AI・データサイエンス論文集
Online ISSN : 2435-9262
5 巻, 3 号
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  • 朝香 智仁, 野中 崇志
    2024 年5 巻3 号 p. 1-9
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    道路土工構造物点検要領によると,変状の点検は近接目視が基本となっているが,新たな点検技術の開発動向の情報も収集し,点検要領の観点から合理化できる手法と判断される場合には採用してもよいことになっている.本研究では,異常検出器の一つの手法であるPaDiM(Patch Distribution Modeling Framework for Anomaly Detection)による道路法面のひび割れ検出において,UAVの画像を教師データとして与える諸条件とその検出結果との関係性について定量的に分析した.PaDiMにUAVの画像を与えた結果,ひび割れの検出ができることを確認し,さらにUAVによる道路法面の観測方法に関する提言を見出すことができた.

  • 板倉 健太, 林 拓哉, 上脇 優人, 全 邦釘
    2024 年5 巻3 号 p. 10-21
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,地上型レーザースキャナから得た点群データと画像データを組み合わせてセンサーフュージョンを実施し,画像でのセグメンテーション結果を点群にマッピングした.DeepLabv3+を利用して,画像のセマンティックセグメンテーションを行った.Segment Anything Modelを利用して地覆と舗装面との接続線の情報を更新した後に,カメラの外部パラメータや内部パラメータを利用して,セグメンテーション情報を点群に格納した.この情報を利用することで,有効幅員などの橋梁の構造情報を計測できるようになった.画像データの詳細な情報と点群データの3次元情報を活用することで,データの詳細性と構造情報を両立した解析が可能となり,かつ大容量の点群データも効率良く処理することができた.

  • 臼井 真人, 篠崎 公昭
    2024 年5 巻3 号 p. 22-32
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,経済状況をリアルタイムに把握するために,従来の伝統的な統計データに加えて,非伝統的なオルタナティブデータを活用する動きが広がっている.本稿では,建築看板に掲載されている予定工期や延床面積等の情報を活用して,我が国の民間建築の活動状況を推計する手法を開発した.2016年から2023年にかけて民間建築活動指数を試算したところ,経済産業省がかつて作成・公表していた建設業活動指数に類似した動きを示すことを確認した.この結果は,①同指数は季節性を概ね的確に捉えているほか,COVID-19の流行局面及び足元における建設活動の下振れを描写しており,活動実体の月次指標として有用であること,②建築看板が建築確認申請前に設置されることに鑑みれば,同指数によって民間建築活動状況がリアルタイムに把握可能となることを示唆している.

  • 横澤 直人, 綾部 孝之, 藪 雅行, 渡邉 一弘
    2024 年5 巻3 号 p. 33-41
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,舗装の構造評価が重要になっており,走行しながらたわみ量を測定できるMWDの開発が進められている.MWDを使用することで短時間で路線全体のたわみデータを取得できるが,これらの膨大なデータを効率的に処理する手法は開発されていない.一方,機械学習を用いることで,MWDから取得されたデータからネットワークレベルの構造評価を効率的に実現できると考えられる.本研究では,Isolation Forest法を用いて,たわみ量が比較的大きく,構造的に不健全な区間を抽出する手法を提案した.検証の結果,既存手法と同水準の抽出精度でより効率的に構造評価ができることが確認された.MWDと提案手法を用いることで,より効率的な舗装の構造評価が可能になることが期待される.

  • 西澤 勇祐, 三浦 弘慈, デヴィン グナワン, 五十嵐 乃愛, 曽我部 直樹, 岩前 伸幸, 玉野 慶吾, 中村 和幸
    2024 年5 巻3 号 p. 42-52
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    地震などの自然災害に対するインフラ構造物の健全性を定量的かつ網羅的に評価するためには,多くのセンサや計測機による計測が必要となり,そのためのコストや手間が課題となる.そこで本研究では,データ同化の一種であるSISを用いて,限られた計測値から構造全体の損傷や性能を評価するための非線形地震応答解析モデルの状態推定手法を提案する.地震が作用する仮想の橋梁を例とした数値実験の結果,橋桁における1地点の加速度応答から塑性化によって変化した後の橋脚基部の剛性値を平均誤差21.4%で推定できることを示した.また,剛性値の推定に対して加速度応答の方向や,推定地点と計測地点の関係が推定精度に影響を与えることを確認した.さらに,計測計画の立案方法,および地震時に橋梁の健全性評価における同手法の活用方法を提案する.

  • 北岡 貴文, 安田 花鈴, 小林 泰三
    2024 年5 巻3 号 p. 53-60
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    地盤データベースの利活用において,人工知能を適用することは得策である.人工知能をどのように学習させていくかを探求することも重要である.一般的な方法としては,データ量を増やすことである.しかしながら,目的変数として推定したいデータを収集することは容易ではない.一方,テキスト情報を活用するアイデアは,データ量を増大させることに寄与する.テキストの活用には「one-hot 表現」と「分散表現」がある.そこで本論文では,地盤データベースから説明変数として,深度,間隙率,含水比は生データとし,土質名は「分散表現」を活用し,試験条件(UU試験,CU試験,C̅U̅試験,CD 試験)には「one-hot 表現」を適用し,目的変数となる三軸圧縮試験による内部摩擦角の推定を試みた.その結果,0.953の相関係数を示した.

