは,ユーザーに利用される中で得られるデータを活用する設計とすることで,システムが継続的に土木工学の専門家の判定結果を取り込むことができる設計としている.また,ユーザーの利用により得られたデータを新たに教師データに加えることが,実際にDeep Leaningの精度向上に繋がっていることも確認した.

  • 樅山 翔哉, 荻野 俊寛
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 76-84
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    しばしば受信波形上で S 波到達点の決定が困難となるベンダーエレメント試験に対して,機械学習による決定支援を念頭に,サポートベクター回帰モデルの汎化性能を検討している.線形理論に基づいて,あらかじめ設定したパラメータの範囲で8960通りの受信波形を計算し,その形状および試験条件に関する11次元の特徴量を抽出,真のS波到達点とともにモデルに学習させた.計算された受信波形に対してS波到達点の予測を行い,真のS波到達点と比較することによりモデルの有効性を確かめている.また,豊浦砂,月面模擬土,泥炭の3種類の試料を対象として得られた実際の実験の受信波形に対してS波到達点の予測を行い,熟練者が判定したS波到達点と比較している.モデルによる予測値は熟練者の判定値とおおむね近い値となることが示されている.

  • 木村 延明, 吉永 育生, 皆川 裕樹, 福重 雄大, 馬場 大地
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 85-91
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,周期性を有するデータを対象として深層学習モデル(DNN)による予測を行う際に,前処 理の段階で周期的な特徴量を抽出し,入力データに追加することで予測精度の向上を図る方法の提案である.提案する前処理の方法では,フーリエ変換・逆変換を用いてデータの周期的な特徴量を抽出・生成し,新たなデータの追加を行う.本方法について,周期性を有すると考えられる排水機場の調整池の水位を対象として検証を行った.約8年間の実測水位から,1日と半日の周期的な特徴量が得られた.これらの周期性データの追加の有り無しによる水位予測結果の比較を行ったところ,周期性データの利用によりリードタイム(LT)1-6 hの場合に,二乗平均平方根誤差は3-5%改善され,本方法の有効性が確認された.さらに,実用化の観点から,将来データに適用したLT1-6 hの予測結果では,高々4%の誤差の改善が見られた.

  • 中村 泰敏, 橋本 岳, 鈴木 康之
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 92-103
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    近年では,土木建設等の分野で航空レーザや地上レーザ等の三次元点群測量器が広く活用されているが,そうした測量器を用いるには,運用コストが高い等の課題がある.そのため,特に小規模土工の建設業では測量器の活用が進んでいない.そうした状況の中,LiDAR を搭載したモバイル端末が発売され,三次元点群データの取得を可能にするアプリケーションも数多くリリースされた.しかし,土木建設分野で必要な公共座標へ対応したアプリケーションは少ない.そこで本論文では,任意座標の三次元点群を公共座標へ変換することを従来手法と比較して飛躍的に簡便に行うことを目標とした.また,実際の小規模土工現場の測量点群の座標を本研究成果によって変換した結果が国土交通省の出来形管理要領に示されている測定精度内に収まることも目標とした.

  • 箕浦 慎太郎, 田中 博文, 昆野 修平
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 104-111
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    鉄道の安全性の向上のためには,事故発生時の詳細な調査とそれに基づく再発防止策の策定・実施が必要不可欠であるが,現状の事故調査では,初動調査に要する時間や,現場状況の保存,調査後の情報共有等の観点から,より効率的かつ効果的な調査手法が求められていた.そこで本研究では,画像解析技術の一つである SfM 多視点ステレオ写真測量を,実際の鉄道車両の脱線事故調査に適用し,その適用可能性を検討した.その結果,現場で撮影した画像のみから現場の詳細な3次元メッシュモデルを取得することが可能であり,そのモデルを活用することで事故の痕跡や軌道部材の確認等に適用可能であることを確認した.また,作成したモデルは,事故時の痕跡の位置やまくらぎ間隔等の寸法測定に対して実用上十分な精度を有していることを確認し,本手法が鉄道脱線事故調査の効率化に有効であることを確認した.

  • 北川 博一, 眞舩 常雄, 佐藤 嘉之, 畑本 浩伸, 宮﨑 安弘
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 112-116
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    屋外環境でもリアルタイムで正確に動作できるAI画像解析システムを開発し,現場実証を行った.人物検知用AIの信頼性を向上させるため,教師学習として現場での膨大な収集画像データをAIに与えている.その結果,リアルタイムで正確に人・車両を識別し接触事故防止が可能なAIの有効性を確認できた.シンプルな構成であるため,AIの判定結果をトリガーとして発報することで様々な機器を組合わせたシステムの拡張が可能となる.多種多様な建設現場の環境シーンに合わせて柔軟に機器を組み合わせることで,業務の効率化・生産性向上の可能性を広げることができた.

