2024 年 5 巻 3 号 p. 42-52
地震などの自然災害に対するインフラ構造物の健全性を定量的かつ網羅的に評価するためには,多くのセンサや計測機による計測が必要となり,そのためのコストや手間が課題となる.そこで本研究では,データ同化の一種であるSISを用いて,限られた計測値から構造全体の損傷や性能を評価するための非線形地震応答解析モデルの状態推定手法を提案する.地震が作用する仮想の橋梁を例とした数値実験の結果,橋桁における1地点の加速度応答から塑性化によって変化した後の橋脚基部の剛性値を平均誤差21.4%で推定できることを示した.また,剛性値の推定に対して加速度応答の方向や,推定地点と計測地点の関係が推定精度に影響を与えることを確認した.さらに,計測計画の立案方法,および地震時に橋梁の健全性評価における同手法の活用方法を提案する.