AI・データサイエンス論文集
Online ISSN : 2435-9262
4 巻, 3 号
選択された号の論文の115件中1~50を表示しています
  • 石橋 寛樹, 陣内 寛大, 石神 晴久, 森田 大樹, 岩城 一郎
    2023 年 4 巻 3 号 p. 1-9
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    個人情報の秘匿性を確保した個人単位の人流データ(仮想パーソントリップデータ)に基づく橋梁の重要度評価手法を提案する.対象橋梁の通行止めを想定した道路ネットワークをグラフ理論に基づいてモデル化し,各パーソントリップに対してダイクストラ法による迂回路探索を行うことで,迂回に伴う移動距離・時間の増加量を算出し,経済損失に換算することで平常時における橋梁の重要度を定量評価する.さらに,耐震安全性が低いと推測される複数橋梁の同時通行止めを想定した迂回シミュレーションにより,地震後に代替路として多く利用される橋梁を同定する.提案手法を福島県郡山市の橋梁群に適用した結果,平常時の交通量は少ないものの経済的に重要度が高い橋梁や,地震後の交通機能維持に重要な役割を果たす橋梁を容易に同定できることが示された.

  • 安達 雄裕, 山田 大樹, 中村 智, 徐 哲俊, 内藤 英樹, 秋山 充良
    2023 年 4 巻 3 号 p. 10-19
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    近接目視に代わり,ドローンを用いた撮影に基づく点検が可能になった.一方,現状はひび割れの確認に留まっており,その画像を用いた対象部材の健全性,特に耐荷力の評価には至っていない.塩害環境下の鉄筋コンクリート(RC)構造物は,鉄筋腐食に伴い部材表面に腐食ひび割れが生じるため,これをドローンにより撮影し,RC部材内部で生じている鉄筋腐食量を推定できれば,劣化RC部材の耐荷力評価が可能となる.本研究では,有限要素解析,確率場理論,および機械学習に加えて,ドローン撮影により取得した腐食ひび割れ幅の情報を用いることで,劣化RCはり部材の耐荷力の確率論的評価を可能にした.また,ドローンを用いて撮影した画像では,近接撮影したものよりも腐食ひび割れの同定が難しく,それがRC部材の耐荷力の推定結果に及ぼす影響を検証した.

  • 河原 達哉, 大屋 誠, 武邊 勝道, 広瀬 望
    2023 年 4 巻 3 号 p. 20-25
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    耐候性鋼橋梁の素地調整時の除錆度判定は,ISO規格にある代表写真例との比較による目視観察を主体とした評価に依存しており,この目視観察に代わる定量的な評価が必要とされる.本研究では,腐食した耐候性鋼材(さび度D)の塗替え塗装の素地調整時の除錆度をVisionTransformerにより定量的に判定可能であるか検討を行った.本検討の実施にあたり,既往研究で示したCNNによる除錆度判定との比較により,Vision Transformerによる除錆度判定システムの評価を行った.また,Attention Weightにより得られるAttention Mapから,判定基準の可視化を行った.検討の結果,Vision Transformerによる除錆度判定の可能性を示すことができた.

  • 増田 和輝, 金澤 剛
    2023 年 4 巻 3 号 p. 26-35
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    データ駆動型科学は数値シミュレーションの代替モデルとしても期待され,海岸工学分野でも波浪予測や津波シミュレーションに利用されているが,データ不均衡性や解釈性の課題がある.近年では,これらの課題を解決する方法として,物理法則を加味したPhysics-informed Neural Networks (PINNs)の活用が進んでいる.本研究では,PINNsを使用して水平床での2次元ダムブレイク問題を実施し,津波シミュレータT-STOCの数値解析値と比較し,PINNsの適用性を検証した.検証の結果,PINNsの再現性が明らかになり,学習した範囲内のパラメタであれば,任意のパラメタで数値解析値に近い推算結果を得られることがわかった.

  • 藤田 悠介
    2023 年 4 巻 3 号 p. 36-45
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    画像上のひび割れを高精度に抽出するためにDeep convolutional neural networkの適用にかかる期待は大きい.しかしながら,高性能なモデルの構築には,膨大なデータの収集と,クラスラベルを付与するアノテーションが必要であり,いかにこれらの作業を効率化するかが課題である.中でも,画素単位でひび割れを抽出する領域分割(セマンティックセグメンテーション)モデルを構築するためには,画素単位でのラベル付けが必要であり,その正確性はモデルの性能にも影響を及ぼす.本論文では,弱教師あり学習の一手法であるMultiple-Instance Learningの枠組みにより,広い領域に対してひび割れの有無を教示したデータを用いて,狭域な領域内でのひび割れの有無を分類するDeep convolutional neural networkモデルを構築する方式を提案する.検証実験により,Multiple-Instance Learningを多段階で適用することにより,ラベルを付与する量を増加させず,高精度で詳細な分類が可能になることを示す.

  • 岡山 貴史, 山本 純之, 木村 匡臣, 松野 裕
    2023 年 4 巻 3 号 p. 46-53
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    カキの優良産地である奈良県五條吉野地域では,収穫時期の半年前頃より収穫作業の労働力確保として短期雇用の計画を始めている.また,地球温暖化の影響で経験則による収穫時期の予測が困難になっているため,新たな予測手法が求められている.本研究では,ANNを用いて気象データからカキの収穫最盛日予測を行った.対象品種は,地域の主力品種’刀根早生’,’平核無’,’富有’の3品種とした.モデルのパラーメータを検討し,品種ごとにモデルを構築した.結果は誤差が最大3日のモデルが構築された.また,3品種とも10月以降に収穫されるが,5月1日と6月1日時点では最大で2.5日の誤差であり,収穫直前までの各月1日時点での誤差は最大3日で予測可能となり,収穫時期の予測手法としてANNの適応可能性が示された.