  • 新間 友祐, 中津井 邦喜, 中村 秀明, 麻生 稔彦, 蓮池 里菜, 岡本 萌
    2024 年5 巻3 号 p. 61-70
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    橋梁の定期点検では,構造上の部位区分あるいは部位毎,損傷種類毎に,対策区分の判定を行う.対策区分の判定は,各損傷に対して次回定期点検までの維持・補修等の計画を検討するうえで特に参考とされる最も基礎的な評価であるため,統一的な評価基準で行われることが重要である.しかし,対策区分は定性的なものとなっており,対策区分判定要領においても,各損傷の特徴や留意点等のみが示されているため,橋梁診断員によって,判定のばらつきが発生しやすい.そこで,本稿では,橋梁診断員の減少が予想される地方自治体が対策区分の判定を適切に行うための支援を目的として,橋長10m以下の溝橋に発生するひびわれおよび剥離・鉄筋露出を対象に,対策区分の判定のアルゴリズムを提案し,精度検証した結果について報告する.

  • 鏡堂 隼平, 北岡 貴文
    2024 年5 巻3 号 p. 71-76
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,技術伝承ツールにAIが期待されている.山岳分野の岩石判定では,Convolutional Neural Networkによる興味深い成果が多く報告されている.岩石をAIに鑑定させる研究なども進められている.一方で,日本ではベンダー依存型であるため,AI技術者に依存するケースが目立ち,AIのアルゴリズムのみならず,AIの解析処理もブラックボックス化しているのが現状である.例えば,データ拡張による計算コストの削減などの議論は少ない.そこで本研究では,学習用データの画像枚数とAI性能の関係を調べるため,学習用データの画像枚数が異なる8パターンのCNNモデルを作成し,比較検証を行った.その結果,1岩種あたり約500枚の画像を使用した場合に,最も高い性能を発揮することが分かった.また,データ拡張による画像生成が過剰適応を引き起こす可能性のあることが示唆された.

  • 斎藤 嘉人, Tianqi Gao, 輿石 裕之, 森 欣弥
    2024 年5 巻3 号 p. 77-83
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    充填豆腐は衛生的で日持ちが長く,近年急速に流通量が拡大しているが,その検品には時間と労力を要し,製造ライン上で自動的かつ高精度に不良品を識別する技術が求められている.本研究では,カラー画像を入力とした充填豆腐の凝固品質判別を目的とした.偏光フィルタを搭載したイメージング装置を構築し,充填豆腐のフィルム面のカラー画像を実際の製造ライン上で撮影した.得られた画像に対しA,B,C級品のラベル付けを行い,8種類の事前学習済みネットワークで判別モデルを構築した.検証データに対する最高精度はEfficientNet-b4で95.84%であった.また,判断根拠を可視化した結果,豆腐表面の欠陥特徴を正しく捉えられていた.以上より,充填豆腐のフィルム面のカラー画像と深層学習により高精度に充填豆腐の凝固品質を判別できる可能性が示唆された.

  • 浦川 文寛, 渡辺 勉
    2024 年5 巻3 号 p. 84-94
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    鉄道用レールのふく進(長手方向変位)の詳細かつ定量的な予測は,軌道座屈に対する安全性の向上と管理コストの低減のために重要である.本稿では,線路の水平方向2次元の静的弾塑性 FEM 解析プログラムを開発するとともに,既往のレール温度予測モデルとの連成解析により,ふく進および軌道座屈の発生を解析的に予測する手法を提案した.既往の1次元解析モデルとの比較を行い,開発プログラムの妥当性を確認した.また,開発プログラムは,軌道座屈前の挙動および座屈発生温度 TAを,既往の座屈解析モデルと同程度の精度で解析できることが分かった.さらに,GIS線路データを用いて解析を行う上で,曲線部の角折れが問題となったため,角折れを指定半径 R の円弧で置き換え,さらに移動平均を行う平滑化手法を提案し,その有効性を確認した.

  • 野津 秀太, 河原 達哉, 大屋 誠
    2024 年5 巻3 号 p. 95-102
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    建設業界では,50年以上経過したインフラ構造物の増加に伴い,効率的かつ効果的な維持管理が求められている.従来の目視点検は技術的限界や人手不足の問題があり,新技術の導入が進められている.特に,AI技術を用いた損傷検出技術の開発や3次元データの活用が進められており,NeRFやCLIP,LERFといった技術が注目されている.本研究では,LERFを用いて2次元画像から3次元空間を復元し,特定の損傷を3次元場内で検出可能か検証した.その結果,復元した3次元場内での損傷検出は可能であったが,損傷検出の精度を向上させる必要があると確認された.また,CLIPに損傷を追加学習させることによって,3次元場内における損傷検出の精度を向上させることができた.

  • 河原 達哉, 大屋 誠
    2024 年5 巻3 号 p. 103-110
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    道路構造物を対象とした損傷診断は,損傷状態などの客観的な記録に加え,点検者の専門的な見解を取り入れた総合的な評価によって行われる.一方で,深層学習を用いた点検や維持管理の効率化に関する研究の多くは,客観的な記録を対象として実施されており,点検者の専門的な見解の活用による総合的な損傷診断を可能とするため,言語ベースな情報に対して,画像とテキストの関連性のモデル化により,深層学習による豊富な表現間の理解が求められる.本稿では,CLIPにより,xROADに記載される点検者所見および損傷画像から特徴量を抽出し,これらを統合した特徴ベクトルの学習によって,橋梁の損傷診断が可能か検討した.検討の結果,CLIPによる言語ベースな情報の活用によって,深層学習を用いたタスクに対する汎化性能の向上が示唆された.

