2024 年 3 巻 1 号 p. 223-234
供用後,長期間経過したトンネルでは,老朽化により材質劣化や漏水などによる覆工の変状が多く発生し,利用者の安全性の確保が課題となる場合がある.このようなトンネルでは,通行止め等による社会的な影響を考慮すると,供用しながら覆工の打替え等の更新工事を行うことが望ましく,今後において対応が必要になるケースの増加が見込まれている.一方,現行のトンネルの更新工事においては,施工中における利用者の安全の確保が必要であるとともに,経済性に関する課題や工期が長いなど,合理的な施工方法の確立には多くの課題を抱えている.このため,筆者らは,トンネルの合理的な更新に資する工法の検討とともに,更新を行うにあたっての根幹となるトンネル構造に求められる力学的特性の研究を行った.本稿では,山岳工法で建設された道路トンネルの更新工事で想定される要求性能を述べるとともに検討した覆工切削型の更新工法の特徴や適用性,および要求性能との関連性を考察した結果について述べる.