  • 鏡堂 隼平, 北岡 貴文, 辻野 裕之
    2023 年 4 巻 3 号 p. 54-59
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,AIの画像認識技術が実用化されつつある.建設分野でも,CNNを用いた岩石鑑定など,画像認識を用いた試みが多くなされるようになってきた.そして,CNNを用いる場合,教師データとして多くの画像データが必要となる.このとき,十分な量のデータを入手できない場合は,データ拡張を行い,データ量を増やすことがある.このデータ拡張時には,元画像にはない新たな画像が外挿される.しかし,データ拡張により生成された画像がCNNによる岩石鑑定精度にどのような影響を与えるのか,詳細な検討はされていない.そこで本研究では,データ拡張時に生成される新たな画像について3つのモデルを作成し,評価を行った.その結果,新たな生成画像の影響により岩石鑑定結果を偏らせる傾向の一例を示した.

  • 樅山 翔哉, 荻野 俊寛
    2023 年 4 巻 3 号 p. 60-69
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    受信波形上でS波到達点の決定がしばしば困難となるベンダーエレメント試験において,機械学習による決定支援を行うためのS波到達点予測モデルの高精度化を目的として,サポートベクター回帰,ガウス過程回帰,ニューラルネットワークの3つのアルゴリズムによる機械学習モデルを作成し,予測精度の比較を行った.あらかじめ設定したパラメータの範囲で7240通りの受信波形を計算し,その波形における11次元の特徴量,真のS波到達点を学習させ,S波到達点予測モデルを作成した.学習済みのモデルを用いて実際の実験から得られる受信波形に対してS波到達点の予測を行い,熟練者が判定した値との誤差を比較することで,3つの機械学習アルゴリズムの比較を行った.アルゴリズムごと予測に傾向があり,その中でガウス過程回帰の予測が最も熟練者の判定した値に近いことを示した.

  • 合田 哲朗, 辻井 純平, 高地 透, 中野 雅章, 松山 公年, 園田 崇博
    2023 年 4 巻 3 号 p. 70-82
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,炭素繊維シート補強を有する塩害を受けたPC-T桁の耐力を推定する代理モデルを構築した.まず,炭素繊維シートと内部PC鋼材の損傷状態を変化させた大量のモデルを作成し,非線形FEM解析により桁の耐力を含むデータセットを準備した.続いて,内部PC鋼材の損傷状態を量的にのみ学習したLightGBMによるベースラインモデル及び損傷状態を面的に数値画像として学習したCNN+MLPの2つの代理モデルを作成した.対象PC桁の耐力は,内部PC鋼材の面的な損傷分布等により定まる桁の構造的な弱部に大きく依存するため,この情報を取り込んだCNN+MLPでは耐力の予測精度が向上した.多様な鋼材損傷状態・複合材料補強を有する塩害橋梁の構造評価を代理モデルにより簡便に実施する考え方を示し,力学指標に基づく大量の構造物に対する効率的な維持管理の実現可能性を述べた.

  • 木村 拓憲, 山脇 正嗣, 西牟田 裕介, 早見 俊紀, 小川 明人, 上野 亜耶
    2023 年 4 巻 3 号 p. 83-89
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    国土交通省は2016年4月からバスタ新宿の供用を開始し,以降各地で交通拠点の整備・検討が行われている.交通拠点が備えるべき基本機能として,「交通機能」,「防災機能」,「交流等機能」などが挙げられる.これらの機能を備えた交通拠点の整備にあたり,現状の利用状況や運行状況,利用者のニーズ把握が必要となる.そこで本研究では,AI(人工知能)技術の一種である深層学習による物体検知技術を活用し,近鉄四日市駅の東口バス乗り場における,利用者の解析と利用状況の定量化を実施した.その結果,利用状況や利用者のニーズ把握に,物体検知技術の有効性を検証する.

  • 福井 智大, 森藤 優一, 黒田 一郎
    2023 年 4 巻 3 号 p. 90-99
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,ニューラルネットワーク(NN)モデルを用いた打音による鉄筋コンクリート(RC)梁部材の載荷履歴の有無の判定において,陰性教師データ中への正常ラベルと整合しない誤ったデータ(誤ラベルデータ)の混入が判定結果に及ぼす影響と,局所外れ値因子法(LOF)を用いた誤ラベルデータの除去方法について検討を行ったものである.その結果,陰性教師データ中に誤ラベルデータが混入した場合,誤ラベルデータ混入無しの場合に比べて真陽性率が低下傾向を示すことを確認した.また,その数に限りはあるが,LOFを用いることで陰性教師データ中に混入した誤ラベルデータをある程度まで除去することが可能であり,除去後の教師データを用いた判定においては,誤ラベルデータ混入無しの場合と同等の真陽性率が得られることがわかった.

  • 福永 竜世, 伊藤 真一, 酒匂 一成
    2023 年 4 巻 3 号 p. 100-108
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    Neural Networkモデルを構築する際の損失関数に支配方程式などの物理情報を導入することで,その予測結果に物理的意味を付与する方法としてPhysics-Informed Neural Networks(PINNs)が提案されている.本研究では,土柱法による保水性試験を対象として,PINNsによる不飽和浸透特性に関するパラメータの逆解析を試みた.その結果,PINNsによる土柱法の計測データに基づく不飽和浸透特性パラメータの逆解析は,推定できるパラメータの個数に課題はあるものの,試験に用いた土試料の特徴を捉えたパラメータを推定可能であることが明らかになり,不飽和浸透問題の逆解析に対してPINNsは有効であることが確認できた.