  • 石川 和彦, 門 万寿男, 青木 聡, 前島 拓
    2024 年5 巻3 号 p. 111-119
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    公共インフラ施設の根幹を成す道路橋梁等の交通インフラは1960年代の高度成長期に集中的に整備され,建設後50年以上経過し老朽化が進行するとともに急速なモータリゼーションの発展に伴い老朽化と共に劣化が進行している.その量は年を追うごとに増加しており,老朽化インフラの効率的な維持管理が急務となっている.効率的な維持管理を行うためには構造物の劣化度を的確かつ迅速に評価する手法の開発が求められている.このため本研究では,主要な交通インフラ構造物である道路橋床板に着目して橋面上を走行する交通荷重による床版のひずみ波形に畳み込みニューラルネットワーク手法を適用することにより床板の劣化度の推論が可能なことを示した.

  • 服部 浩太朗, 大木 奎一, 杉山 剛史, 全 邦釘
    2024 年5 巻3 号 p. 120-131
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    高度経済成長期に建設された多くのインフラは老朽化しており,技術者不足と長時間労働が問題となっている.そのため,点検の効率化と自動化が求められている.橋梁の点検は現状,技術者の手作業に依存しており,非効率であると言える.そこで本研究では,点検範囲が広い長大橋を対象に,常設の点検作業車を用いて補剛桁下面を撮影し,画像診断技術を活用して腐食部の位置や面積を自動的に計測する手法を開発した.その結果を3DモデルであるBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)に反映させることで効率的な管理が可能となる.また実際の長大橋でこの手法を検証し,その有効性を確認した.

  • 桑机 友翔, 荻野 俊寛
    2024 年5 巻3 号 p. 132-141
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    ベンダーエレメント(BE)法は土のせん断弾性係数を求める手法として低コストかつ非破壊などの利点を持つ.そのため,BE法においてしばしば困難となるS波到達点決定のための手法が提案されてきたが,あらゆる土や試験条件に対して汎用的な手法はない.本報告では,汎用的かつ精度の高いS波到達点予測を目的として,周波数領域の高次元特徴量を用いた深層学習モデルを作成・検証した.数万通りの人工波形の4/5を用いてモデルを訓練した結果,残りの1/5に対しては検証精度の高いモデルが作成された.また,モデル検定のために用いた計173個の実験データに対する予測誤差は最良で11.88%となり,高次元特徴量の一定の有意性が示された.一方で,著者らの既往モデルより予測精度は低く,改めてその低次元特徴量の有用性が示された.

  • 古川 全太郎, 笠間 清伸, 竹田 梨夏
    2024 年5 巻3 号 p. 142-154
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    土砂災害警戒情報を発令する際に運用されている土砂災害警戒発生危険基準線 (CL) は,過去の斜面災害とその時の雨量情報を基に設定されている.CLを設定する際に地形・地質情報や植生・土地利用情報を考慮することで,警戒情報発令の精度を向上できる可能性がある.本論文では,CLの閾値となる60分間積算雨量及び土壌雨量指数と地形・地質・植生・土地利用情報の関係を調べるため,決定木を基にした機械学習アルゴリズムであるランダムフォレスト,XGBoost,LightGBMを用いて推定モデルを構築し,それぞれの推定精度を評価した.加えて,再帰的特徴量削減 (RFE) を行い,モデルの推定精度が向上する説明変数の種類を明らかにした.さらに,SHapley Additive exPlanations (SHAP) を用いて説明変数の大小が推定結果へ及ぼす影響の傾向と寄与度 (シャープレイ値) を求め,モデルの推定根拠について考察した.

  • 片山 直道, 全 邦釘
    2024 年5 巻3 号 p. 155-164
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス
    J-STAGE Data

    地震発生後は,早期の道路啓開に向けて耐荷性・走行性から交通規制の要否診断及び応急対策を行う必要がある.橋梁の診断においては,過去の地震被害及び復旧状況を参考に実施しているが,診断結果のばらつきなどが課題となっている.また,被災時の技術者不足や技術者の負担軽減などの観点から,遠隔診断が可能な緊急点検手法の構築が急務である.そこで,本研究では新たな緊急点検手法として,デジタルツインを用いた遠隔診断システムについて検証を行ない,デジタルツインを用いた緊急点検による効果と実践するための解決すべき課題を整理した.

  • 松岡 弘大, 保木本 晟也, 大貫 和雄, 相原 康浩
    2024 年5 巻3 号 p. 165-174
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    跨座式モノレールにおいて軌道桁の境界に敷設される伸縮継目部は,列車通過に伴う衝撃荷重の作用により受座部コンクリートにひび割れや剥離が生じる場合がある.これに対して技術者による打音検査が年4回実施されており,膨大な人工を要している.本研究では伸縮継目部の打音検査における変状判定の自動化を目的とし,多点加振と相反定理による伸縮継目部のモード特性の同定を行うとともに,変状がモード特性に及ぼす影響を調査した.その結果,受座部に変状を有する伸縮継目部では 1100Hz付近で爪部のモード振幅が増大することを明らかにした.また,この特徴を利用し,伸縮継目板の爪部4点の加振試験から変状有無と変状範囲を判別する手法を提案した.

