インフラメンテナンス実践研究論文集
Online ISSN : 2436-777X
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実践研究論文集
  • 加藤 絵万, 渋間 陽二, 佐藤 一央, 小林 茂則
    2024 年 3 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     2012年に供用を開始した東京ゲートブリッジ(TGB)では,供用100年以上の実現を目指して,当時,考えられる最新の設計法や建設材料が採用された.また,高度な維持管理の実現に資する方策として,主橋梁部にモニタリングシステムが導入された.モニタリングの目的は,1)交通規制情報の収集,2)支承の管理,3)鋼床版の累積疲労損傷度の推定,4)地震時の点検の効率化である.本稿では,TGB主橋梁部のモニタリングのうち,2)支承の管理と3)鋼床版の累積疲労損傷度に関する計測結果を紹介し,これまでの実施状況から考えられるモニタリングの継続に係る運用面や技術面の課題について述べる.

  • 山門 健人, 石野 氏暁, 栃倉 善明, 佐々木 純
    2024 年 3 巻 1 号 p. 11-20
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     本研究では,バラスト軌道における機械化施工の推進を目的として,最適保守管理システムを構築した.各種検査データを統合した不良箇所リストの作成,軌道の劣化予測モデルの構築,施工箇所の選定指標を策定した.各種検査データからキロ程情報を基に不良箇所リストを自動作成することで,不良原因及び最適な施工方法の検討が容易になった.また,機械学習を用いた軌道劣化予測モデルにより3カ月後の軌道変位を基に優先順位を策定した.さらに,軌陸BHを用いた道床つき固め作業の施工箇所の選定において,最適化問題を定量的指標により評価することで最適な施工箇所を抽出した.その結果,不良箇所の抽出から施工箇所の選定までの一連の業務をシステム化し,年間で440時間の業務効率化及び,定量的な指標に基づいた施工により機械化施工の推進に繋がった.

  • 長瀬 祥敬, 後藤 浩, 井上 雅志
    2024 年 3 巻 1 号 p. 21-30
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     インフラの中で,橋梁は生活道路上にあるため,老朽化が特に注目されている.数が多い中小橋梁のその多くは,基礎自治体により管理されている.管理者は,橋梁の耐震整備を行っているが,時間と予算の関係から優先順位を決めなくてはならない.原則,優先順位の決め方は,アセットマネジメントに基づき行うものとされているが,実務上,明確なものがない.本研究では,首都直下地震が懸念される昨今,発災後,災害拠点間の道路ネットワーク上にあり,早期に復旧させるために利用する頻度の高い橋梁を重視すべきとの考えに基づいた決定法を提案した.この考えに則り,大田区内を対象としてシミュレーション解析を実施し,各拠点間を結ぶ路線上にある利用頻度の高い橋梁を見出した.この検討結果を踏まえ,本手法を社会実装するための注意点を指摘した.

  • 三鍋 佑季, 川口 貴之, 中村 大, 岩崎 凌子, 安達 謙二, 林 豪人, 小浪 岳治
    2024 年 3 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     本研究では補強土壁における施工時の品質管理や竣工後の維持管理に関する諸問題を改善し,補強土壁のメンテナンス性向上を目的として,アンカー補強土壁を対象とした実大実験を実施した.その結果,施工中に補強材の引抜き抵抗力を計測することで,不良土の混入や締固め不足を迅速に検知できる可能性があることを確認した.また,メンテナンスサイクルにおける診断時において,補強材に作用する引抜き前の引張力と引抜き時の最大抵抗力との比較が可能となることや,修復(措置)時にも既設補強材に作用する引張力やその変化を把握しうることから,補強材を壁面材の表側で連結できるようにすることは,補強土壁のメンテナンス性向上にとって極めて有効であるとの認識を得た.