  • 荻野 俊寛, 長谷川 直輝, 田中 洋行, 山添 誠隆, 西村 聡
    2023 年 4 巻 3 号 p. 109-118
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    限られた調査データから地盤内の自然含水比分布を予測することを目的として,北海道の天塩地区,および江別地区の泥炭地盤で実施した調査結果にもとづき,ガウス過程回帰を用いて自然含水比の2次元分布をベイズ推定した.また,クロスバリデーションを用いて予測精度を検証した.推定結果にもとづいて,マルコフ連鎖モンテカルロ法によって推定された空間相関に関するパラメータの値が示されており,泥炭地盤の空間相関の範囲が一般的な無機質土地盤よりも狭いことを示した.また,クロスバリデーションの結果にもとづいて,予測値の精度におよぼす観測値と予測点の間隔の影響について議論している.2つのサイトにおける調査データのあてはめの結果,泥炭地盤の2次元含水比分布がガウス過程回帰によって推定可能であることが示されている.

  • 早見 俊紀, 木村 拓憲, 西牟田 裕介, 山脇 正嗣
    2023 年 4 巻 3 号 p. 119-124
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,ナンバープレート情報の読取り調査において,少子高齢化に伴う人員不足や調査に多くの時間を要することから,AI(人工知能)技術を活用した調査の効率化・省力化が進んでいる.近頃急速に進化しているAI技術により,高精度の文字認識を可能としている.しかし,その精度は撮影環境やカメラ性能に大きく依存しており,取得画像の解像度が低い場合に精度が著しく低下する課題がある.そこで本研究では,AI技術の一種であり画像の高解像度化を可能にするSRGANを用いて,低解像度のナンバープレートを高解像度化する手法を検討し,文字認識精度の向上を図った.その結果,精度向上に本研究で開発した手法が有効な技術となり得る可能性を示した.

  • 松岡 弘大, 常本 瑞樹, 川﨑 恭平, 田中 博文
    2023 年 4 巻 3 号 p. 125-134
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    鉄道設備の維持管理の効率化を目的とし,分野ごとに取得してきた検査データの横断的活用が求められるが,その実証事例は多くない.本研究では,高速鉄道における電車線路設備の異常と橋りょうの共振の相関に着目したうえで,軌道変位を用いた共振橋りょうの抽出法を活用し,車上計測された軌道変位から共振橋りょうを介して電車線路設備の要注意箇所を抽出することを試みた.実路線での検証の結果,過去の電車線路設備の異常記録箇所17箇所のうち,13箇所が車上計測により共振橋りょうとして抽出されるなど,地上からの検査に先だった1次スクリーニングとして有効であることを実践的に示した.

  • 西牟田 裕介, 田頭 直樹, 平松 佑一, 山脇 正嗣, 山根 立行, 神島 涼佑, 下峠 康宏
    2023 年 4 巻 3 号 p. 135-141
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    国土交通省が管理する橋梁は5年に1度の近接目視による点検が義務づけられており,現場で撮影した写真を基に,技術者が膨大な時間をかけて要素ごとの損傷程度を判定している.本作業にAI(人工知能)を活用し,損傷画像から損傷程度を推定することができれば,直轄業務における橋梁定期点検調書の作成作業の効率化・高度化が可能となる.そこで本研究では,AI技術の一種であり,高度な画像解析能力を持つ深層学習を活用し,直轄橋梁のコンクリート床版の剥離・鉄筋露出,および鋼主桁の亀裂の点検画像から,損傷程度を判定するモデルを開発した.その結果,従来は困難であった,橋梁定期点検要領の損傷程度区分に対応した高精度分類が可能となった.

  • 熊谷 宗一郎, 片山 直道, 全 邦釘
    2023 年 4 巻 3 号 p. 142-148
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    橋梁の診断において過去の損傷事例を参考にすることは重要であるが,その手法については未だ確立されておらず,撮影した損傷画像をキーとして過去の類似した損傷画像をデータベースから検索するシステムが現在求められている.そこで本研究では,LSTMを組み込んだネットワークにより,撮影画像から損傷特徴を意味的に抽出するDeep Learningモデルを構築し,実際の橋梁損傷画像を用いて学習を行った上で類似画像検索を行った.その結果,LSTMによる意味的特徴の抽出を行うことで既往の類似画像検索手法と比較して精度が大幅に高くなり,より橋梁の診断に役立つ類似画像検索を行うことが可能となることが分かった.

  • 新間 友祐, 中津井 邦喜, 中村 秀明, 麻生 稔彦, 蓮池 里菜, 田原 命
    2023 年 4 巻 3 号 p. 149-157
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    橋梁の定期点検時における損傷程度の評価は,橋梁の状態を示す最も基礎的なデータであり,維持・補修計画の検討等に利用されるため,正確かつ客観的なものにする必要がある.しかし,損傷程度の評価の中には,定性的な区分が存在し,点検者によって,ばらつきが発生しやすいという課題がある.そこで,本研究では,損傷程度の評価のばらつきを抑制することを目的として,橋梁点検の実態を踏まえたAIの評価アルゴリズムや教師データの作成,精度検証等の開発手法および山口県におけるAIの導入手法について検討した事例について報告する.

  • 田中 康男
    2023 年 4 巻 3 号 p. 158-162
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    養豚汚水処理用活性汚泥法処理施設の処理水中硝酸性窒素等濃度を低濃度に維持するため,放流槽にpHセンサとECセンサ,曝気槽に水温センサ,ORPセンサおよびDOセンサを設置しデータを収集した.この結果,まずpHとECにより硝酸性窒素等濃度のモニタリングが可能であることが確認された.次に,硝酸性窒素等モニタリング値と水温,ORP,DOのデータについて,時系列解析の成分分解によりトレンド系列を求め,さらに硝酸性窒素等についてはトレンド系列から48時間差の変化率系列を求めた.この変化率を目的変数とし,水温,ORPおよびDOを説明変数とする決定木解析を行った結果,硝酸性窒素等濃度の変化率がマイナスになるORP,DO値の範囲が把握できた.