  • 佐藤 駿成, 西尾 真由子
    2024 年5 巻3 号 p. 175-185
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    近年UAVを用いて橋梁点検を効率化する研究や取組みが進められているが,時間や労力などのコスト低減だけでなく近接目視と同等の損傷認識性能を保証することも重要である.本研究では,鋼鈑桁橋の部材点検を対象に飛行経路最適化を行い,仮想空間に作成した橋梁3Dモデルでの飛行シミュレーションで点検部材への視野を検証した.点検要領に基づいて損傷が起こりやすい部位を特定し観測点と視点重要度を決定し,重要な観測点での視野を優先的に獲得する経路最適化問題を複数の最適化法で検証した.その結果,視点重要度を考慮してもアントコロニー最適化(ACO)法では短い飛行経路を導出することがわかった.視点重要度を考慮すると経路長は長くなるが,飛行シミュレーションの結果から橋梁点検で求められる近接目視と同様の画角が得られることを確認できた.

  • 毛束 隆太, 武藤 裕花, 岡﨑 淳史, 小槻 峻司
    2024 年5 巻3 号 p. 186-193
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    気候変動に伴い激甚化する豪雨災害に備えて,防災事業への適切な投資が重要となる.本研究では,防災設備の配備状況と災害被害を考慮した数理モデルに対して強化学習を適用する.100年分の将来降水量予測を基に確率的に算出される時系列の被害コストと,防災事業への投資コストの合計を最小化するような投資策を強化学習により探索した.学習結果を基にしたシミュレーションにより,強化学習による投資策は,事後対処的な投資策に比べて,短期的な投資コストを許容しつつも,長期的な総コストを4割程度削減できる可能性が示された.また強化学習による投資策では,災害リスクの上昇に先んじて防災事業へ投資を行い,事前に将来的な災害リスクの増加に備えた防災設備への投資を行う傾向がある事が示された.

  • 福嶋 克武, 麓 博史, 大槻 順朗, 林田 寿文, 河野 誉仁, 中村 圭吾
    2024 年5 巻3 号 p. 194-202
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    3次元測量やモデリング,平面2次元河床変動解析モデルの普及により,従来の河川設計で課題とされてきた治水・環境・景観を並行して検討することや時間変化を考慮することが可能となる.本研究では,二時期の ALB データを有する河川を通じて,多自然川づくりの理念に沿った河川設計の質の向上に対する有効性や課題を検討した.その結果,設計評価に用いるモデルが二時期の ALB データで検証可能となったことでより確からしいデータに基づいた条件設定によって河床変動モデルの高精度化を適切に図ることができる.これらは設計に対する多面的な評価において正の影響を与えるが,一方で,設計評価モデルの土台となる平面 2 次元河床変動解析の評価指標や,環境評価における水理量の閾値の取扱いについてより深い検討が必要であることが明らかとなった.

  • 菅田 大輔, 箱石 健太, 一言 正之, 坂本 遥峰
    2024 年5 巻3 号 p. 203-208
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,土木・建設分野における LVLM (Large Vision Language Model)を用いた画像分類の精度向上を目的として,河川の不法投棄を対象に,プロンプトの違いが分類精度に及ぼす影響を検討した.その結果,検証範囲において,具体的な事例を示して検知対象物を表現したプロンプトを用いた場合の有効性が示唆された.本検証では河川不法投棄を対象に画像分類を試行したが,検知対象物のドメインに適応したプロンプトの設定方法を示唆できたと考えられる.

  • 庵原 康世, 佐竹 祐里奈, 中村 和樹, 和泉 勇治, 子田 康弘
    2024 年5 巻3 号 p. 209-219
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,既往の研究と比較して腐食検出精度の向上を図ることを検討するため,CNN における一般的なデータ拡充手法の 1 つである 90 度回転や左右反転といった画像の幾何変化ではなく,画像の輝度変化に着目した.これにより,腐食の特徴を明瞭にできると考え,福島県の道路橋点検結果における状況写真をトレーニングデータとして,90 度回転と左右反転に加え,コントラスト低減および強調,ヒストグラム平坦化による前処理を実施し,これら前処理の有無に伴う腐食検出精度を調べた.その結果,コントラスト低減を施したトレーニングデータを学習したモデルを構築することにより,腐食クラスの分類精度を最大限に高めることができることが判明した.

  • 杉崎 光一, 全 邦釘, 阿部 雅人
    2024 年5 巻3 号 p. 220-230
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    大規模言語モデルの発展が著しい,OpenAI 社のモデルである GPT-4 に匹敵するモデルが各社から発表されている.また,入力データとして画像に対応した GPT-4V(ision) ,画像の理解力が向上している GPT- 4o など,多様な入力データに対応するマルチモーダル化が進んでいる.本論稿では,大規模言語モデルの技術的な動向についてレビューを行い,ユースケースとして医療分野と土木分野での活用状況についてレビューを行う.また,土木の専門知識を導入する方法として,現状費用対効果が高いと考えられる RAGについて仕組みや課題を整理した.RAG の実装結果などを基に,業務に対する知識などをどのように取り込んでいくか知識プラットフォームとしての課題を整理した.

  • 生内 良汰, 佐伯 昌之
    2024 年5 巻3 号 p. 231-241
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    地震などの災害によって構造物に生じた被害を迅速に把握する必要がある.そのため,著者らは構造部材の破壊音を自動で検知する手法の開発を試みている.本研究では,まず木材破壊音を録音した機種の違いが CNN による木材破壊音と環境音の分類精度へ与える影響を評価した.その結果,学習データとは異なる機種で録音した木材破壊音の分類精度は,学習データと同じ機種で録音した木材破壊音の分類精度と比べて低下することがわかった.そこで,機種による周波数特性の違いを調べ,録音データの周波数特性を改変するデータ拡張手法を試みた.その結果,学習データに無い機種で録音した木材破壊音の分類精度を向上でき,元のデータに対する分類精度も向上した.