  • 中村 智, 山田 大樹, 新谷 美菜, Supasit Srivaranun, 秋山 充良
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 117-127
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    塩害環境にある鉄筋コンクリート(RC)構造物は,塩化物イオンの作用により鉄筋腐食が発生し,コンクリート表面には腐食ひび割れが観察される.腐食ひび割れは,RC部材内部の鉄筋腐食の状況を知る貴重な観測情報であるが,かぶりや配筋などの構造細目の影響を受けるため,両者は複雑な非線形の関係にある.本研究では,構造細目の異なるRC部材を用いた電食実験により,部材軸方向と軸直角方向に相関性を有する鉄筋腐食分布を得た.その2次元確率場パラメータを実験結果に基づき同定し,3次元有限要素解析を実施することで,解析的に機械学習用(pix2pix)のデータベース(鉄筋腐食と腐食ひび割れ幅の関係)を構築した.これにより,劣化RC部材表面の腐食ひび割れ幅の分布と構造細目が与えられることで曲げ耐荷力の推定が可能となった.

  • 亀田 敏弘, 松下 文哉
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 128-133
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,社会基盤のデジタルトランスフォーメーション(DX)が積極的に進められており,将来の維持管理への活用を想定して,BIM/CIM データと維持管理用途のデータを連携させることが進められている.一方で,各種のセンシング・モニタリングの技術開発も絶えず進歩を続けており,設計時には想定されていなかった維持管理用途のデータが将来発生する可能性は高い.こうした新技術を社会実装する際,新規データの仕様やAPIアクセス方法の公開方法や表記が統一されていない状況では,データの増加と共にデータアクセス方法がまちまちになり,持続的なDXの発展に支障をきたすことが予想される.本研究では,データの配信と同時にデータ仕様やAPIアクセス方法が公開可能になり,また,既存のシステムの更新を待つことなく,新しいデータをマイクロサービスとして提供が容易であるなど,スキーマ駆動型API開発の利便性に着目して,社会基盤データアクセスのためのAPI開発の効率化について検討を行った.

  • 内藤 英樹, 木本 智幸, 藤岡 光, 藤倉 修一, 運上 茂樹
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 134-144
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,非破壊試験や構造ヘルスモニタリングによるRC部材の地震時損傷評価を目的として,加速度センサを用いた振動測定と機械学習による異常検知の適用性を検討した.実験による検討では,RCはり試験体およびRC柱試験体の載荷試験において振動測定を行い,載荷後の測定データの異常度を計算した.その結果,提案手法はRCはりのせん断ひび割れや曲げひび割れを検知し,多点測定によって損傷箇所と損傷程度を可視化できることを示した.さらにRC柱の正負交番載荷試験では,塑性ヒンジ部から離れた位置にセンサを設置した場合でも,モニタリングデータの異常度を計算することにより,塑性ヒンジ部におけるかぶりコンクリートの剥落等の重大な損傷を検知できる可能性が示された.

  • 江本 久雄, 佐藤 華苗子, 太田 隆夫
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 145-157
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    わが国では,Society 5.0時代に向けサイバー空間とフィジカル空間を高度に融合した社会の実現を目指している.その背景としては,高度な技術の発展とともに人口減少に伴う労働生産人口の減少が挙げられ,生産性の向上が必要である.橋梁をはじめとする社会基盤構造物の維持管理においては,適切な目視点検結果・評価が重要である.そこで,点検技術者不足を補う方法としては講習会やe-Learningが実施されている.このような学習に対してXRと総称されるVRおよびARの教育支援への活用が考えられる.VRに関しては,そのデータをMR-HMDを通して体験することで没入感のある体験が室内で可能となり,橋梁点検者を支援し生産性を向上させることができる.本論文では,これらの活用ポイントについて述べる.

  • 阿部 剛成, 荻野 俊寛, 林 宏親, 西村 聡, 田中 洋行, 山添 誠隆, 田口 岳志
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 158-167
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    北海道石狩川流域の泥炭性軟弱地盤から得られた675点の自然含水比データにもとづいて,その確率的な分布を深度の関数として一般化線形モデルによってモデル化した.含水比の分布には3種類の確率密度関数を候補とし,その確率分布の平均値を深度に関する0次〜5次の多項式としたモデルが検討された.確率密度関数およびモデル次数が異なる18モデルの統計的,工学的な視点による比較から,有機分を含んだ土質および無機質土に対し,工学的に最良のモデルを提案し,その妥当性が確かめられた.また,ブートストラップ法を用いて提案モデルの含水比平均,5パーセンタイルおよび95パーセンタイル点の信頼区間を算定し,母集団である原地盤における自然含水比分布を推定した.