  • 山脇 正嗣, 漆谷 晃樹, 中田 隆史, 法橋 広歩, 田中 優太, 吉井 貴弘, 村上 紘平
    2023 年 4 巻 3 号 p. 163-169
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    河川空間は,自然の豊かさや水文化・水辺景観を享受できる貴重なオープンスペースである.一方で,親しみのある空間であるがゆえに,ごみの不法投棄,河道内の車両走行などの迷惑・不法行為が多発し,現状復旧や注意喚起などの業務が河川管理上の負担となっている.そこで本研究では,河川管理の高度化・省力化を目的とし,AI技術の一種である深層学習(Deep Learning)を活用した迷惑・不法行為の検知技術を開発している.本稿では,淀川水系で迷惑・不法行為が多発している4か所を対象に,深層学習モデルの畳込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network)による迷惑・不法行為検知モデルと,それを実装したカメラ映像解析・警告発報システムによる実証実験を実施した.その結果,実際の行為を高精度に検知し,検知結果に基づく警告発報が行為の減少に貢献する可能性を示した.

  • 堀田 海陽, 中村 朋佳, 吉田 郁政, 大竹 雄, 高野 大樹
    2023 年 4 巻 3 号 p. 170-178
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    埋め立て地や軟弱地盤などにおける沈下量の将来予測は重要な課題であり,多くの手法が提案されている.本研究では,データ駆動型のアプローチのひとつであるDynamic Mode Decomposition with Control (DMDc)を用いた沈下量の将来予測の可能性調査を行った.一般に計測されたデータには欠損やノイズが含まれるため,まずこれらの補間やノイズの除去が必要である.ある領域の40地点の実測沈下データについてガウス過程回帰やHPフィルタによりノイズ除去と欠損の補間を行った.ノイズを多く含んだデータとあまり含まないデータを対象にDMDcによる沈下の予測を行ったところ,適切に低次元化を行った場合には両者にほとんど差が現れないことを示した.

  • 森藤 優一, 福井 智大, 黒田 一郎
    2023 年 4 巻 3 号 p. 179-188
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    鉄筋コンクリート供試体内部の鉄筋腐食を検知する打音による非破壊検査における半教師あり学習を導入した局所外れ値因子法(LOF)の適用性を確認することを目的として,電食により腐食させたRC供試体を対象とした実験的検討を行った.RC供試体のハンマ打撃時の打音スペクトルを入力とし,k-means法によるクラスタリングと組み合わせたLOFによる腐食判定を試みた.提案手法は,多数のラベルなしデータと僅少の陰性ラベル付きデータで構成されるデータ群をクラスタリングし,陰性のラベル付きデータがどのクラスタに属するかを手がかりとして陰性とみなせるラベルなしデータを抽出してLOFの教師データとして利用するものである.検討の結果,提案手法によって教師ありLOFと概ね同値の判定結果が得られ,鉄筋腐食判定への適用性が確認された.

  • 内藤 昌平, 土屋 美恵, 友澤 弘充, 田口 仁
    2023 年 4 巻 3 号 p. 189-204
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    地震や台風の発災直後に撮影された高解像度光学衛星画像を用いて,インスタンスセグメンテーション手法であるMask R-CNNにより画像内の建物を自動抽出し,建物被害を無被害,損傷,倒壊,およびブルーシート被覆有無に自動分類するモデルを開発した.結果,建物抽出精度(IoU)については約35%,ピクセル毎の建物被害分類精度(F値)については約52%となり,建物抽出と被害分類を同時に実施可能なモデルとして一定の性能をもつことを確認した.また,3種の高解像度衛星画像を使用してモデルを構築したところ,IoUで約39%,F値については無被害が約92%,損傷が約69%,倒壊が約56%,被覆有が約85%であり,モデルの汎用性が一定程度あり,被害の早期把握に利用可能であることを確認した.

  • 中村 朋佳, 堀田 海陽, 吉田 郁政, 大竹 雄
    2023 年 4 巻 3 号 p. 205-214
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    限界状態を超過する確率の効率的な計算法としてEchard et al.(2011)によって代理モデルとMonte Carlo Simulation (MCS)を組み合わせたAK-MCSが提案されている.この手法の適用や改良に関する非常に多くの論文が発表されている.MCSにおいて小さな確率を算定する場合には非常に多くの粒子(サンプル)が必要になるため重要度サンプリングの導入を試みた.設計点を用いる重要度サンプリングは手順が煩雑になるため,設計点を用いない単純な方法を導入したところ,より少ない粒子数で確率計算が可能となったが,代理モデルが不安定になった.そこで,複数の確率場を用いたガウス過程回帰を導入したところ代理モデルを安定化することができた.2次元の簡易モデル,及び8次元の圧密沈下問題を対象に検討を行った.

  • 斎藤 嘉人, 宮川 璃空, 村井 匠, 小畑 悠, 板倉 健太, 佐藤 翼
    2023 年 4 巻 3 号 p. 215-222
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    大豆の種子選別は時間と労力を要す作業であり,一農家が利用できる安価で簡便な選別機が求められている.本研究では,カラー画像および紫外励起蛍光画像の2種類の画像の入力による大豆の欠陥判別を目的とした.大豆種子のカラー画像と励起波長365 nmの蛍光画像をそれぞれ撮影し,目視にて正常粒・しわ粒・裂皮粒・病虫害粒の4カテゴリにラベル付けを行った.カラー画像,蛍光画像,カラー・蛍光画像同時入力の3パターンの入力によりResNet-50でモデルを構築した結果,テスト精度はそれぞれ91.7%,88.2%,88.3%であった.また,カラー・蛍光画像同時入力モデルでは正常粒の適合率が最も高く,判断根拠を可視化した結果,病斑のない健全箇所が重視されていた.以上より,従来のカラー画像に蛍光画像を組み合わせた判別手法が有効である可能性が示唆された.