  • 鈴木 大地, 福井 智大, 森 広毅, 黒田 一郎, 別府 万寿博
    2024 年5 巻3 号 p. 242-252
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    飛来物の衝突に起因する裏面剥離と剥離片の飛散を防止する目的でポリウレア樹脂を塗布された鉄筋コンクリートを対象として,衝突による損傷を検知するための打音を用いた非破壊検査における局所外れ値因子法(LOF)の適用性を確認することを目的として実験的検討を行った.飛翔体の衝突により損傷させた RC 版供試体を対象とした実験において,塗布された樹脂層に対するハンマ打撃時の打音スペクトルを入力データとし,LOF による損傷判定を試みて,損傷の判定が可能であることを確認し,判定結果に及ぼす教師データ数やその取得位置の影響について検討している.

  • 中屋 柊人, 森川 大輔, 臼井 裕喜, 待鳥 博志, 深田 宰史
    2024 年5 巻3 号 p. 253-261
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,福井県が管理する橋梁の中から,コンクリート橋の塩害,ASR および凍害(早期劣化橋梁)を対象として,2 巡目までの定期点検結果から,早期劣化橋梁の健全度がどのように推移したのかを調べ た.その結果,健全度がⅡからⅢへ低下した橋梁のうち,ASR 劣化橋梁の占める割合が高かった.また,この早期劣化橋梁を効率的に今後管理していくため,早期劣化橋梁の劣化予測を行う際の影響因子を機械学習により分析した.その結果,それぞれの劣化予測に及ぼす地理条件や環境条件などの影響因子となる説明変数を明らかにすることができた.とくに,ASR 劣化では,反応性骨材を供給する河川と関係が示唆されていることから,本研究では主要河川との距離を説明変数として考慮した.

  • 前田 貴公, 黒田 千歳, 吉田 幸司, 新美 利典, 歌川 紀之, 全 邦釘
    2024 年5 巻3 号 p. 262-271
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    これまで,トンネルの検査の効率化および健全性の評価の高精度化を目的に,トンネル覆工の表面画像から画像解析技術によりひび割れ等の変状を検出し,検出した変状から注意すべき変状を判別する手法の検討を進めてきた.本研究では,既往の研究成果等を基に,3 種類の注意すべき変状の検出ルールを整理し,トンネル覆工の表面画像から機械学習を含む画像解析技術により 3 種類の注意すべき変状を自動検出する手法を構築した.3 種類の注意すべき変状について本検出手法による検出と検査員による判読を比較した結果,本検出手法には高い変状検出性能があることを確認した.

  • 小林 巧, 吉谷 薫, 大住 道生
    2024 年5 巻3 号 p. 272-285
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    大規模地震発生後の道路橋の点検では橋梁点検車の配備が困難である場合や資材・機材の不足により足場が設置できない場合も多く,その条件で支承部等の点検が強いられることも多い.そこで,足場が無い条件での点検手段として UAV や自撮り棒を活用することを念頭に置き,それらに取り付けたカメラを用いて変状を確実に取得することを目的とした実践的な研究を行った.その結果,単径間の小規模橋梁で近接が容易な道路橋の点検は近接目視のみで十分であった他,多くの床版橋や桁橋では自撮り棒が有効であったこと,桁高が高い上部構造では UAV が有効であった等の知見が得られた.

  • 阿部 真己, 持田 史佳, 渡邊 凌
    2024 年5 巻3 号 p. 286-294
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    土木構造物の維持管理には,損傷の記録を,診断,補修,次回点検時の資料として,発生位置や外観,進行性の有無,補修要否が判断できる資料として蓄積することが重要である.近年インフラメンテナンスでの活用検討が進むデジタルツイン技術の課題であるデジタルツイン構築の容易さや正確さの向上を目的に,複雑な形状を有する構造(鋼構造や橋梁橋座部)を対象に動画を入力データとした NeRF(K-Planes)による 3 次元シーン構築と NeRF 情報から立体のソリッドモデル構築を実施した.構築した立体モデルの精度を確認し,NeRF の課題として点検時の撮影がデジタル空間での再現性に及ぼす影響を洗い出した.

  • 小原 裕貴, 嶋田 智行, 高岡 広樹, 野村 悠太, 天方 匡純, 石井 明, 山城 賢, 井手 喜彦
    2024 年5 巻3 号 p. 295-302
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,d4PDF を外力とした FVCOM による高潮計算で作成されたデータセットを用いて,台風情報(台風位置,中心気圧,最大風速半径)のみを入力とする階層型ニューラルネットワークにより,有明海の高潮予測モデルを構築し予測精度の評価を行った.その結果,台風情報のみでも比較的高い精度で高潮を予測できることを確認した.さらに,台風位置の入力において,緯度経度として入力するより,予測地点からの距離と角度で入力した方が,同じ台風情報でも特徴量の解釈性が向上し,予測精度が高くなることが明らかとなった.また,実績台風での予測評価を行い,今後の高潮予測モデルの運用に向けた課題点を示した.

  • 行木 靖人, 豊谷 純, 矢野 耕也, 植村 あい子, 田本 亮, 伊藤 正人
    2024 年5 巻3 号 p. 303-315
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,トンネル照明灯具の腐食・損傷判定において,AI の判断過程を解釈可能にし,性能改善を 図る手法を検討した.具体的には,ResNet18 を用いて照明灯具の画像から特徴量を抽出し,その特徴量を決定木分析によって選別した.次に,Grad-CAM を用いて,決定木で選ばれた特徴量がどの部分に注目しているかを視覚化し,AI の判断過程を明確にした.さらにメンテンナンスの際に処置が必要なクラス・不必要なクラスを分けるということが重要であることに着目し,分類精度が悪いクラスの精度向上を図った.具体的には,ランダムフォレストを用いて代替特徴量を探索し,新しい決定木を構築した.これにより,処置が必要・不要に特化した性能に向上させること,またクラス 2 の分類性能が向上し,モデルの性能向上が確認された.