  • 鴨下 智裕, 高橋 一徳, 羽田 智, 深津 卓弥
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 168-174
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    路面下空洞調査では,道路陥没発生の危険性が高い箇所の迅速な報告が望まれている.これまでAIを用いた地中レーダデータ解析技術を開発し空洞検出の効率化を図ってきたが,さらなる迅速化を進めるため,取得データの自動転送およびクラウド環境においてAI解析を行うシステムの開発を行い,準リアルタイム化を実現した.本システムを用いた実証実験では全長3km 程度の測定を行い,遠隔地にいる解析者が測定後36分程度でAI解析結果とデータを参照できることが示された.これは従来システムにおいて一日~数日程度かかっていた作業を大幅に短縮できたことを示し,さらにデータ集約等に関わる作業を削減し効率化を実現できたことを示した.

  • 斎藤 嘉人, 板倉 健太, 山本 一哉, 二宮 和則, 近藤 直
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 175-181
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    農業人口の減少に伴い農作物の選果の自動化が進む中,特に種バレイショの選別ではそうか病の完全排除が求められる.本研究では,バレイショ表面のそうか病発症部位の検出を目的とし,カラー画像および波長960nmの近赤外画像の2種類の画像の入力によるそうか病発症部位の検出を行った.そうか病発症部位を目視にてラベル付けを行い,セマンティックセグメンテーションによる検出モデルと,主成分分析とサポートベクターマシンによる従来モデル(PCA-SVM)との比較を行った.その結果,セマンティックセグメンテーションは PCA-SVM に比べ検出精度が高く,発症部位はほぼ確実に検出された.また,カラー画像のみの入力と比較し,RGBと近赤外画像の4入力で高い検出精度が得られ,近赤外画像入力の有用性も示唆された.

  • 西内 裕晶, 島﨑 岳冬, 濵田 愛
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 182-189
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,高知市の高度経済成長期にスプロールした地域を対象に,地域特性及び居住利便性の二時点間の変化が空き家率増加に影響を及ぼしているかを把握した.市販されているデジタル住宅地図から空き家データを作成し,空き家発生動態を分析した.その結果,実際の空き家分布と必ず一致するとは限らないものの,住宅における居住者名称の有無を活用することで居住実態を把握できることから,空き家データの作成に有効であることを示唆した.また,人口増減や世帯数増減といった人口に関する要因が最も影響を与えていることを明らかにした.また,高度経済成長期に DID であった地域や特定の住民に利用される生活施設が撤退した地域で空き家率が増加すると判別することも分かった.

  • 増田 和輝, 金澤 剛
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 190-200
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,海岸工学分野でニューラルネットワークおよび深層学習を用いた研究が進められている.特に波浪予測に関して,従来利用されている数値シミュレーションよりも計算コストが優れるため,深層学習を用いた研究が盛んに行われている.しかしながら,既往研究における深層学習は単一地点でのピンポイントな予測が多く,面的な波浪場の予測に関しての研究はあまり行われていない.本研究では,数値シミュレーションにより予報された気象場を入力し,深層学習により波浪の空間分布を求める手法を提案した.学習方法に関して,境界条件である陸域における学習への影響を除くために損失関数に重み付けを導入することで,精度向上できることが確認された.また,入力データは気象場を複数時刻で学習することで波浪の予測精度が向上することがわかった.

  • ショーバック ジェイコブ英輔, 栗間 淳, 後藤 浩之, 三上 武子, 吉田 望, 澤田 純男
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 201-208
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    土の繰返しせん断挙動のモデルには,繰返しせん断試験のデータを整理してパラメータを定めたモデル(数理モデル)が広く用いられているが,試験データ全てを精度よく再現できない可能性がある.そこで本研究は試験データに対し高い再現性をもたらす可能性のある深層学習によるモデルと,試験データに含まれない未知の挙動に対してロバストに振る舞う数理モデルの両者の利点を組み合わせたモデルを構築した.本モデルは大ひずみ域でせん断剛性の予測誤差が大幅に低減され,かつ正負非対称なテストデータに対しても数理モデルの挙動の範疇でロバストに結果が出力されることが示された.

  • 久保 久彦, 木村 武志, 吉田 圭佑
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 209-214
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    ブラックボックス最適化問題の有力な解法としてベイズ最適化が近年注目を集めている.本研究では,地震学におけるブラックボックス最適化問題の一つであるセントロイドモーメントテンソルインバージョンのセントロイド位置および破壊遅れ時間,破壊継続時間の推定への,ベイズ最適化の導入を図った.実地震を模した理論テストによる検証を行ったところ,ランダムサーチに比べて,ベイズ最適化はより少ない試行回数で,より真値に近い解に達することができた.

