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岡谷 貴之
2025 年6 巻2 号 p.
1-24
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
2016年から理化学研究所のインフラ管理ロボット技術チームでは,AIによるインフラ維持管理への応用を研究している.その間,深層学習や基盤モデルなどによってAIは著しく進化した.基盤モデルは大量のウェブデータを事前学習した大規模ニューラルネットワークで,学習後にタスクを決めることができ,汎化性能が高い.その中核技術は大規模言語モデルで,与えられた文章の文脈を踏まえた上で次の単語を予測する.さらに現在は,思考ステップを踏まえて回答する推論モデルにパラダイムシフトしている.このように AI はますます性能が高まり,人間が言語化してきた知識のうち,ウェブ上で入手できる形式知はかなり学習できている.しかし,最先端のマルチモーダルAIでも,言語化が困難な暗黙知・身体知・直感などには対応できず,今後の課題となっている.
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千葉 直也
2025 年6 巻2 号 p.
25-41
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
Neural Fieldは「空間中の各点に対応した関数値」をニューラルネットワークでモデル化し,表面を関数として形状を記述する.Neural Fieldを用いた表面モデルの一つであるDeepSDFは滑らかな表面を表すとともに,シンプルなネットワークで複雑な形状をモデル化し,3D表現が革新された.ただ限界もあった.その後登場した体積モデルNeRFは,多視点の画像のみから任意視点画像生成を可能にした.その光学現象は密度と放射輝度でモデル化し,方向による輝度値の変化に対応でき,煙など散乱を含むシーンも扱える.そのネットワーク構造は,座標と視点角度を入力し,密度と色を出力するものである.ただ,空間中でクエリを増やすと重くなるため,空間方向への分解やNeRFの分割などさまざまな工夫により,高速な学習・推論を実現した.最後に,筆者が共同で取り組んだ応用研究事例を紹介する.
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加藤 大晴
2025 年6 巻2 号 p.
42-50
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
3Dデータは,設計以外にも,デジタルツインやエンターテインメントなどで有用だが,3Dデータを3Dモデリングツールで制作する敷居は高く,必要とされるリソースも大きい.それを解決する技術として3Dキャプチャと3Dモデル生成が挙げられる.なかでも,実世界の立体情報を機械的に取り込んで3Dデータ化する3Dキャプチャは,深層学習からヒントを得た手法で品質が大幅に向上した.深層学習による画像認識もフォトグラメトリも,「独立に設計された複数のモジュールを経て出力に至る」のではなく,「得たい出力に直接的にフォーカスして識別モデル/3Dモデルを最適化」したことが成功の鍵である.言語指示によって新しい3Dモデルを生成する技術については,画像生成の延長線上にあるが,まだ成熟し切っておらず,今後の性能向上が期待される.
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岡内 亮太, 全 邦釘
2025 年6 巻2 号 p.
51-61
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
建設現場の3次元的な状況把握には,高精度な点群セグメンテーション技術が不可欠である.しかし,深層学習モデルの訓練に必要な大規模かつ多様なアノテーション付き点群データセットを実世界の建設現場から取得することは,コストと労力の観点から極めて困難である.本研究では,この課題を解決するため,Unityベースの仮想環境シミュレータ(OperaSim-PhysX) を活用し,多様な地形や建設機械を含むシーンを効率的に自動生成する手法を提案する.仮想環境内でRGB画像と深度画像を取得し,オブジェクトごとのマスク画像を合成することでアノテーションマップを自動作成し,大規模な教師あり合成点群データセットを構築した.この合成データのみを用いてPointNet++モデルを学習し,その実環境への適用性を検証するため,ドローンを用いたSfM(Structure from Motion)によって取得した実世界の建設現場の点群データに適用した.実験の結果,仮想環境のみで学習したモデルでも,実世界の点群データにおいて建設機械の種類や位置をある程度認識できる可能性が示された.特に重機の見落としが少ない(高い Recall)点は有望である.しかし,背景との色味の類似性やSfMで再構成が不十分な小型物体の検出精度など,仮想環境と実環境のドメインギャップ(Sim-to-Real ギャップ)に起因する課題も明確になった.これらの結果に基づき,今後の精度向上に向けた改善の方向性を議論する.
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板倉 健太, 林 拓哉, 斎藤 嘉人, 全 邦釘
2025 年6 巻2 号 p.