  • 竹内 康, 山本 尚毅, 川名 太, 藪 雅行, 渡邉 一弘
    2024 年 3 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     本研究では,FWDたわみ形状から直接的に路盤の健全度評価を行う方法として,NCHRPレポートで示されている路盤の圧縮ひずみ予測式に着目し,直轄国道でのFWD調査結果を用いて当該予測式の精度検証を行うとともに,日本のFWD運用条件に即した予測式の構築について検討を行った.その結果,NCHRPの予測式はFWDの多層弾性理論(MLET)解析結果とは乖離する傾向にあることがわかった.また,日本のFWD運用条件に基づいたMLET解析結果を用いて,圧縮ひずみ予測式と温度補正式の定式化手法および圧縮ひずみによる損傷基準値を示した.

  • Chanoknunt SANGSOBHON, Hidehiko SEKIYA, Mizuki HAYAMA, Masanobu NAGAI
    2024 年 3 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     Bridges represent vital transportation infrastructure, and their malfunction can have serious repercussions. Monitoring bridge displacement is essential not only for maintenance but also for informing future design decisions. Unfortunately, conventional displacement measurement methods are complex. On the other hand, MEMS sensors are capable of field measurement with their compact size and the absence of a need for reference points. While extensive research has focused on understanding the displacement behavior of single-span bridges, it is equally important to investigate the behavior of multiple-span bridges. The present study used MEMS accelerometers to measure the displacement of a 3-span continuous box girder bridge with an orthotropic steel deck. The displacement responses measured using MEMS accelerometers were compared with strain responses to verify the accuracy of those.

  • 清水 惇, 昆野 修平, 箕浦 慎太郎, 新田 猛
    2024 年 3 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     鉄道線路を新規に建設する際,鉄道車両が問題なく安全に走行できるように建築限界の確認が必要である.特に新幹線軌道においては,建設される延長が長くなることや限られた期間内に鉄道車両の走行に対する支障物がないことの確認が必要であり,測定の省力化および効率化が求められている.筆者らはこれまでの研究において,列車巡視を支援するため,営業列車等の車両前頭に設置したステレオカメラ等から取得した画像を解析し,建築限界等の支障物の有無や沿線の環境変化を自動で検出する線路周辺画像解析エンジンを開発してきた.そこで本論文では,本エンジンを用いた新幹線軌道における建築限界の確認を目的として,建設中の新幹線軌道の複数の区間において画像取得試験を行い,本エンジンによる建築限界支障検知の精度検証を行った.

  • 松本 直樹, 石川 敏之, 公門 和樹, 上田 尚史
    2024 年 3 巻 1 号 p. 62-71
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     実橋で,塗膜割れが確認されると磁気探傷試験により疲労き裂の有無を確認するため,疲労き裂の検出は高コストとなる.そのため,低コストかつ遠隔で疲労き裂を検知できるモニタリング技術が求められている.本研究では,シングルボードコンピュータとひずみアンプシールドを用いて長期間のひずみ計測が可能な装置を製作し,LPWA(Low Power Wide Area)を用いてデータ転送する疲労き裂検知モニタリング手法を提案した.そして,製作した無線ひずみ計測機器を用いて,疲労試験にて疲労き裂の発生・進展をモニタリングした.その結果,製作した無線ひずみ計測機器で,荷重が作用していないひずみを経時的に計測することにより,疲労き裂の発生・進展がモニタリングできることを明らかにした.また,製作した無線ひずみ計測機器を用いて,電源が確保できない場所での長期間のモニタリングが可能であった.

  • 岩崎 拓, 森川 大輔, 林 泰正, 阿部 雅人, 深田 宰史
    2024 年 3 巻 1 号 p. 72-80
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     本研究では,福井県の山間部に位置する複合劣化を受けた実橋梁の鋼板接着補強RC床版を対象として,樹脂注入と舗装の打換えによる補修前後に行った小型FWDを用いた衝撃荷重載荷試験および数値解析からコンクリートの静弾性係数を推定し,補修の効果を評価した.その結果,樹脂注入・舗装打換え前後において,衝撃荷重載荷試験の結果を比較したところ,静弾性係数の推定値は増加し,樹脂注入による補修効果が確認された.また,衝撃荷重から静的荷重に変換する荷重変換係数を用いて,さらに,小型FWDを用いた衝撃荷重載荷試験と有限要素モデルを用いた構造解析により,コンクリート床版の劣化状態を静弾性係数の推定値により評価した.