  • 秋本 哲朗, 手柴 充博, 植木 綾乃
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 215-222
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    日本海沿岸は世界有数の豪雪地帯であることもあり,豪雪の気象学的要因についての研究は積極的に行われている.日本海寒帯気団収束帯(Japan sea Polar air mass Convergence Zone; JPCZ)に起因する,短時間で局所的な強雪は,高速道路上の安全および運用管理上,影響が大きい事象である.このような事象は,現象の継続時間が短く現象の空間スケールが小さいため,従来の気象予測モデルでは再現および予測が難しい.本共同研究では,北陸自動車道に研究対象区間を定め,気象衛星やX 帯気象レーダー(EAGLE レーダー)等の観測データを初期値とし,かつ学習を行って,降雪予測システムを構築し,高速道路上の除雪作業の最適化に繋げることを目的し,研究を行った.

  • 白旗 弘実, 沼津 蓮
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 223-230
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    構造物は漏水が原因となって劣化していくことがあるので,漏水箇所の検知は非常に重要である.ここでは塩化ビニル管を対象として,主に屈曲部分の漏水検知を行った.検知には赤外線カメラ画像を利用した.2年間を通じて赤外線写真を撮影した.これらのデータを教師データとして漏水の有無を判定する機械学習を行わせた.学習方法として,畳み込みニューラルネットワーク,アンサンブル手法と呼ばれるランダムフォレスト,AdaBoost,XGBoostなどを適用した.AdaBoost,ニューラルネットワークが比較的高いF値,正答率であり0.75程度であった.

  • 宇都宮 優喬, 小松 将弘, 土性 則之, 上山 晃, 中村 直人, 山脇 正嗣, 石川 美宏, 山本 礼子, 水野 貴文
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 231-237
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国では,工場などから流出した油類や化学物質が原因となる水質事故が発生している.工場に隣接する排水処理施設や下水処理場では,施設管理者・水質監視員による目視確認によって水質監視を実施しているが,昼夜を問わない継続的な監視が必要となっており,監視人員の配置,水質状態の監視手法に課題がある.そこで本研究では,AI(Artificial Intelligence)技術の一種であり,高度な画像解析能力を持つ深層学習(Deep Learning)を用いて,水質異常を自動検知するモデルを構築し,実際の排水処理施設における F/S を実施した.その結果,水質監視の高度化・省力化に深層学習が有効な技術となり得る可能性を示した.

  • 森藤 優一, 黒田 一郎
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 238-247
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    鉄筋コンクリート梁内部のせん断載荷による損傷を検知する非破壊検査における局所外れ値因子法(LOF)の適用性を確認することを目的としてRC梁供試体を対象とした実験的検討を行った.RC梁供試体内部をせん断損傷させるために目視しうるせん断ひび割れが生じない程度の小さな荷重でせん断載荷を行い,その際のハンマ打撃時の打音とコンクリート表面振動加速度の時刻歴を収録した.収録した時刻歴をフーリエ変換したスペクトルを用いてLOFに基づく判定手法による損傷判定を試みた.その結果,本手法を用いて真陰性率,真陽性率とも概ね 90%を維持して損傷の有無の判定が出来ることを確かめた.また,LOFで必要となる閾値の設定範囲についても検討を加えている.

  • 河原 達哉, 大屋 誠, 武邊 勝道, 広瀬 望
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 248-254
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    耐候性鋼橋梁の補修塗装時には,ブラスト処理による素地調整程度1種を原則とした下地処理と適切な塩分除去が必要とされ,補修現場において時間的制約の中で除錆度の判定を実施しなければならない.除錆度の判定は,ISO規格にある代表写真例との比較による技術者の目視観察を主体とした評価に依存している.そこで本研究では,CNNによる除錆度を定量的に判定可能なシステムの構築を試み,識別精度に及ぼす学習・検証用近接画像の画像サイズの影響について検討を行った.また,画像サイズによる識別時の精度の違いについて,Grad-CAM等を用いて判断根拠の可視化を行った.検討の結果,構築した除錆度判定システムは,Grad-CAM 等による判断根拠の可視化より,画像内の凹凸や色合いを判断していることが示唆され,明確な判断基準のもと除錆度を分類していることから,実務での使用の可能性を示すことができた.