  • 福井 智大, 黒田 一郎
    2024 年5 巻3 号 p. 316-327
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,ニューラルネットワーク(NN)モデルを用いた打音による鉄筋腐食の多クラス分類手法の適用性について検討するとともに,教師データセットの構成条件(データ数,誤ラベルデータの混入)や NNモデルの中間層ノード数が分類結果に及ぼす影響について検討を行ったものである.三つの出力ノードを有する NN モデルを用いることで,鉄筋腐食を極初期段階(腐食率 1%),腐食が進行した段階(腐食率 6%),腐食無し(健全)の 3 クラスに分類可能であることを確認した.また,分類精度の向上のためにはできるだけ多くの教師データを収集することが望ましく,反対に NN モデルの中間層ノード数が過剰な場合や教師データセットに正常ラベルと整合しない誤ったデータ(誤ラベルデータ)が混入すると,分類結果が低調となる傾向を確認した.

  • 辻井 純平, 合田 哲朗, 中野 雅章
    2024 年5 巻3 号 p. 328-336
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    土木構造物の維持管理において,数値解析を用いた耐荷性能の評価を効率的に進めることが課題である.本研究では,近年取得や蓄積が進む点群データから直接的に耐荷性能を推定することで,効率的に構造物 の耐荷性能を評価する手法について検討した.構造物の点群が有する形状的特徴から耐荷性能に関する指標を推定する深層学習ネットワークを提案し,H 形鋼の単純梁を想定した仮想的な点群のデータセットから学習を行った.耐荷性能として断面二次モーメントや降伏耐力を対象として推定を行い,推定結果と幾何形状から求められる真値との比較検証を行った.その結果,推定した断面二次モーメントや降伏耐力は真値に対して 20%程度の範囲の誤差で推定可能であることを確認し,本手法の耐荷性能評価への適用性を示した.

  • 阿部 真己, 平松 裕基, 大石 哲也
    2024 年5 巻3 号 p. 337-348
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    連立偏微分方程式の偏微分項を直接近似する Physical-Informed Neural Networks(PINNs)は,より高いデータの再現性でより高速に物理現象を解析できる手法として有望であり,最長 2 日程度かかる計算時間を数分に短縮することもできる.一方で,(a) 物理法則に対する厳密性は誤差収束性に依存しており,物理法則の厳密性を確保しようとするとより大きな計算負荷がかかり厳密性と速度にトレードオフがあること(複雑な地形の外水氾濫解析にとっては重要な課題の一つである),(b) 時空間全体を連続関数で表現しているためクリアな地形条件が原理的に苦手であることなど,実際の地形条件の問題への PINN 適用には多くの課題が依然として残っている.

    本研究では,階層型グリッドベースの位置埋め込みである K-Plane という手法を改良して PINN に導入することにより,(a) PINN 損失を計算するサンプリング地点数を低減(より高速に計算できる)しても物理法則の厳密性を高い状態で保持でき,(b) K-Plane に地形条件を事前学習させることで,堤防内外などの自然で地形条件に沿った水面を表現可能になることを示す.実際の地形条件での適用の可能性について確認した.地形条件と観測結果があれば,どこでも同様の計算が実現できる.

  • 田中 光莉, 板倉 健太, 斎藤 嘉人
    2024 年5 巻3 号 p. 349-358
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    果実および野菜類は収穫されてから消費に至るフードサプライチェーンの各段階でロスや廃棄が発生しており,収穫後のフードサプライチェーンにおいてロス削減に貢献する技術が求められている.本研究では,カラー画像および蛍光画像を入力とする重量減少率の予測モデルの構築を目的とした.果色の異なるミニトマトにおいてカラー画像および 365 nm 励起の蛍光画像の撮影,励起蛍光マトリクス(EEM)の測定を経時的に行った.赤色ミニトマト,黄色ミニトマト,赤色および黄色ミニトマト両方を入力とした 3 パターンのモデルを構築した結果,多色のミニトマトの画像を入力したモデルではRMSE,MAE,R²はそれぞれ 0.853,0.676,0.660 となり,単色のモデルとほぼ同等の精度であった.異なる果色のミニトマトの重量減少率を単一のモデルを用いて予測できる可能性が示唆された.

  • 李 星愛, 清水 康生, 松ケ下 伸介, 上村 隆雄
    2024 年5 巻3 号 p. 359-365
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,道路陥没リスクを判定するために教師あり深層学習モデル(Multi-Layer Perceptron: MLP)を作成した.MLP モデルは過学習の問題を抱えているため,最適なハイパーパラメータを決定した後,反復計算の回数を適切に制御して,過学習問題の解決を試みた.外挿予測のテストにおいて,正答率と再現率,適合率,F 値の 4 種類の評価指標を用いてモデルを評価した結果,学習時の評価指標と比較して 4 種類とも精度がわずか 3%未満の低下で過学習の問題を回避できた上,道路陥没の見逃しを 17%まで抑えることができた.一方,カテゴリー化情報や属性の違う情報の説明変数を除外した結果,精度に殆ど変化はなかったため入力情報収集の効率化の可能性が示唆された.

