2024 年 5 巻 3 号 p. 857-865
構造物に生じる重大損傷を人工衛星によって検知する技術に関する検討を目的として,令和6年能登半島地震が発生した能登半島・金沢内灘エリアの橋長50m以上の275橋を選定して分析した.地震など災害を対象とした分析や情報提供において,発災後の即応性が最も重要であるが,本検討の目的は即応性ではなく,現状の衛星データと分析技術による異常検知の適用可能性と課題について知見を得ることである.12日間隔で観測される衛星データを地震前45回観測・地震後3回観測ほど使用して橋の変位を分析し,地震前後で変位の違いが大きい箇所を抽出するという方法で,被災橋梁の検知を試みた.その結果,現地で損傷確認された橋の7割弱に対して変位の違いを検知できる結果を得た.一方で,分析に適した観測点が得られない橋も1割程度あった.この分析結果は地震発生直後の迅速な情報提供というニーズに答えるものではないが,広範囲で分析できる衛星の可能性を示すものである.