  • 渡邉 優宇人, 小川 直輝, 前田 圭介, 小川 貴弘, 長谷山 美紀
    2023 年 4 巻 3 号 p. 223-232
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,インフラ施設の点検過程で作成される点検記録に必要な所見の効率的な作成支援のため,Visual language modelを活用した所見の自動生成手法を提案する.変状画像から認識可能な事柄に加えて,技術者の判断や意見を含む文章である所見は点検記録の作成に不可欠であるが,その直接的な生成に対する議論は依然として少なく,所見の効率的な作成支援に向けた生成技術の実現が期待されている.そこで本稿では,近年,注目されている大規模言語モデルの応用研究である視覚と言語の双方を高精度に理解したテキスト出力を可能とするVisual language modelに対して,変状画像に対する類似画像検索に基づくFew-shot learningを導入することで,少数の変状画像および所見の組から効率的にその関係性を把握可能とする.本稿の最後では,実際の橋梁点検記録に含まれる変状画像から所見を生成する検証により,提案手法の有効性を確認する.

  • 原田 紹臣, 永井 雅章, 櫻井 崇光, 吉田 恭平, 石原 孝雄, 家戸 敬太郎
    2023 年 4 巻 3 号 p. 233-244
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    藍子の皿ねぶりとして知られている藻食魚類のアイゴは,美味として珍重されている未利用魚の一種である.一方,モクライ(藻食らい)としても知られており,磯枯れの原因の一つとして考えられている.本稿では,徳島県美波町における地域活性化及び沿岸域の磯焼け対策の一つとしてのアイゴを用いた地場商品の開発と,その際にChatGPTを実践的に活用して考察されたChatGPTの適用性等について報告している.なお,アイゴ料理の試食を通じた官能検査の結果,燻製,リゾット等が高評価であった.一方,被験者の属性によって,料理の嗜好が異なる傾向であることが分かった.また,一般的に課題であったアンケート調査における自由記述文(意見)の分析に対してChatGPTを活用したところ,妥当性のある分析結果を簡易に得られる可能性が示唆された.

  • 安江 崇志, 劉 ウェン, 丸山 喜久
    2023 年 4 巻 3 号 p. 245-253
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    現在,日本の水道では年間2万件を超える漏水・破損事故が発生している.上水道管の漏水は,地上に流れ出す地上漏水と,地上には流れ出さず地下で流れている地下漏水の2種類に大別できる.地上漏水は人目に触れることから発見しやすいものの,地下漏水は漏水の状況を直接目視で確認できないため,早期発見のための技術開発が求められている.そこで本研究では,現在普及が進んでいるスマートメータを活用した水道管路のモニタリングを想定し,管網端部の水圧情報を使用した漏水位置予測に関する検討を行った.漏水シナリオや機械学習手法の異なる6つのモデルを構築し,その予測精度を比較した.水圧変化率,水圧変化量,管種情報を説明変数とし,LightGBMに基づき構築した漏水予測モデルが最も良好な結果を示した.

  • 津田 悠人, 吉田 郁政, 大竹 雄
    2023 年 4 巻 3 号 p. 254-264
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    基盤面標高データは様々な社会基盤施設の設計,施工において重要な基礎的な情報である.基盤面標高は地表面標高と相関を有している場合があり,この関係性に注目した基盤面の空間分布推定手法に関する研究はいくつか報告されている.本研究ではボーリング情報のみを用いる方法,地表面標高との相関を考慮する方法,地表面標高からの平均深さを考慮する方法の3つについて,模擬データ及び実測データを対象に推定精度やそれぞれの特徴について比較,検討した.各手法による山岳部や平野部における基盤面標高の推定精度について示し,地表面標高を活用することで山岳部や斜面下周辺でより正確な基盤面標高の空間分布推定が可能であることを示した.

  • 斎藤 隆泰, 木本 和志
    2023 年 4 巻 3 号 p. 265-273
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    非破壊評価の分野では,構造・材料中の欠陥を推定するための逆解析に関する研究が古くから行われている.本論文では,面外波動問題に対する著者らが提案した畳込みニューラルネットワークを用いた逆解析手法を,縦波と横波両者が連成して生じる面内の弾性波動問題へと拡張する.まず,演算子積分時間領域境界要素法を用いて,欠陥からの散乱波をシミュレートする.その際,多点計測技術として発展してきたリニアアレイ探傷法への応用を考え,複数の受信点での欠陥からの波形を再現する.得られた多数の波形群を画像化し,畳込みニューラルネットワークへ応用し易いようにした後,欠陥の位置を推定するような深層学習モデルを作成する.最終的に,作成した深層学習モデルに未知の欠陥による波形データを与えることで,深層学習モデルが正しく欠陥の位置等を推定できることを示す.

  • 青島 亘佐, 宮内 芳維
    2023 年 4 巻 3 号 p. 274-284
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    今後の生産年齢人口の減少が進行する社会情勢の中で,社会インフラの維持管理においては,構造物点検の省力化および効率化を図ることが喫緊の課題の一つとなっている.近年,その課題の対応策の一つとしてAIの活用が注目を集めており,画像データ,波形データ等を中心に多くの研究が進められている.しかし,自然言語データに関する研究はまだ少ないのが現状である.そこで,本稿では,昨今の対話型AIの普及を踏まえて,大規模言語モデルを活用した橋梁点検調書作成の省力化について検討を行った.検討の結果,大規模言語モデルの活用が,橋梁点検調書作成の省力化に有効であることを確認した.