  • 内藤 昌平, 土屋 美恵, 友澤 弘充, 田口 仁, 藤原 広行
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 255-267
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    災害発生後の広域にわたる被害状況を迅速に把握することを目的とし,熊本地震直後に取得された WorldView-3衛星画像を用いて目視判読により建物被害を3区分し,ブルーシート被覆の有無を判読した教師データを26,938枚作成した.次に,衛星画像を128pixel四方に分割したパッチ画像37,121枚を用いて,衛星画像の北側8割の領域から取得したパッチを学習用データ,南側2割の領域から取得したパッチをテスト用データに分割した.続いて,深層学習を用いたセマンテックセグメンテーション手法であるU-Netを用いて建物形状を自動抽出し,被害区分,ブルーシート有無を自動判別するプログラムを開発した.学習用データを用いて構築したモデルをテスト用データにより評価した結果,建物のIoUは約64%,被害3区分のF値の平均は約74%,ブルーシート被覆についてはF値は約 89%となり,被害状況把握に活用可能な程度の被害抽出性能を確認した.

  • 宮﨑 利行, 大沢 明瑠, 菊池 恵和, 菅原 宏明
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 268-276
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    交通系のオープンデータの活用方法を検討するため,データが公開されているイングランドの交通データのダウンロードを行った.活用の一方法として短時間渋滞予測に着目し,イングランド南部で比較的渋滞しやすい場所を選んでAutoML のPyCaret で渋滞の予測を行った.本研究のモデルは,現状がそのまま継続すると仮定した予測や曜日・時刻だけを入力変数としたモデルよりもわずかに高い性能を示し,機械学習による渋滞予測の改善が可能であることを示した.一方,同じ場所でも進行方向によって現状維持モデルの予測性能が大きく変わり,それに伴って機械学習モデルの性能にも大きな違いが見られた.機械学習による渋滞予測の性能を比較する場合にはベースラインとなる予測を定めてそれに対する性能の向上を示す必要があると考える.

  • 山口 愛加, 原田 風渚, 窪田 諭
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 277-286
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    国土交通省は,施工現場へのICTの導入と3次元データの活用を目指している.また,社会基盤施設の計画,設計,施工,維持管理の各段階において取得したデータを電子化し,国土交通プラットフォームにおいて公開している.しかし,施工現場の規模や状況は多種多様であり,データの取得に統一的な手法を用いることは困難であるため,社会基盤施設の各事業段階間における3次元データの受け渡しや,その具体的な活用方法は確立されていない.本研究では,3次元データを流通し利用することを目的に,施工現場の特性と状況を考慮し,情報システムの定義に基づいて,3次元データを基盤として施工と維持管理に関する情報を収集・処理・管理・活用する施工情報システムを構想した.そして,その実現に向けて,施工現場において進捗を可視化する実験を行った.

  • 小瀧 初音, 河原 達哉, 大屋 誠, 武邊 勝道, 広瀬 望
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 287-292
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    異常さびを生じた耐候性鋼橋梁の除錆度の判定は目視で行われていることから,定量的で容易に判断できる技術が求められる.著者らは,深層学習を用いた除錆度判定システムの構築を試みているが,システムの汎化性能を向上させるためには,学習に使用する教師画像を強化する必要がある.そこで本研究では,ノイズから多様な画像が生成できる敵対的生成ネットワーク(GAN)を用いて,除錆度判定システムの教師画像を生成することを試み,生成された画像の客観評価から教師画像としての適用可能性を検討した.検討の結果,SSIM値を用いた生成画像と教師画像の類似度の評価からモード崩壊による教師画像の強化に不適切な画像を判別することが可能であることが確認された.また,GANにより生成した画像を用いて除錆度判定システムの汎化性能の向上を図る可能性が確認された.

  • 諸戸 祐哉, 前田 圭介, 藤後 廉, 小川 貴弘, 長谷山 美紀
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 293-306
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では,積雪に伴う路面状態の悪化検知に向けて,テキストおよび画像情報に基づくFocal Lossを導入した深層学習による冬期路面状態の分類手法を提案する.提案手法では,車両走行路面沿いに設置した定点カメラにより自動で撮影された画像および気象予測情報や路面状況に関連するテキストデータを協調的に利用可能な深層学習モデルを構築することで,マルチモーダルな路面状態分類を実現する.また,冬期路面状態には学習データの分布に偏りが見られることから,データ不均衡問題による分類精度低下が懸念される.そのため,提案手法では,データ不均衡に対応可能なFocal Lossを用いて深層学習モデルの学習を行うことで,データの不均衡を考慮した路面状態の分類を実現する.本稿の最後では,実データを用いた実験を行うことで提案手法の有効性を示す.