62-72
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
本研究では,導水路トンネル内の錆の効率的な点検に向けて,Matterportにより取得されたカメラ画像とLiDAR点群のセンサーフュージョン技術を活用した解析手法を開発した.従来の点群データのみの手法では,錆の凹凸や形状変化が小さく,検出が困難であることを示した.一方,カメラ画像からは色やテクスチャの違いを利用することで,錆の高精度な検出が可能であり,トンネル内の錆の位置を推定することができた.画像とLiDARの情報を統合することにより,画像のみからでは推定の難しい錆の位置や面積といった値の計算も可能となった.センサーフュージョンにより画像ピクセル当たりの距離を正確に推定し,平均絶対誤差1.3×10−3 m,平均絶対パーセント誤差 (MAPE) 6.7%であった.
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村井 匠, 板倉 健太, 宮川 璃空, 工藤 颯太, 村石 昂亮, 斎藤 嘉人
2025 年6 巻2 号 p.
73-84
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
豆腐の品質および廃棄率は凝固状態に依存するため,豆乳の凝固過程における粘度予測技術が求められている.本研究では凝固過程における光散乱の変化に着目し,異なる凝固条件下でレーザ散乱画像を時系列的に取得した.得られた画像から粘度を推定するため,事前学習済み畳み込みニューラルネットワークを用いた回帰モデルを構築した.また,豆乳の凝固過程は時系列的な依存関係を持つ現象であることから,Long Short-Term Memory(LSTM)モデルを導入し,凝固過程における時間的依存性の学習を行った.モデル構築の結果,RMSE = 3.38 mPa·sが得られ,レーザ散乱画像を用いた粘度推定の有効性が示され,豆腐の凝固状態の即時フィードバックによる高品質化および廃棄量削減に貢献する可能性が示唆された.
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加藤 哲, 古川 愛子, 武市 知大
2025 年6 巻2 号 p.
85-94
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
橋梁ケーブルの維持管理においては,高速フーリエ変換(FFT)を用いて得られた固有振動特性から間接的に張力を推定する手法が広く採用されている.しかし,信頼性の高いケーブルの維持管理を実現するためには,固有振動特性の推定精度の向上が不可欠であり,そのためには適切な推定手法の選定が求められる.本研究では,構造物の応答データのみを用いて固有振動特性を推定するFDD(Frequency Domain Decomposition)法に着目し,FFT法との比較を通じてその推定精度を検証した.ケーブル模型実験に基づく検証の結果,特に高次モードにおいてFDD 法の方がモード形状の推定精度が高いことが確認された.さらに,推定された固有振動特性を用いてケーブルの張力および曲げ剛性を推定し,真値および設計値との比較を行った結果,FDD法による推定の方が張力および曲げ剛性の推定精度に優れることが確認された.これらの結果から,FFT法に代わりFDD法を用いることで,ケーブルの固有振動特性の推定精度が向上し,ひいてはケーブル諸元の推定精度の向上が期待できることが確認された.
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北岡 貴文
2025 年6 巻2 号 p.
95-101
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
大規模言語モデルを活用したビジネス展開は急速に進んでおり,新技術が次々と発表されている.近年はRAG(検索拡張生成)が注目されており,その活用にはベクトルデータベースの理解が求められる.しかし,専門技術を有しない場合,認知的負担が大きく,実用化が進みにくい.そこで本研究では,地盤工学と応用地質学で使用される土質名の一部を対象に,BERTを用いて用語間の関係を三次元化し,可視化を行った.さらに,ChatGPT-4oおよび ChatGPTo3-mini-high を用いて各軸の意味を問い,地盤工学の知識を反映した関係性の再考をAIに促した.その結果,開発コストを抑えつつ,土質名の関係性を動的に更新できる手法を提案する.
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關 太博, 北岡 貴文, 坂井 一雄, 宮永 隼太郎
2025 年6 巻2 号 p.
102-107
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
近年,山岳トンネルの切羽評価にAIを活用する事例が増えており,特に切羽画像を用いた分類が注目されている.しかし,学習データのクラス不均衡によりAIの分類精度が低下する課題がある.本研究では,クラスの不均衡に対応するために,生成AIを活用して重み付き交差エントロピーを導入し,人工ニューラルネットワーク(Artificial Neural Network)の学習を実施した.その結果,従来手法と比較して一部の評価項目で分類精度の向上が確認され,生成AIによるデータ補正の有効性が示唆された.一方で,特定の評価項目において精度の低下も見られ,改善の余地がある.本研究は,クラス不均衡への対策として生成AIを活用する手法の可能性を示し,AIの自社開発における新たなアプローチとして期待される.
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飯田 璃咲, 長井 宏平
2025 年6 巻2 号 p.