  • 箕浦 慎太郎, 渡辺 勉
    2023 年 4 巻 3 号 p. 285-292
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    PCまくらぎは鉄道の高速化や安全性の向上に欠かせない軌道の重要な構成要素である.近年では,アルカリシリカ反応等に起因した長手方向にひび割れが入ったPCまくらぎが散見され,それらの維持管理の効率化が課題になっている.そこで本研究では,保守用車に搭載したカメラで撮影したPCまくらぎ上面画像から,ひび割れの発生位置やひび割れ長さを推定する手法として,深層学習を活用した検知手法を提案し,その適用可能性を検討した.その結果,本手法はバラストや締結装置等の誤検知を抑制してPCまくらぎ上面のひび割れの位置及び長さを推定可能であることを確認した.また,本手法によりひび割れ発生状況のスクリーニングを行うことで,ひび割れの多く発生している線区の特定や,発生位置の傾向の把握に適用できることを示した.

  • 鎮野 智宏, 尾関 智子, 新保 弘, 溝渕 利明, 野嶋 潤一郎
    2023 年 4 巻 3 号 p. 293-300
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    コンクリート構造物の非破壊検査手法の一つである打音検査に対して,信号処理による打音特徴の定量化や,機械学習による判別など,自動化に関する研究がなされている.自動化の際には,あらかじめ用意したラベル付きデータをもとに機械学習を行っておき,現地では学習済みのモデルを用いて判別のみを行う必要がある.しかし,一般にデータの採取地が異なると判別精度が低下する.本研究では,打音の時間周波数特性をグラフ化した画像を畳み込みニューラルネットワーク(CNN)で判別する手法に対し,条件付き敵対的生成ネットワーク(CGAN)とSpecAugmentによるデータ拡張を適用し,異なる採取地のテストデータに対する汎化性能の向上を試み,SpecAugmentによるデータ拡張が汎化性能の向上に有効であることを示す.

  • 日高 菜緒
    2023 年 4 巻 3 号 p. 301-309
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    近年の土木業界での生産人口の減少や膨大な既設土木構造物の急速な老朽化の課題を受け,国土交通省から生産性向上を目的に建設DX(Digital Transformation)やi-Constrution,CIM(Construction Information Modeling)が提唱された.従来の紙媒体の2次元図面や台帳での管理はデータの散逸や熟練した技術者でなければ理解が容易でないことから,対象物の形状情報を3次元データで保存できる技術が求められる.昨今,計測技術の発展や大規模データの公開から対象物の3次元形状を効率的に取得できる点群データが注目され始めているが,計測後の点群データを加工する技術の実現については未だ課題が多い.そこで,本論では点群データの計測手法や処理アルゴリズムについてまとめ,それらが近年の土木分野で活用されている事例でどのように適用されているかの動向について整理し,今後の課題と展望について述べる.

  • 石橋 寛樹, 石神 晴久, 濱野 倫弥, 岩城 一郎
    2023 年 4 巻 3 号 p. 310-319
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    量子コンピュータの研究開発が飛躍的に進んでいる.現時点では,実用化に向けて多くの課題が残されているものの,種々の分野で量子技術の適用可能性が盛んに議論されている.一方で,土木分野に主軸を置いた研究や取り組みは依然として少なく,目指すべき社会的イノベーションや潜在している課題へのブレイクスルーの達成に向けて,現時点から土木分野における量子コンピュータのユースケースを検討することの意義は大きい.本稿では,量子コンピュータの活用による将来的な土木技術の進化・発展の一助になることを目的に,量子コンピュータに関する研究開発動向および原理・理論を整理するとともに,土木分野において考えられるユースケースを提示する.

  • 丸山 幸希, 荻野 俊寛, 星野 克之, 宮越 信
    2023 年 4 巻 3 号 p. 320-327
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    高速道路のり面の定期点検から得られる変状箇所数データおよび変状の程度を示す判定区分データを用いて,路線ごとののり面健全度を推定する2つの時系列モデルを状態空間モデルによって構築した.のり面の健全度は変状発生率,発生変状箇所数,および変状判定区分出現確率の3つの潜在的な状態量として定義された.これらのモデルに対し,秋田県内の高速道路3路線の点検データをあてはめ,マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いて健全度を推定した.推定結果にもとづいて,これらの潜在的な状態量の経時変化について議論している.

  • 相原 航, 荻野 俊寛, 藤井 登, 栗山 大助, 荻田 茂
    2023 年 4 巻 3 号 p. 328-336
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,タンクモデルを基本とした状態空間モデルを構築し,秋田県阿仁合小渕地区地すべり地の動態観測データ2018年から2022年5月までの4年と5ヶ月分の動態観測データをあてはめて,地すべり地からの流量と,代表的な5つのボアホールにおける孔内水位変動の推定を行なった.マルコフ連鎖モンテカルロ法によるサンプリングから得られた推定結果はおおむね孔内水位変動,流量変動の挙動を表現するものであった.また,得られたタンクの貯留量から,地すべり地の帯水層に存在する地下水量の変化を推定した.

  • 新保 弘, 尾関 智子, 溝渕 利明, 野嶋 潤一郎
    2023 年 4 巻 3 号 p. 337-343
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    調査点検の生産性向上に向けた打音検査の自動化や機械化には,まず打音評価の定量化が必要である.短時間フーリエ変換等により時間-周波数領域で画像化した打音データをCNN(Convolutional Neural Network)により教師あり学習させることで,健全部と欠陥部の打音を精度よく分類することは可能であるが,部材の特性や環境が異なると分類性能が低下する.ここでは画像化した打音について学習したCNNを特徴抽出器としてのみ利用し,テストサイトの健全打音データの特徴ベクトルから同サイトのテスト打音の特徴ベクトルをマハラノビス距離により評価する方法を提案・検証した.その結果,提案手法により条件の異なるサイトでも健全データからのマハラノビス距離により健全度を定量的に評価できる可能性を示した.