  • Ngo Le Hoang Minh , 高田 巡, 北 翔太, 深田 宰史, 上野 敏幸, 鈴木 海風, 三坂 岳広, 伊勢野 暁彦
    2024 年 3 巻 1 号 p. 81-89
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     センサと無線伝送を活用した橋梁ヘルスモニタリングの課題の一つに電力確保がある.振動発電はその解決策になり得るが,実橋において振動発電デバイスが効率的に発電できる設置位置を短時間で選定することは困難である.そこで本研究では,固有振動解析によりターゲットとする振動モードおよび振動発電デバイスの設置位置候補を抽出したあと,試験車走行試験を行い,光学振動計測技術を用いて,設置位置候補の中から効率的な発電ができる設置位置の検討を行った.また,同時に,本研究で用いた光学振動計測技術の本橋梁部材への適用性について明らかにした.さらに,本技術により抽出した設置位置で計測された加速度波形を用いて室内にて起振機試験を行い,振動発電デバイスの発電量を評価した.

  • 大坪 千夏, 寺山 一輝
    2024 年 3 巻 1 号 p. 90-98
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     地方自治体では,財政の逼迫・技術者不足が深刻化しており,すべての橋梁を健全な形で維持することは困難である.こうしたことから,近年,橋梁のトリアージによるメリハリのある維持管理が注目されている.本研究は,石川県輪島市をケーススタディ地域として,橋梁の補修による片側交互の通行規制によって生じる道路利用者の社会的損失を計測・評価することを目的とする.橋梁の通行規制前後で交通量配分を行い,道路利用者の社会的損失(総旅行時間の変化)を計測した.その結果,通行規制によって社会的損失が生じない橋梁が複数存在することがわかった.また,劣化が進行している橋梁の中でも社会的損失に差があることを示した.本手法を適用することによって,橋梁の撤去・補修の優先順位(トリアージ)を定量的に評価できることが明らかとなった.

  • 品川 恒平, 大野 良輔
    2024 年 3 巻 1 号 p. 99-105
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     JR 東日本では軌道のメンテナンス作業の軽減を図ることを目的にTC型省力化軌道の敷設を進めている.2019年4月からは第5期工事として,首都圏本部のみならず横浜支社,八王子支社,大宮支社の東京30km圏内の主要線区に敷設を拡大している.横浜支社管内の敷設区間の中でも川崎保線技術センター管内の一部区間が50kgNレールであることから,60kgレールに変更して軌道の耐力を向上させる重軌条化をTC型省力化軌道敷設工事と併せて実施している.重軌条化施工区間は主にロングレール区間であり,また横取り装置,伸縮継目,踏切,橋りょうなどが介在していることから重軌条化を行う上で施工方法を入念に検討する必要があった.本稿ではこれまで実施してきた施工に関する主な取組みについて報告する.

  • 小瀬 喜巳, 三宅 浩一郎, 細田 暁, 齋藤 誠, 宇津木 浩行
    2024 年 3 巻 1 号 p. 106-115
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     臨海部や感潮河川付近に位置する都市鉄道トンネルにおいて海水に由来する塩化物イオン混じりの漏水の影響によって剥離剥落や鉄筋腐食の変状が発生している.首都圏における営業線内では制約条件として短い施工時間や狭い施工スペースが挙げられ,従来の亜硝酸塩系の混和材を配合したポリマーセメントモルタルによる断面修復工法を営業線で適用する場合には吹付速度や吹付厚さなどの施工性や付着性に課題が残る.そのため繊維入りポリマーセメントモルタルにカルシウムアルミネート系混和材の急硬材と塩分固定材を配合し,液体可塑剤を吹付設備の先端ノズル手前で添加する2材ショット方式の新たな断面修復工法を開発した.その結果,従来工法と比較して遮塩性は同程度で,施工性や付着性などの性能が向上したことから工事費の30%縮減が可能となった.

