2023 年 4 巻 3 号 p. 451-457
日本では多くの自然災害が発生しており,2011年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震では,広域に渡り多くの建物が流失,全壊などの被害を受けた.災害後の復旧活動を早急に行うために,建物の被害状況の把握が必要である.本研究では,広範囲の地球表面の観測が可能な衛星リモートセンシングと,データより自ら学習し,特徴を抽出することができる深層学習を用いた建物の被害状況の分類を行う.本解析では,東北地方太平洋沖地震後の石巻市の高解像度光学衛星画像を使用し,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)により建物の被害状況を「流出」,「被害あり」,「被害なし」に分類し,参照データを用いて定量的な評価を行う.そして,教師データの数,処理パラメータである回転角度,タイルサイズ及びCNNの階層に着目し,これらの分類結果に与える影響について定量的な知見を得ることを目的とした.その結果,回転角度とCNNの階層を組み合わせることで,教師数を増やすのと同等の効果があることを明らかにした.