  • 宇野 昌利, 仲条 仁, 今井 龍一
    2023 年 4 巻 3 号 p. 344-352
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国の建設工事の施工品質は,作業員が有する経験知や技能に支えられている面が多く存在し,コンクリート工事,特にコンクリートの打込み及びバイブレーターによる締固め作業もその例外ではないため,本研究ではコンクリート工事の締固め作業員の動画像を撮影し,人工知能技術を活用した画像処理にて締固め箇所を定量的にデータ化する手法を開発し,実証実験を通じて従来の作業員の経験による個人のノウハウを利用した定性的な管理から定量的な管理を実現しようとしている.本論文では,実現場に本手法を適用するために解決が必要なバイブレーターのカラーリングや電波不通エリアでの適用等の課題に対して,本手法のアルゴリズムの再設計・高度化を図り,実現場に適用した結果,実用に供することが可能であることを明らかにした.

  • 中崎 愛子, 西内 裕晶, 濵田 愛
    2023 年 4 巻 3 号 p. 353-360
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,自動車の急減速挙動において生じる前後加速度に着目し,安全性の評価指標としてヒヤリハット率を定義した上で,区画道路の構成パターンが走行挙動に与える影響を明らかにした.結果として,リンク長は長い方が安全性を高めること,また,区画道路の構成パターンは基本的に危険性を孕むが,自動車のトリップの特徴や地域の区画道路の構成パターンの混合割合によって,その危険性の影響は左右されることが分かった.また,クルドサック型とループ型はその特殊な形状により通過交通を排除し,そのリンクに接続する家の住民しか基本的に通行しないため,ヒヤリハット率増加を抑制する効果を発揮する比較的安全性が高い構成パターンであることを定量的に示唆した.

  • 木村 延明, 皆川 裕樹, 福重 雄大, 吉永 育生, 馬場 大地
    2023 年 4 巻 3 号 p. 361-368
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,時間予測に有用なLSTMに空間情報を取り込んだConvolutional LSTMを導入した深層ニューラルネットワークと転移学習を用いて,データ量が少ない対象流域でも高精度な河川洪水予測が可能な新モデルを構築する.転移学習では,大量のデータを有するソース流域で,空間情報のパラメータであるシーケンス長(Ns)を調整した事前学習モデルを生成し,それを対象流域に転移することで,期間最大規模等の洪水事象について,予測精度の向上を試みた.まず,モデルの予測精度の検証をソース流域で行い,CNNベースの従来型モデルと比較して,Ns=2で概ね予測精度の改善が見られた.次に,転移学習を用いた対象流域での予測精度の検証では,再学習回数=50回で精度誤差が安定し,期間最大規模の洪水に対して,転移学習あり・なしの従来型モデルと比較して,Ns=2で予測結果の精度向上が見られた.

  • 大平 尚輝, 郷右近 英臣
    2023 年 4 巻 3 号 p. 369-376
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,土砂災害時の被害把握にSAR(合成開口レーダ)が活用される機会が増えてきた.既往研究では,SAR画像に対し,様々な種類の画像処理や深層学習を応用することで,土砂災害域の検出・予測が高い精度で実現されてきた.しかしSARによる観測データは,衛星の方向や位置の条件や観測対象物の条件など様々な条件に応じて異なる様相を呈すものであり,一般化や高精度化を目指す場合,SAR画像の解析に加え,それらの条件を組み合わせた分析方法についても検討を進めていく必要がある.本研究では,2018年北海道胆振東部地震を対象とし,被災後のSAR画像と標高,傾斜角度,傾斜方向といった地形データに基づき,ランダムフォレストを応用することで,土砂災害域を予測するモデルを構築した.さらに,これらの地形データの値の変化に伴い,土砂災害予測の精度が変化することを,量的に示した.

  • 西内 裕晶, 安並 真央
    2023 年 4 巻 3 号 p. 377-384
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,地方部で公共交通利用者は減少傾向にあり,公共交通事業者や行政による利用促進策が検討されている.例えば高知市では,令和4年度に路面電車と路線バスの無料デーを実施した.しかしながら,当日の動向特性については,データが不十分なこともあり,詳細な特徴を把握できていない.本研究では,携帯電話の基地局データを基にしたモバイル空間統計を活用した利用促進策導入時の公共交通利用者数の変化の把握を試みた.具体的には,モバイル空間統計から移動量を簡易的に抽出し,抽出された移動量とICカードデータを比較して公共交通利用者の動向把握の可能性を検討した.その結果,人の集まりやすいメッシュにおいてはICカードデータと相関性の高い移動量を抽出できる可能性を示した.また,無料デーにおける移動量の空間的な動向特性も考察した.

  • 吉田 龍人, 大久保 順一, 藤井 純一郎, 高森 秀司, 天方 匡純
    2023 年 4 巻 3 号 p. 385-392
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    動画を対象とする人流解析は狭域の解析に適した手法である.これに対してPerson Re-identificationが実現すると解析範囲を広域化できるため,手法の実用性がより一層向上する.Re-identificationではDNNモデルの出力する特徴ベクトルによって同一人物を照合するのが一般的だが,入力画像の変化が画像間の類似度に与える影響は十分に解明されていない.これを受けて,本研究では同一人物を規定の条件下で撮影し,同一人物照合に影響する要素を評価するためのデータセットを作成する.さらに本データセットをRe-identificationモデルで推論し,画像間の類似度を算出する.この結果に基づき入力画像の変化が類似度に与える影響を評価し,解析に用いたモデルの特性を明らかにする.