108-119
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
日本の橋梁老朽化が進む中,北海道では約2万橋が市町村により管理されており,限られた人員・予算の中での維持管理が求められている.本研究では,地理情報システムを活用し,北海道市町村が管理する橋梁の点検データから劣化傾向の空間的な分析を行い,地理的,環境的,社会的条件が健全性に与える影響を明らかにすることを目的とした.分析の結果,架設年度,道路管理市町村,上部工(使用材料)が主な劣化要因であり,橋種毎に異なる劣化傾向が確認された.特にRC橋は,市町村の財政力や職員数といった橋梁管理能力が劣化に与える影響が大きいことが示された.RC橋は小規模で使用頻度の低いものが多いために,維持管理が逼迫した市町村においては修繕や管理が行き届いていない傾向がある可能性がある.
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箱石 健太, 菅田 大輔, 一言 正之, 古木 宏和, 森 篤史, 楊 智睿
2025 年6 巻2 号 p.
120-127
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
近年,大規模言語モデル(Large Language Model, 以下LLM)の技術が発展しているが,特定の分野に対す る知識不足の解消といった課題がある.この課題を解決するために検索拡張生成(Retrieval-augmented generation,以下 RAG)が注目されている.RAGの技術の多くは埋め込み表現モデルで実現しているが,土木などの特定分野へのカスタマイズ性と経済性に課題がある.本研究ではOpenAI社のtext-embedding-3-largeに対し土木分野に適応するためのカスタマイズ可能なモデルと小規模なモデルをそれぞれ対照学習により構築した.精度検証の結果,土木分野への適応と小規模で高速計算可能なモデルの有効性を確認した.
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菅 早苗, 山中 哲志, 松本 慶太
2025 年6 巻2 号 p.
128-137
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
山岳トンネルの掘削作業は基本的に同じ作業を繰り返すため,1 サイクルあたりの作業時間であるサイクルタイムを管理することが生産性向上において非常に重要である.しかし,サイクルタイムを計測するためには,手間がかかる.そこで,筆者らはAIを使って自動算出する方法を開発した.AIの判定精度を向上させるためには,複数現場の情報を一定量以上学習させる必要があるものの,その学習量などについては分かっていない.本稿では,山岳トンネルの代表的な掘削方法である発破掘削と機械掘削における学習量と判定精度の関係を検証し考察した.検証結果として,発破掘削では学習量を増やすことで,全体的な判定精度は向上したが,機械掘削ではあまり向上せず,低下する作業もあり,判定方法に改良の余地を残した.
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酒谷 莉奈, 笹井 晃太郎, 貝戸 清之
2025 年6 巻2 号 p.
138-149
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
現在,我が国では橋梁の老朽化が進行し,地方公共団体においては,技術者不足や財政制約といった課題が顕著となっている.そのため,限られた資源を有効活用するため,統計的劣化予測を基に補修優先順位を決定することが求められる.本研究では,近年注目されている群マネの考え方の一つである広域連携に基づき,複数の管理主体の橋梁点検データを統合する.そして,混合マルコフ劣化ハザードモデルを用いた劣化予測手法を適用することで,管理主体ごとの期待寿命を算出した.さらに,管理主体ごとに健全度判定基準が異なる場合,そのままではデータの統合が困難となるため,統合前後の健全度の対応関係をモデル化する手法として隠れマルコフ劣化ハザードモデルを提案する.これにより,データの統合を可能にするとともに,より精度の高い劣化予測を実現することを試みた.
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窪田 諭, 笹井 理市, 安室 喜弘
2025 年6 巻2 号 p.
150-158
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
都市空間においては,デジタルツインを志向した現実空間とサイバー空間を連携するプロジェクトが進められている.しかし,施工分野においてデジタルツインのためにデータを蓄積する取り組みは少ない.本研究では,施工空間デジタルツインを構築することを目的として,これまで2次元で可視化されてきた作業員の位置情報を対象に,3次元空間内で作業員の位置座標を把握して3次元可視化することを目指した.そこでは,3つのビーコンを用いて,作業員の位置座標を推定し,3次元点群データ内に表示する仕組みを構築した.屋内施工空間を想定した模擬環境での実験により,提案手法の機能性を検証した結果,ビーコンによる三点測位方式によって作業員の位置を測位することができ,それを3次元空間に可視化できる可能性を示した.
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新地 捺未, 福澤 健人, 長井 宏平
2025 年6 巻2 号 p.