  • 塩見 康博, 可児 直也
    2024 年5 巻3 号 p. 366-375
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    交差点平面図は道路行政の DX を進める上で重要なデータであり,効率的なデータ生成手法の確立が求められている.これまでに,空中写真を用いたセマンティックセグメンテーション(SS)による図面生成手法が提案されているが,歩道橋などのオクルージョンがある場所での精度低下が課題となっている.そこで,本研究では,3 次元点群データと空中写真を組み合わせてオクルージョンを考慮したセマンティックセグメンテーションを行う手法を提案した.この手法は,オクルージョン物体を 3 次元点群データより特定し,その緯度・経度情報を空中写真上に射影し,当該ピクセルをマスクして SS による推論を行うものである.検証の結果,交差点構成要素の識別精度が可能であること,そして,識別精度を最大化する適切な点群密度が存在することなどを明らかとした.

  • 立石 良, 西嶋 音々, 東川 創, 牧野 幹太
    2024 年5 巻3 号 p. 376-381
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,道路管理者や地域住民が迅速に路面積雪状況を確認するための支援ツールとして,主要道路に設置された道路カメラの画像を用いて,道路路面を「積雪」,「非積雪」の 2 種類に目視分類した教師データを作成した.また,自動で路面状態を判別する AI モデルを構築し,昼と夜を合わせた400 枚の画像で検証した.その結果,正解率は約 85%以上となった.

  • 林 知樹, 藤田 悠介
    2024 年5 巻3 号 p. 382-393
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    社会インフラの多くは老朽化を迎えており,既存の構造物の維持管理や長寿命化は社会的な課題である.既存の構造物を長期的に活用するために,AI による損傷評価の効率化が期待される.高性能な深層学習モ デルを構築するためには,膨大なデータの収集とクラスラベルを付与するアノテーションが必要であり, その効率化が課題である.本論文では,コンクリート構造物のひび割れ検出および領域分割の問題に, Ganomaly,PaDiM,PatchCore,FastFlow およびEfficientAD の 5 つの異常検知モデルを適用し,少量の正常データのみを用いてモデルを構築する方法を提案する.実験により,各モデルのひび割れ検出および領域分割への有効性を示す.また,異常検知モデルの限界と実用に向けた課題を明らかにし,対策を述べる.

  • 龍田 斉, 長井 宏平
    2024 年5 巻3 号 p. 394-402
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,全国道路施設点検データベースに代表される各種データプラットフォームの整備により,複数地域のインフラ施設データを用いた解析が実施しやすい環境が整いつつある.本研究では,複数地方で運用中の橋梁維持管理システムに蓄積された橋梁点検データを分析し,その劣化傾向を整理するとともに,各道路管理者が汎用的に利用可能なリスク評価指標として,劣化の範囲や進行度を考慮した指標を検討した.リスク指標を用いて橋梁群の劣化状態を評価することにより,地域共通の劣化傾向や健全性の判定区分ごとの劣化傾向の差異を整理すると共に,リスク指標を診断に活用する際のユースケースを検討した.

  • 龍田 斉, 長井 宏平
    2024 年5 巻3 号 p. 403-409
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,全国道路施設点検データベースに代表されるデータプラットフォームが増加している.これらのデータを組み合わせることにより地域を横断した様々な解析が可能となるが,全てのデータを用いての解析には潤沢な計算資源が必要になるうえデータ間の重複等により解析リソースの割り当てに無駄が生じる.本研究は,これらの問題を解消するため,多数の説明変数から解析に必要最小限のものを抽出して橋梁劣化推定モデルを構築する手法について検討した. その結果,本研究の手法で絞り込んだ説明変数を教師データとしたモデルの精度は,全変数を用いた場合の精度をある程度保持することを確認した.

  • 箱石 健太, 一言 正之, 菅田 大輔, 石田 富英, 小久保 緑
    2024 年5 巻3 号 p. 410-417
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    気象条件やダム諸量に基づき,ダム操作を深層強化学習により最適化する事例は増えつつある.しかしダム操作を意思決定する上では,気象条件やダム諸量以外のダム流域に関する利害関係者やCCTVカメラ映像といった様々な状況によってダム放流操作が判断される.これらダム放流操作の判断基準を深層強化学習における報酬関数としてモデル化することは困難である.昨今,大規模言語モデル(Large Language Models,以下 LLM)は Reinforcement Learning from Human Feedback(以下,RLHF)により人間の価値観に基づいた深層強化学習を適用することで,より精度の高い回答を実現している.本研究では,深層強化学習によるダム放流操作モデルに対しRLHFを適用し,人間の価値観を加えたダム放流操作モデルを構築した.構築したモデルを検証した結果,人間の価値観を反映したダム放流操作を行っていることを確認した.

  • 住吉 諒, 今井 龍一, 山本 雄平, 中原 匡哉, 神谷 大介, 姜 文渊
    2024 年5 巻3 号 p. 418-426
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国では,自動車交通量調査の省力化のために,AIを用いた調査が推進されている.既存研究では,AIを用いた車両の部位の識別により,車種別の断面交通量を計数できることが明らかにされているものの,フレアや景色の映り込みにより精度が低下する課題がある.対策としては,ナンバープレートの分類番号の認識結果から車種を判定する方法が考えられる.しかし,分類番号が不鮮明な場合,認識精度が低下する.そこで,本研究では,文字が鮮明な場合は分類番号を認識し,不鮮明な場合は車両の部位の識別結果を用いて車種を判定する手法を考案する.3つの地点で撮影した動画像に考案手法を適用した結果,車種の判定精度はすべての地点でF値が0.950以上と高精度であった.今後は,図柄入りのナンバープレートに対応することで,早期実用化を目指す.