  • 柿市 拓巳, 梅澤 俊之, 兼子 覚, 並木 正信
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 307-314
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    橋梁上部工事で使用されるトルシア形高力ボルトの締付完了検査は,全数目視確認により検査を行ってきた.本研究では全数検査の効率化,品質向上を目的に,画像認識AI技術を用いた高力ボルトAI検査システムを開発した.開発したシステムは,スマートフォンにより撮影した静止画像を元に締付完了状態を自動で判別するものである.AIアルゴリズムは,ボルト検出,マーキング識別,ナット識別,ワッシャ識別,ピンテール識別の特徴を学習させることで,締付完了状態を判別させる.本システムを用いて,実橋梁工事で実証実験を行い,精度よく締付完了状態が判別できることを確認した.また,効率化効果についても目視検査と比較して,一定の検査時間の削減効果があることを確認した.

  • 河邊 大剛, 横山 拓海, 金 哲佑
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 315-325
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,撮像装置から取得される動画を用いた道路柱状構造物の固有振動数の推定と異常検知である.実物大柱状構造物を用いて,動画から推定される固有振動数の精度検証を行う.また損傷シナリオとしてアンカーボルト緩解時の計測を実施し,固有振動数低下による異常検知の可能性を検討する.振動抽出には撮影動画の画角全体に処理を施し,特定の周波数帯域のみ拡大させる Phase-based motion magnification 法を適用し,特徴点の追跡により振動波形を抽出する.検討の結果,固有振動数推定値は精度に課題が残る一方で,損傷時の推定値の低下が確認され異常検知の可能性が示された.また撮影動画の背景情報が推定に影響を与える可能性を考慮し,CNN を応用した背景除去手法を導入し,動画処理後の動画に適用することで振動抽出精度向上の可能性について検討を行った.

  • 桑折 奎吾, 劉 ウェン, 丸山 喜久
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 326-338
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    平成30年7月豪雨は,西日本を中心に広範囲に甚大な被害をもたらした.このような豪雨の発生は増加傾向であり,土砂崩壊発生地点を予測することは重要である.現在行われている土砂災害警戒区域等の指定は,労力と時間が非常にかかるうえ,指定状況に関する課題もある.そこで本研究では,機械学習の一手法であるランダムフォレストを用いて,土砂崩壊発生地点の予測モデルを構築した.説明変数の異なる2つのモデルを作成し,その予測精度を比較した.また,近年研究が進められている説明可能AI(XAI)の一つであるSHAPを用いて大域説明,局所説明を行い,予測結果の判断根拠を明らかにした上で2つのモデルの結果に差異が生じた理由の考察を行った.

  • 平野 英孝, 相馬 一義, 宮本 崇, 石平 博, 馬籠 純, 黒田 晴, 倉上 健
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 339-345
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,日本では豪雨や台風による土砂災害が頻発している.特に,富士川流域では土砂災害が発生しやすい地域が多く存在する.土砂災害の減災のためには,素因と誘因を考慮した土砂災害危険度現況推定手法を開発する必要がある.本研究では富士川周辺地域を対象に,クラスター分類と深層学習を用いて素因と誘因を直接的に考慮した土砂災害危険度現況推定手法を構築し,検証を行った.深層学習手法としては,全結合型の深層ニューラルネットワークを用いた.3次メッシュで,各セルごとに誘因として60分間積算 雨量と土壌雨量指数を使用した.素因としては各セルごとの最大傾斜角度と断層の有無を用いた.学習デ ータ,検証・閾値の決定,推定実験と定量的評価には2007年9月6日,2011年9月21日,2019年10月12日の台風による誘因データと土砂災害発生報告を使用した.推定実験では,ニューラルネットワークの出力値から閾値を決定して土砂災害危険度を推定し,土砂災害発生報告書と比較することで評価を行った.評価にあたって,同一行政区域内に「危険度の高い」セルがあり,「災害発生報告あり」のセルがあれば「的中」とした.さらに,評価のために混同行列に基づいて精度指標を算出した.本手法では,見逃しなく推定され,土砂災害危険度現況推定が適切であることが示された.しかし,空振り率が0.906と高く,今後の研究でさらなる改善が必要である.

  • 吉田 純司, 朱 奕綸, 吉崎 歩, 深澤 毅倫, 阿部 雅人
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 346-352
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    強皮症に伴う間質性肺炎の診断では,数十枚のCT画像から5枚を抽出し,専門医が目視により患部を抽出し,肺領域に対する患部領域の割合を主な評価値として病勢を決定している.この診断は,局所的な情報に基づいており,かつ医師により判断基準が異なる可能性を有している.本研究では,間質性肺炎の患者の胸部CT画像を対象として,深層学習より肺領域および患部領域を高い精度・汎化性能で抽出できるニューラルネットワーク(Neural Network: NN)を構築する.次に,構築したNNを用いて全CT画像を用いた患部面積率を算出し,他の検査結果との相関について検討する.最後に,本NNに,結果を効果的に視覚化するポスト処理機能を追加し,実臨床で試運用するためのアプリケーションを作成する.