  • 櫻井 慶悟, 前田 圭介, 藤後 廉, 小川 貴弘, 長谷山 美紀
    2023 年 4 巻 3 号 p. 393-401
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では,若手技術者の新規変状の発見率の向上を目的として,一人称視点映像からの変状検出手法を提案する.提案手法では,地下鉄トンネルを点検する若手技術者の一人称視点映像のフレームから変状を検出可能する深層学習モデルを構築し,さらに変状である可能性の高い箇所を強調したattention mapを出力する機構を導入する.提案手法は,高精度な変状検出と変状箇所の検出に特化したattention mapの生成を実現する.Attention mapを導入することにより,変状である可能性の高い箇所を技術者に提示可能とする.実際の点検技術者より取得された一人称視点映像を用いた実験において,定量的・定性的な評価を行うことにより,提案手法の有効性を確認する.

  • 諸戸 祐哉, 前田 圭介, 藤後 廉, 小川 貴弘, 長谷山 美紀
    2023 年 4 巻 3 号 p. 402-413
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では,冬期の積雪による路面状態の悪化に対する検知・予測を目的として,時系列データを用いたMulti-modal Transformerを提案する.本研究では,定点カメラより撮影された画像および路面状況に関連するテキストデータという複数のモダリティを入力としたマルチモーダル解析を行う.ここで,複数のモダリティを統合する際,Cross attentionに基づく特徴統合によりモダリティ間の相互補完による特徴補正を行うことで,統合後の特徴量の表現能力向上を実現する.また,複数時刻分の入力データを対象とした時系列処理を導入することで,路面状態の時系列変化を考慮可能とする.また,入力データに対応する路面状態を教師データとした場合および入力データから数時間後の路面状態を教師データとした場合の実験を行うことで,検知・予測の両タスクにおける提案手法の有効性を確認する.

  • 三好 崇夫, 吉田 大唯, 土田 隼之
    2023 年 4 巻 3 号 p. 414-424
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    全国の河川に存在するとされる管理者不明橋では,その不具合により利用者を巻き込む事故が発生しており,老朽化や災害による損壊も懸念されている.河川の総延長は膨大であるため,人員,予算面から管理者不明橋の実態把握に難色を示す自治体もある.近年,高解像度の航空写真や地理空間情報の入手が容易となっていることから,それらを用いて深層学習により直接的に橋梁を検出することや,道路や河川を検出し,互いの交差部や河川を分断する地物として橋梁位置を推定し,その位置情報をデータベースと照合することによって,管理者不明橋を自動的に特定することが考えられる.本研究ではそれに向けて,航空写真や地理空間情報,それらの重ね合わせ画像から河川や道路,橋梁の深層学習による検出精度について検討した.

  • 浦川 文寛, 渡辺 勉
    2023 年 4 巻 3 号 p. 425-434
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    軌道座屈防止のためには高温時(夏季の昼間)だけでなく,低温時(冬季の夜間)のレール温度予測が重要である.地物の発する放射熱がレール温度に及ぼす影響を明確化し,レール温度管理に反映させるため,GIS数値標高データと気象条件から放射熱を詳細にモデル化し,夜間のレール温度分布をおおよそ1 m間隔で解析的に予測する手法を新たに提案した.提案手法の精度検証のため,実軌道にてレール温度とレールが受ける放射熱の線路長手方向の分布を測定した.その結果,建物が近接する測点では放射熱が大きく,他測点よりも最低レール温度が約2 °C高くなる等,建物の配置,放射熱,およびレール温度の間に明確な相関性が認められた.また,提案手法により,実軌道における夜間のレール温度分布を精度良く再現できることを確認した.

  • 辻井 純平, 合田 哲朗, 中野 雅章
    2023 年 4 巻 3 号 p. 442-450
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    土木構造物の維持管理において3次元モデルの活用が進む中,点群に対する数値解析技術やモデリング技術の開発が求められている.本研究では,土木構造物の点群からモデリング等に必要な情報の推定を行う手法として,部材等の局所形状を特徴量として畳み込む深層学習手法を提案した.提案手法では計算量の課題を有する点群の畳み込み計算に対してモデルチューニングを施し,土木構造物の高解像度の点群が入力可能であることを示した.さらに,ベンチマークとして橋梁の点群に対する橋軸方向の推定を行い,畳み込み手法の導入により推定精度が向上する結果が得られた.この結果から,提案手法のように点群の局所形状から得られた特徴量を利用することで,土木構造物の部材形状等も考慮した高精度な推定が可能となることを示した.

  • 野中 崇志, 宮﨑 拓海, 朝香 智仁, 杉村 俊郎, 岩下 圭之
    2023 年 4 巻 3 号 p. 451-457
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/11/14
    ジャーナル オープンアクセス

    日本では多くの自然災害が発生しており,2011年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震では,広域に渡り多くの建物が流失,全壊などの被害を受けた.災害後の復旧活動を早急に行うために,建物の被害状況の把握が必要である.本研究では,広範囲の地球表面の観測が可能な衛星リモートセンシングと,データより自ら学習し,特徴を抽出することができる深層学習を用いた建物の被害状況の分類を行う.本解析では,東北地方太平洋沖地震後の石巻市の高解像度光学衛星画像を使用し,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)により建物の被害状況を「流出」,「被害あり」,「被害なし」に分類し,参照データを用いて定量的な評価を行う.そして,教師データの数,処理パラメータである回転角度,タイルサイズ及びCNNの階層に着目し,これらの分類結果に与える影響について定量的な知見を得ることを目的とした.その結果,回転角度とCNNの階層を組み合わせることで,教師数を増やすのと同等の効果があることを明らかにした.

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