159-172
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
北海道では人口衰退や財政難などの社会課題に加え,インフラの経年劣化が深刻である.維持管理のための資本不足もあり合理的な維持管理が急務だが,各市町村の状況は様々で考慮する要素が多く,一律の対策検討は難しい.そこで本研究では,異なる市町村状況に合わせた効果的な維持管理指針の提案を実現しうる手法の確立を目指し,多様な要素を含んだ定量的かつ包括的な市町村の分類・分析を行った.社会状況や構造物のオープンデータを用いて179市町村をクラスタリングし,結果の可視化とデータ整理による分析から,社会状況の困難度や維持管理体制の特徴,周辺地域への影響など市町村群ごとで異なる現状や課題が明らかになった.この結果は市町村同士での課題共有の促進,国や都道府県による政策立案の定量的指標としての活用が期待できる.
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福井 千菜美, 王 暢, 蘭 子文, 李 広, 田村 彰浩, 花田 剛志, 前田 圭介, 高橋 翔, 小川 貴弘, 長谷山 美紀
2025 年6 巻2 号 p.
173-178
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
近年,技術者数の減少に伴い効率的なインフラ管理が進められている.しかし,点検に必要な構造物の図面はデータベースに統合されておらず,スキャンされた図面の効率的なCADデータ化が求められている.本研究では,図面のCADデータ化に向け,文字検出モデル(FCENet)と大規模マルチモーダルモデル (LMM,GPT-4o)を統合して図面の数値認識を行う手法を提案する.実験の結果,文字検出モデルによって数値の位置を特定し,背景や不要な線の影響を抑えた上で個々の検出結果をLMMに入力する提案手法は,LMMが数値の位置を推測する負担を軽減し,より安定した数値認識が可能であることが示された.また,LMMのモデル更新は図面の数値認識精度の向上において重要であり,将来的には,より高度なモデルを採用することでさらなる精度の向上が期待できる.
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阿部 真己, 高橋 巧, 小林 明大, 高山 勝巳, 河野 史郎
2025 年6 巻2 号 p.
179-187
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
Physics-Informed Diffusion Model(PIDM)は,拡散モデルを用いて物理法則の制約付きの数値計算結果を生成する代理モデルの一種であり,数値計算の結果などが大量にある条件下では,複雑な渦なども表現できる手法として期待されている.拡散モデルによる動画生成には,(a) メモリを大量に消費するため高額な計算機が必要であること,(b) 観測にあう結果の生成にはガイダンスなど独自の機構を導入して学習する必要があることなど,いくつかの制約がある.本研究では,(i) 拡散モデルに「Repaint」と呼ばれる事前のガイダンス付き学習なしに観測結果に合う動画生成が可能である手法を組み込み,(ii) Physics-In-formed 損失を拡散モデルの学習時にではなく,生成時にのみ制約をかける手法を構築することで,一切の基盤モデルの活用なしに学習・生成が可能である手法「Physics-Informed Repaint」を提案する.本提案手法では,計算結果が手元にあれば,条件付けなしの拡散モデルを学習させるだけでよい.
海流予測モデルによる黒潮-親潮の混合域という渦も多く非線形性が非常に高い領域の計算結果を対象に8日間の未観測期間の補間問題として,本提案手法の有効性を検証した.10万メッシュ程度の一連の計算結果を対象にコンシューマ用のシングルボードのGPUマシンのみで海流予測が実現できることを示し, Physics-Informed 損失の役割などを分析した.
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緒方 陸, 大久保 順一, 岡野 将大, 藤井 純一郎
2025 年6 巻2 号 p.
188-198
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
土木分野のように専門性の高い分野において,大規模言語モデル(LLM)は回答性能が低いことが知られている.この問題への対応として Retrieval Augmented Generation (RAG)などの手法が提案されており,土木分野においても適用研究が増加している.一方で対象の文書数が非常に多い場合など,現状のRAGでは対応しきれない問題も存在する可能性がある.ここで,最近では様々な分野でLLM-based Agentの事例が増えており,網羅的に知識の探索を行うなど土木分野でもその活用が期待される.本稿ではRAGやLLM-based Agentの比較分析を行い,適用の評価を行った.結果として,本検討結果からはRAGが高い性能を発揮する結果となった.一方,LLM-based Agentの手法はRAGよりも文書中の適切な箇所を参照できており,その活用可能性を示した.最後に,LLM-based Agent活用にあたっての課題を整理した.
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田島 大輔, 石津 諒太, 黒沼 出, 浜本 研一, 内村 裕
2025 年6 巻2 号 p.