  • 松下 将大, 鈴木 啓悟, 五味 達矢, 可計 皓規, 河尻 留奈, 鳥居 和之
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 353-359
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,CNNアルゴリズムを用い,橋梁構造物に生じたアルカリシリカ反応(ASR)変状を画像から自動判断するための学習モデルを構築した.画像データの前処理について,グレースケール画像ベースの学習に際しては,RGB最大値手法と適応的ヒストグラム平坦化による輝度調整を組み合わせることで,カラー画像と比べ,良好な分類精度となることを確認した.また,分類モデルには,画像情報以外の追加情報を結合し,分類精度向上を図った.その結果,86.7%の分類精度を発揮することができた.

  • 里村 大樹
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 360-371
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    港湾施設は高度経済成長期にその多くが整備され,今後は建設後50年が経過して老朽化している施設が増加することが見込まれている.更に,厳しい自然環境下に置かれていることから,より効率的かつ的確な維持管理手法が求められている.

    本研究では,港湾管理者等のインフラ維持管理の効率化のため,UAV空撮画像からAI等を活用して港湾の施設の変状を検出すること等により点検診断を支援する「UAVを活用した港湾の施設の点検診断システム」(UAV点検診断システム)の開発を行っている.本稿では当該システムにおけるAIを活用した海面・空(海面等)の推定・除去と,錆汁・鉄筋露出の検出について述べる.

  • 中村 壮志, 鈴木 琢也, 曽根 孝行, 木下 貴博, 二木 秀也, 黒川 雄太, 池田 周英
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 372-379
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    設計時に想定していたよりも大きな地震動が入力された場合,免震構造物が擁壁に衝突する可能性について指摘されている.免震構造物が擁壁に衝突する際の免震システム全体の挙動をシミレーションするためには,衝突に伴う擁壁部の復元力特性をモデル化する必要がある.しかし,そのためには実大実験や精緻な3次元FEM による非線形解析が必要とされ,モデル化は決して容易ではない.そこで本研究では,機械学習による事前学習モデルを用いることで,擁壁衝突時の解析に必要となる免震層擁壁の復元力特性を設計パラメータから即座に算定できる評価手法を提案する.本報では,まず提案手法について説明し,次に実際に提案手法に従い事前学習モデルを構築する.最後に,事前学習モデルによって求めた復元力特性と3次元FEM モデルの結果を使って作成した復元力特性の比較を行い,本提案手法の適用可能性について示した.

  • 中村 朋佳, 堀田 海陽, 吉田 郁政, 中瀬 仁
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 380-388
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    データ同化の代表的な手法であるParticle Filterは一般に計算コストが大きい.対象とする問題によってはリアルタイムでのデータ同化による予測が求められる場合があり,その計算時間の効率化が課題である.本報告ではスポーツのカーリングのストーンの軌道予測を対象に試合前の練習や試合中の迅速なデータ同化を想定し,Particle Filterによるデータ同化の高速化の検討を行った.データ同化の対象とするパラメータ数の削減のために実測データから射出角度とy座標を最小二乗法により簡易に決める.事前に10万の軌道シナリオの計算を実施し,その中から実測データのストーン停止座標周辺のシナリオを抽出して尤度計算を行う.こうした工夫により,1秒以下の計算時間を実現することができた.

  • 富澤 幸久, 中村 朋佳, 吉田 郁政, 鈴木 修一
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 389-397
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    塩害などで生じるRC構造物の腐食ひび割れ幅は撮影された画像などから容易にかつ大量に得ることができるようになってきた.それらを用いて鉄筋の腐食状況の空間分布を正確に推定することができれば,現状把握だけでなく,劣化の将来予測にも役立てることができる.本研究では,確率論的な空間分布推定手法であるガウス過程回帰を用いて,腐食ひび割れ幅の空間分布情報から鋼材質量減少率の1次元空間分布の推定を行う方法の提案を行った.ガウス過程回帰を用いた異種特性値の推定においては相互相関のモデルが重要となるが,そのパラメータは最尤法により推定した.提案手法の検証として室内試験で得られている腐食ひび割れ幅から鋼材質量減少率の空間分布を推定し真値と比較した結果,概ね整合する結果が得られた.

  • 吉倉 麻衣, 福岡 知隆, 諏訪 太紀, 藤生 慎, 高山 純一
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 398-405
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    橋梁点検の作業の省力化に向け,画像から損傷を自動検出する手法への期待が高まっている.著者らのこれまでの研究では,損傷の自動検出の学習データに損傷箇所を接写した画像を多く用いていたが,実際の橋梁点検では損傷の有無や発生箇所がわからない画像に対して検出を行うこととなる.本研究では,深層学習を用いた損傷の自動検出モデルを構築し,橋脚の全体画像に対して複数損傷の検出を行った.損傷の検出結果を橋脚の全体画像に対しレイヤ層状で表示させ,橋梁技術者に損傷状況を把握できるか,ヒアリング調査を実施した.その結果,橋脚の全体画像に損傷の検出結果を表示することで、損傷の位置関係を一目で把握でき,また,技術者はレイヤ層の入れ替えや表示・非表示を自由にできることで,損傷状態の把握に有効性があることを確認した.