  • 後藤 幹尚, 岩波 光保, 千々和 伸浩, 津野 和宏
    2024 年 3 巻 1 号 p. 116-125
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     跨線橋の定期点検では,鉄道の運行が終了する夜間に実施する場合が多く,点検に要する資機材等の搬入出や,き電設備等への防護設置等の時間も要するため,点検実務に割ける時間が少ない.その上,各鉄道事業者による軌道や電気設備等の保守作業もあることから,橋梁点検を実施できる日の決定には制約を受ける.また,架け払いの足場などを用いて点検を実施する場合には,橋梁点検員以外の人員が多く必要となり,その結果,点検以外の費用も多く要する等の課題もある.これらの課題に対して効率的に取組む必要があり,その一つとして新技術の活用が想定されるが,これのみでは改善できる範囲に限りがある.そこで本論文は,跨線橋の定期点検における予算編成から点検の実務までにおいて取り組んできた効率化の実態を示すとともに,今後の更なる効率化に向けた展開についても示した.

  • 内田 慎哉, 山本 紗衣, 土井 真郷, 桃木 昌平
    2024 年 3 巻 1 号 p. 126-135
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     張出し片持架設工法で建設中のPC箱桁橋を対象に,合成曲げ応力が異なる4段階(閉合前)において,マルチチャンネル衝撃弾性波法による計測を行い,表面波の伝搬特性(位相速度・振幅減衰)を算出した.その結果,合成曲げ応力と表面波の伝搬特性(位相速度・振幅減衰)は,極めて相関が高いことがわかった.この結果を参考に,合成曲げ応力を非破壊で評価する手法を提言し,架設後(閉合後)に,再度計測を行うことで,本手法の妥当性も検証した.その結果,振幅減衰の推定誤差は大きいものの,位相速度から推定した合成曲げ応力と設計上のそれは概ね等しいことがわかった.したがって,マルチチャンネル衝撃弾性波法により得られる位相速度を活用することで,PC箱桁橋に作用する合成曲げ応力を非破壊で精度よく推定できることが明らかとなった.

  • 荒川 雄介, 家田 仁
    2024 年 3 巻 1 号 p. 136-144
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     戦後急速に整備が進められた下水道施設(とりわけ40万km以上にも及ぶ管渠)は,今後急速に老朽化が進むことが懸念されるが,人口減少も進む中で下水道を整備・管理する自治体の置かれた状況(人員・技術・予算など)は一般的に極めて厳しい.また,その運用が自治体の采配に委ねられてきたこともあって,下水道管理の状況は財政面のみならず技術的側面も含めて自治体によってまちまちでもある.そこで本研究では,下水道運営の諸相に関わる6つの指標を用いて全国の自治体を6つのグループに類型化し,それぞれのグループの特性を俯瞰的に把握した.その上で,各グループから計9カ所のサンプル自治体を選んで詳細調査を実施し,各グループが共通的して抱える課題を明らかにして,今後の改善方策を論じるとともに,あわせて個別性の高い問題を考察した.また,下水道に関わる各種の重要数値や統計のあり方など,全国に共通する課題について論じた.

  • 酒井 宏治
    2024 年 3 巻 1 号 p. 145-153
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     水道管路のインフラメンテナンスを推進していくためには,統計データに基づき,その効率的な体制を提案できることが望ましい.本研究では,平成13年度から令和2年度の過去20年間の間に,一度も事業体の合併を行わず,かつ給水区域面積に変化がない事業体を定常環境事業体として抽出して分析し,指標値の推移と変数間の相関関係を分析した.さらに,その中から無効率及び超過管率が改善した事業体群の傾向を分析した.その結果,改善傾向があった事業体群では,給水収益が増加している期を捉えて工事延長を増加させたこと,無効率改善事業体では,ダクタイル管率の増加,超過管率改善事業体では平均勤続年数が貢献した可能性があることが分かった.