199-211
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
建設機械の自動化技術を核とした次世代の自動化施工システムの研究開発が進められている.その中で,自動ブルドーザは大型ダンプトラックで荷下ろしされた材料をまき出す作業を実施しているが,荷下ろし材料の形状・体積を把握することで,まき出し作業のさらなる精度向上が期待できる.自動ブルドーザに設置されたセンサから材料の形状・体積を計測した場合,材料の量が多く山のような形状になっているため,自動ブルドーザから見て材料の後背部が測定できず,材料の形状・体積を精度よく求めることは難しかった.そこで,本研究では深層学習を用いて材料の形状・体積を推定できる手法を開発した.開発手法の精度検証と現場での実証実験を行った結果,材料の平均高さ誤差は0.049m,体積誤差は 5%であり,その有用性を確認した.
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浅野 湖太郎, 大竹 雄
2025 年6 巻2 号 p.
212-220
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
近年急速に発達している機械学習技術は土木工学分野においても高い成果を挙げている.中でも,リカレントニューラルネットワーク (RNN) は履歴を記憶することで時系列データに対し高い効果を発揮するモデルで,地盤地震応答への適用が期待できる.一方で,こうした深層学習モデルは解釈性に乏しく,信頼性評価において課題がある.本研究では,制御付き動的モード分解(DMDc) に基づいた作用素解釈をRNNに適用し,RNNモデルを展開し得られる作用素をモードに分解し,可視化するとともに,DMDcにより生成した作用素を学習に用い,RNNがより性質の良いモードを獲得することを目指す.研究の結果,DMDcを考慮しない場合と比較して同程度の予測性能を維持しながら解釈性の向上が達成できることが示された.
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吉田 龍人, 大久保 順一, 藤井 純一郎
2025 年6 巻2 号 p.
221-229
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
Computer Vision分野では動画から複数の移動体の軌跡を取得するMOT(Multiple Object Tracking)の手法が広く研究されており,MOT17などのベンチマークデータセットによるTrackerの性能評価が行われている.同時に実用研究ではMOTを用いて交通量調査の自動化を目指す事例が増加している.実用研究でTrackerを選定する際はベンチマークデータセットでの性能が参考となるが,一般的に調査で撮影される動画と映像の性質が異なるため,同様の性能が実用時に発揮されるとは限らない.そこで,本研究は歩道のみを対象に撮影した動画に対してMOT Challenge形式の正解ラベルを付与したデータセットを作成し,狭域の歩道空間を撮影した動画でのTrackerの性能評価を行った.MOT17に対する解析結果と精度に差異が生じた要因を分析するとともに,高精度に軌跡データを取得するための方策について考察した.
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高橋 悠太, 高瀬 愛瑠, 松島 恵悟
2025 年6 巻2 号 p.
230-236
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
土木分野におけるデジタルツインはその構築に大量のデータを必要とする.AIを含むデータサイエンスに基づく出力は物理空間の座標情報と紐づけられることで再現される.座標情報に紐づけられる様々なデータソースは正確さが求められるため,多様な手法を組み合わせてデータ照合することで,デジタルツインを修正・補完することを考える.既往研究では自動車道における大型車両規制について,複数のデータソースから照合することに着目し,JARTIC が公開する交通規制情報を Google Street View に存在するジオタグ付き写真データと道路座標と組み合わせて規制方向を推定した.本研究では写真上で検知すべき道路標識を増やし,検知された標識の位置から推定される方位角を基に規制方向を推定することで規制範囲の誤推定を抑制した.
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友枝 優志, 渡邊 学歩, Elfrido Elias Tita, 西野 匠悟
2025 年6 巻2 号 p.
237-246
発行日: 2025年
公開日: 2025/07/25
ジャーナル
オープンアクセス
近年,ICT/IoTを活用したインフラの構造ヘルスモニタリング(SHM)において,変位計測手法の一つとして,GNSSやSARなどの衛星技術の活用が注目されている.これらの技術は,ノイズを含む観測データの取り扱いに注意が必要だが,3次元の変形を長期かつ連続的に計測できるという利点を有している.そのため,橋梁の維持管理や異常の早期検知への応用が期待されている.
本研究では,5径間連続鋼箱桁曲線橋を対象に,RTK-GNSSにより取得された3次元変位データを用いて,ノイズ除去手法の開発および変形挙動の解析を行った.さらに,夏季に上部構造で観測された明らかな異常変形を踏まえ,その発生を的確に捉える異常検知アルゴリズムを構築し,検証を行った.本稿では,これらの取り組みと得られた知見について報告する.
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