2025 年 6 巻 2 号 p. 179-187
Physics-Informed Diffusion Model(PIDM)は,拡散モデルを用いて物理法則の制約付きの数値計算結果を生成する代理モデルの一種であり,数値計算の結果などが大量にある条件下では,複雑な渦なども表現できる手法として期待されている.拡散モデルによる動画生成には,(a) メモリを大量に消費するため高額な計算機が必要であること,(b) 観測にあう結果の生成にはガイダンスなど独自の機構を導入して学習する必要があることなど,いくつかの制約がある.本研究では,(i) 拡散モデルに「Repaint」と呼ばれる事前のガイダンス付き学習なしに観測結果に合う動画生成が可能である手法を組み込み,(ii) Physics-In-formed 損失を拡散モデルの学習時にではなく,生成時にのみ制約をかける手法を構築することで,一切の基盤モデルの活用なしに学習・生成が可能である手法「Physics-Informed Repaint」を提案する.本提案手法では,計算結果が手元にあれば,条件付けなしの拡散モデルを学習させるだけでよい.
海流予測モデルによる黒潮-親潮の混合域という渦も多く非線形性が非常に高い領域の計算結果を対象に8日間の未観測期間の補間問題として,本提案手法の有効性を検証した.10万メッシュ程度の一連の計算結果を対象にコンシューマ用のシングルボードのGPUマシンのみで海流予測が実現できることを示し, Physics-Informed 損失の役割などを分析した.