  • 山本 清仁, 金山 素平, 後藤 一稀, 倉島 栄一, 佐藤 勇樹, 鈴木 健史, 高橋 範明
    2024 年 3 巻 1 号 p. 154-161
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     ポリマーセメントモルタル(PCM)における気中硬化時のひずみ挙動と硬化後の一軸圧縮特性について調べた.膨張材と収縮低減剤の添加量を変えた供試体を作製し,気中曝露における硬化時のひずみを計測した.また,硬化時のひずみ計測を行った供試体を一軸圧縮し,荷重とひずみを計測した.その結果より,膨張材と収縮低減剤の両方を添加した供試体について,収縮低減剤が空隙水の毛管力を低減させる効果により材齢5日程度までは,膨張材の作用を促進する傾向にあるが,その後は膨張材と収縮低減剤の相互作用による微小空隙の生成過程により膨張が抑制されると考えられる.また,膨張材と収縮低減剤の両方を標準量添加した場合,材料内部の空隙量の減少と密度増加により圧縮強度と弾性係数が増加すると考えられる.

  • 原田 紹臣, 藤本 将光, 水山 高久, 松井 保
    2024 年 3 巻 1 号 p. 162-171
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     道路土工構造物の維持管理は,これまで,定期点検結果に基づく事後保全としての措置が一般的に主流であった.一方で,公共構造物の予防保全を考慮したライフサイクルコスト(LCC)縮減の取り組みが注目されている.しかしながら,土構造物における変状や劣化機構は十分に解明されておらず,時間軸を考慮した劣化予測等の維持管理に関する具体的な方法論は明確にはされていない.本研究では,道路土工構造物の予防保全を考慮した新しいアプローチと具体的な実践方法を提案する.その際,実務における実用性を考慮し,点検の高度化,劣化予測やLCC最適化の具体的な手法を提案している.さらに,環境条件の違いによる影響等を考慮した維持(延命措置)や部材性能の向上による改築(長寿命化)工事の有効性や妥当性に対する評価方法について提案している.

  • 松浦 弦三郎, 今井 龍一, 中村 健二, 塚田 義典, 麻生 紀子
    2024 年 3 巻 1 号 p. 172-181
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     我が国では,安全運転支援や自動運転支援の実現に向けて,高精度な道路地図の整備が進められている.道路の形状は,新設工事や改良工事等で日々変化するため,地図更新による鮮度の確保が極めて重要である.一方,近年ではi-Constructionや情報通信技術による道路工事や点検によって,道路の3次元形状を表現するデータが蓄積されている.この蓄積されたデータを用いて高精度な道路地図を自動調製・更新できれば,持続可能なインフラメンテナンスの実現に向けた道路管理の高度化や安全運転支援の実現に寄与できる.本研究では,道路舗装のICT施工履歴データによる3次元モデルの生成手法を改良し,その3次元モデルと高精度な道路地図とを重畳することで,これらの間に親和性があることを確認した.そして,道路地図の調製への適用可能性のあることを明らかにした.

  • 鈴木 和也, 水野 光一朗, 保坂 直道
    2024 年 3 巻 1 号 p. 182-191
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     東日本旅客鉄道株式会社では,坑数が約1,200坑,延長が約950kmの地下・トンネル構造物を維持管理している.本稿では,これらの地下・トンネル構造物の維持管理の特徴と制度について示した.次に,地下・トンネル構造物の措置のうち,補修・補強に着目し,これらに携わる技術者が,実務に活用できるように既往の技術資料を改訂した経緯と改訂した技術資料の特徴や内容について示した.そして,改訂した技術資料により期待される効果について示した.

  • 井田 達郎, 田中 大介, 大宮 勲
    2024 年 3 巻 1 号 p. 192-195
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     幾度も舗装を打ち換えたことにより,床版上面のコンクリート表面と上側鉄筋表面との距離(以下,かぶり)が舗装切削機により削られ,場合によっては上部鉄筋が露出する事象が確認されている.首都高速道路では,かぶりが薄くなった場合や鉄筋が露出している場合の対応として,新たに開発した上面増厚工法による補修を実施している.上面増厚工法による補修範囲を決定するための調査手法として,電磁波レーダーを搭載した車両に着目し,実橋への適用性を検討した.本稿では,電磁波レーダーを掲載した車両による計測と分析の手法を概説するとともに,実橋への適用性の検討結果について報告する.