  • 井上 晴可, 梅原 喜政, 今井 龍一, 神谷 大介, 田中 成典
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 406-416
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,IoT 機器の急速な普及に伴い,我が国では Society5.0が提唱されている.Society5.0の実現の一例として,カメラで撮影された動画像中の人物を人工知能によって認識・追跡し,顧客の動線解析や犯罪捜査の効率化に活用している.これらの技術は様々な分野へ応用できるが,特に,建設分野では生産性向上や安全管理の発展に寄与することが期待できる.そこで,著者らは,建設現場の安全管理に着目し,作業者のヘルメットに付与した模様を対象に深層学習による人物識別の手法を提案している.しかし,実現場での適用可能性を確認できていない.そこで,本研究では,複数のカメラおよび時系列による補正手法を新たに考案し,人物識別手法を改良した.そして,実現場を対象とした実験を実施した結果,複数カメラおよび時系列による補正手法が有効である知見を得た.

  • 野間 康隆, 和辻 総一郎, 鶴田 亮介
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 417-423
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,ダム等のコンクリートを打ち継ぐ際に必要となるグリーンカットによる打継面の処理の判定に関して,骨材抽出,打継面処理判定が可能な画像解析手法を確立した.この手法では,2種類の平滑化画像ならびにこの平滑化画像の差分画像を用いて,骨材分布を取得し,骨材と判定された領域の面積割合から処理の程度を判別する.この画像解析手法により,実験場ならびに現場で打継面を撮影した画像を用いた検討から良好に骨材抽出ならびに処理の判定を行うことができた.さらには,パノラマ画像を用いた検討においても,良好に処理の判定を行うことができることを確認した.

  • 辻井 純平, 中野 雅章, 合田 哲朗
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 424-432
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    土木構造物の維持管理の効率化を進める上で,点群を活用した3次元モデル化に関する技術が求められている.本研究では,橋梁の3次元モデル化において必要となる点群の位置合わせを目的として,橋軸方向を推定する深層学習モデルとサブサンプリング手法を提案した.深層学習モデルの構築には先行研究の姿勢推定のアプローチを応用した.また,サブサンプリング手法により橋梁の現場で生じる点群の外乱を考慮したデータセットを生成し,深層学習モデルの学習に用いた.本手法により橋軸方向の推定し,既存手法の一つである主成分分析による結果と比較した.その結果,ノイズや欠損を多く含む点群においても本手法は主成分分析より高い推定精度を示し,ロバストな橋軸方向の推定が可能であることが示された.

  • 天野 直紀, 李 昊宇, 丁 宇浩, 斯真田 隆一, 鶴田 健
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 433-437
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    PICフォーム(ポリマー含浸コンクリート)は衝撃・摩耗に対する高い耐久性の面で優れており、頑健性が必要とされる重要箇所に用いられている。その耐久性を測る重要な指標の一つがポリマーの含浸率である。含浸率を計測する従来手法としては含浸前後の重量を比較する手法がある。重量を比較する手法は原理的に非常に明瞭である半面、大型のPICフォームに対して適用するためには大がかりな重量計測装置が必要となる。そのような重量計測はつり上げるなどの手法をとるために所要時間と危険性の面で問題である。本論文では含浸率と音伝播特性に一定の関係があるとの仮説を立てた。スピーカーとマイクを用いた装置を試作し、音伝播特性の変化を機械学習によって推定した。その結果、実用に足る精度で含浸率を推定できることを明らかにした。

  • 深田 宰史, 上野 敏幸, 木綿 隆弘, 北 翔太, 青山 敏幸, 山品 剛, 菅原 保仁, 阿部 雅人
    2022 年 3 巻 J2 号 p. 438-445
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/11/12
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,塩害劣化が生じている橋梁を対象として,橋梁振動や風振動のエネルギーを電力に変換する磁歪式振動発電デバイスを用いた鋼材の腐食モニタリングシステムを開発した.また,このモニタリングの応用展開として,モニタリング結果と三次元構造解析を連携させた解析モデルの構築および耐荷力評価を行った.さらに,道路管理者がモニタリングデータをどこでも状況把握できるようにするため,既存のインフラ統合データベースシステムとモニタリングデータのリアルタイム閲覧を連動させた.

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