  • 我妻 嵩斗, 天野 直紀
    2024 年5 巻3 号 p. 427-433
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では歩行時の振動のみを用いて歩行者の位置推定を行う手法を提案する.歩行時に発生する床の振動は距離に応じ減衰していくため,周波数ごとの強度の時間変化に着目し距離の推定を行う.大量の学習データによって振動源の特徴や環境を学習できるため,従来困難だとされてきた振動源の推定を可能にしている.センサアレイから得られた振動データから生成したSTFT画像をCNNに入力し距離の推定値を出力する.実験では複数の圧電素子で距離推定を行い,人位置推定の評価をした.結果は実際に足踏みした点と推定された人位置との平均絶対誤差率が69.7 %であった.歩行データでの検証では平均誤差率が36.7 %と減少することを確認した.

  • 中原 匡哉, 松井 友哉
    2024 年5 巻3 号 p. 434-443
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国では,全国的な自動車の利用率増加,地方圏では,人口減少や三大都市圏への人口流出により,バスなどの利用者が減少している.こうした中,バス会社では,乗客人数などのデータを取得して利用することで,効率的な運行路線が計画されている.また,作業の効率化や人員削減を目的として機械的に人数を計数する技術も注目されており,バス車内に機械を設置して乗客を計数する手法が多く提案されている.しかし,データの利用やバス車内での計数手法は,バス会社以外の施設や団体が計数する際,バス会社に対して継続的に膨大な金銭的コストを要する課題がある.そこで,本研究では,バス停を撮影したビデオカメラ映像から深層学習を用いて,バスの降車人数を計数する手法を開発した.そして,実証実験を通じて提案手法の有用性と課題を明らかにした.

  • 及川 由喜, 工藤 汐恩, ルン タイン アン ズイ, 栗橋 祐介
    2024 年5 巻3 号 p. 444-456
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,衝突作用を受けるRCはりの最大変位に関する高速かつ高精度な推定法の提案を目的に,機械学習によるサロゲートモデルを用いる方法に着目して検討した.6つの代表的な推定モデルとして,一般化線形モデル (GLM),ディープラーニング (DL),決定木 (DT),ランダムフォレスト (RF),勾配ブースティング決定木 (GBDT),サポートベクターマシン (SVM) を用いた.その結果,衝突作用を受けるRCはりの最大変位推定への機械学習の適用可能性が確認された.ただし,教師データにおける説明変数の範囲や実験データの外れ値を見極めて,より詳細に検討する必要がある.本研究の範囲内では,説明変数を3つ (入力エネルギー,降伏曲げ耐力,降伏変位) としてRFを用いる場合において,塑性率12程度まではある程度の精度で最大変位を推定できることが明らかになった.

  • 安藤 佑咲, 中島 未椰, 斎藤 隆泰, 加藤 毅
    2024 年5 巻3 号 p. 457-467
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,土木構造物や原子力機器などの老朽化に伴い,非破壊検査の重要性が高まってる.特に,超音波非破壊検査は最も代表的な非破壊検査法であり,各種材料の製造過程から現場での構造物の検査に至るまで,幅広く利用されている.近年では,先進超音波計測技術としてレーザー超音波可視化検査(LUVT: Laser Ultrasonic Visualization Testing)が開発され,機械学習を用いた自動検査の試みも検討されているものの,欠陥のある異常データが入手困難であることが,機械学習による自動検査の精度向上の妨げとなっている.そこで,本研究では,負例(欠陥なしデータ)のみから学習が可能な拡散モデルを用いた異常検知手法によるLUVT自動検査の方法を提案する.数値実験の結果,提案法は従来用いられてきた物体検出アルゴリズムと比べて,欠陥検出および位置推定性能が向上したことを確認した.

  • 大西 功, 藤本 将光, 山口 弘誠
    2024 年5 巻3 号 p. 468-479
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    令和4年8月3日から4日にかけて新潟県村上市で発生した大規模な土砂災害では同時多発的に多くの斜面で斜面崩壊が発生し,谷筋では土石流も確認された.詳細に衛星画像や航空写真を観察すると尾根を境に崩壊箇所に偏りがあることが判明した.その原因を明らかにするため,斜面崩壊が確認された箇所の潜在的な崩壊特性を転移学習により解析するとともに,当日の風向きや降り始めからの降雨メッシュごとの解析雨量から誘因を分析した.風衝斜面と風背斜面に地質や地形的な潜在的崩壊特性に差がないことから,観測された斜面崩壊の原因は地形性降雨により風背斜面に局所的な降雨が発生したことによるものであることを示唆する結果が得られた.

  • 神谷 大介, 上地 安諄, 大庭 哲治
    2024 年5 巻3 号 p. 480-486
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/22
    ジャーナル オープンアクセス

    無電柱化の推進の必要性については多くの議論がなされているが,その優先順位の決定方法には課題がある.また,無電柱化は景観・交通安全・防災の観点から述べられているが,防災の観点からの研究は多くない.防災についても災害復旧における支障除去の観点から緊急輸送道路における無電柱化についての議論に留まっている.

    本研究では,津波災害リスクを有する石垣市市街地を対象とし,住民と観光客の避難行動分析に基づき,避難経路としての重要性の観点から無電柱化優先度についての検討を行った.その結果,避難人数の多さから無電柱化を優先的に進めるべき道路を明らかにした.

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