  • 大島 大輝, 薄井 裕佑, 帰山 直大
    2024 年 3 巻 1 号 p. 196-202
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     生産年齢人口の減少やデジタル社会への転換など,鉄道業界を取り巻く社会環境や価値観は変化しており,設備メンテナンス部門では,これまで以上に従事員を安定的に確保することが難しくなると予想される.このような状況の中で,鉄道が持続的成長を果たすためには生産性の高い業務執行体制を構築する必要がある.そこで本研究では,MTT(マルチプルタイタンパ)による施工不能箇所に着目し,人力作業の省略に向けた検証を行った.その結果,不能箇所およびMTT扛上量の関係において,一定の条件を満たすことで人力作業を省略しても線路状態は悪化せず維持できることが示された.

  • 岸 滋, 滝沢 聡, 村岡 洋, 松尾 伸二
    2024 年 3 巻 1 号 p. 203-212
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     鉄道河川橋梁では,激甚化する豪雨に伴い洗掘災害が多く発生している.本稿では,洗掘被害を受けた橋梁の早期復旧に向けて,橋脚や橋桁を再利用して復旧する方法を検討した.まず現地調査により,橋桁全体の変位や支点部の変状,橋脚躯体の亀裂や変形の有無,衝撃振動試験で得られる固有振動数の被災前後の変化などを確認し,橋梁全体の健全度を判定する.現地調査により著しい健全度の低下が無ければ,予備載荷試験や静的載荷試験,走行・制動試験を行い,橋脚の沈下量や傾斜角を計測し,橋脚基礎の安定性や支持性能を確認する.さらに,恒久的な洗掘防止と支持性能向上として,シートパイル基礎工や薬液注入工などの対策を行う.なお一連の復旧過程については,過去の復旧事例を通じて示した.

  • 窪田 利幸, 平林 雅也, 吉川 正治
    2024 年 3 巻 1 号 p. 213-222
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     豪雨等により河川に架かる鉄道橋の鋼桁が落橋・流出する場合があるが,その復旧にあたっては,鋼桁を再利用することで供用再開を早めることが可能となる.実際に落橋して主桁が変形した鋼桁において,解析や試運転列車での実橋測定などにより安全性を確認することで再利用を可能にした事例を示した.また,落橋・流出した鋼桁の再利用可否を判断する際に参考としている「鋼桁の再利用判定基準(案)」を見直した.

  • 宇田 誠, 西脇 敬一, 日下 敦, 砂金 伸治, 杉田 崇
    2024 年 3 巻 1 号 p. 223-234
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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     供用後,長期間経過したトンネルでは,老朽化により材質劣化や漏水などによる覆工の変状が多く発生し,利用者の安全性の確保が課題となる場合がある.このようなトンネルでは,通行止め等による社会的な影響を考慮すると,供用しながら覆工の打替え等の更新工事を行うことが望ましく,今後において対応が必要になるケースの増加が見込まれている.一方,現行のトンネルの更新工事においては,施工中における利用者の安全の確保が必要であるとともに,経済性に関する課題や工期が長いなど,合理的な施工方法の確立には多くの課題を抱えている.このため,筆者らは,トンネルの合理的な更新に資する工法の検討とともに,更新を行うにあたっての根幹となるトンネル構造に求められる力学的特性の研究を行った.本稿では,山岳工法で建設された道路トンネルの更新工事で想定される要求性能を述べるとともに検討した覆工切削型の更新工法の特徴や適用性,および要求性能との関連性を考察した結果について述べる.

  • 松本 康寿, 平松 孝晋, 上西 大樹
    2024 年 3 巻 1 号 p. 235-241
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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     昨今,技能労働者の高齢化や労働志向の変化にともない現場の労働力は不足しており,線路内作業の効率化は国内の鉄道事業者にとって共通の喫緊の課題となっている.そこで,JR西日本では生産性向上と働き方改革の一環として,検査業務をセンサや機械による手法に置き換える「地上検査の車上化」に取り組んでいる.その手段の一つとして,MMS(Mobile Mapping System)技術の鉄道への適用を進め,2021年から在来線および新幹線の全線での計測を開始している.今回,2カ年の運用を通じて,社内の各系統において普及,活用が進んだことにより,鉄道分野におけるインフラメンテナンスのデジタル化に対し一定の成果が得られたことから,MMSの鉄道分野への適用および現場での利活用事例を紹介する.

  • 堀内 一平, 岡田 真治
    2024 年 3 巻 1 号 p. 242-247
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
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     大糸線信濃常盤構内21号分岐器のヒール部(トングレール後端継目)における通り変位(線路の水平方向の歪み)は,2020年6月頃に管理目標値を超過した.さらに,列車動揺検査においても左右動の管理目標値を超過する状態となり,乗り心地への影響も生じていた.通り変位を解消するため,分岐マクラギの交換を含む通り整正やスイッチマルタイ(以下SW-MTT、分岐器で線路の突き固めを行う機械)施工を実施したが,いずれも効果が持続せず,通り変位の解消には至らなかった.そこで,通り変位の再発原因について,分岐器前後のレール遊間(レールの温度伸縮に備えて継目部に設ける間隔)不足による軸力発生に着目し,ライニング作業(マルタイによる通り整正)と併せて分岐器前後の遊間整正を実施し,通り変位を抜本的に解消した取組みの成果について報告する.

  • 鵜澤 星一, 髙山 充直, 塚原 高志, 池田 泰博
    2024 年 3 巻 1 号 p. 248-257
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     JR 東日本では,海岸線から概ね1km以内に位置する鉄道コンクリート橋梁で,塩害による変状が多く発生している.主な対策として,PC橋には電気防食工法,RC橋には塩化物イオン吸着剤を用いた断面修復工法を適用している.これは,各工法について対策後20年超の経過観察結果から,工法の長期耐久性評価と塩害抑制効果などを総合的に勘案し,当社における塩害環境下の橋梁に対する維持管理の基本的な考え方として整理した結果である.以下に,これまでの取り組み内容を示し,提案する維持管理方針と今後の塩害に対する維持管理の方向性を示す.

  • 島田 和則, 堀 雄一郎
    2024 年 3 巻 1 号 p. 258-264
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     特殊分岐器(可動ダイヤモンドクロッシング,シングルスリップスイッチ,ダブルスリップスイッチ)は,構成する部材が多く,かつ構造が複雑であることから,分岐器管理の中でも特に保守に苦慮し,たびたび設備故障を発生させている.JR東日本(以下,当社)においては,これら特殊分岐器の設備故障防止に向けて,特殊分岐器の構造強化対策の実施及び撤去の推進,管理標準等の策定,更には近年発生した事象に対して原因の究明,対策の検討並びに再発防止策を図った.その結果,当社東京圏における設備故障の発生件数は,約20年前と比較して約84%減少し,特殊分岐器1組当たりの設備故障発生率は,約20年前の約49%から約10%まで減少した.

  • 平山 繁幸, 加藤 舜大, 村野 益巳, 唐沢 博一, 児玉 智也, 白旗 弘実, 永井 政伸
    2024 年 3 巻 1 号 p. 265-272
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     大型車交通量の多い路線の鋼床版橋梁では,デッキプレートとUリブの溶接部にデッキ進展き裂およびビード進展き裂が発生する.首都高速道路では,デッキ進展き裂は鋼床版SAUTによって深さ6mm以上のき裂を,ビード進展き裂は溶接ビード表面に現れたき裂を目視で検出しているのが現状である.き裂をより浅い段階で検出することができれば,検出したき裂に対する補修対策の選択肢が増える.本研究では,超音波フェーズドアレイに着目し,デッキ進展き裂およびビード進展き裂を発生の初期段階で検出するための専用の探傷装置を開発し,デッキ進展き裂およびビード進展き裂を導入した試験体を用いて検出精度の検証を行った.その結果,本装置によって従来の超音波探傷技術よりも浅いき裂を検出できることを確認した.

  • 浅野 和香奈, 井林 康, 岩城 一郎
    2024 年 3 巻 1 号 p. 273-281
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     福島県平田村では,住民による簡易点検結果と記録簿により,定期点検と次の定期点検までの5年間の橋梁の変状を把握している.住民の簡易点検データを維持管理に活用するためには,点検結果を手作業でデータベースに入力する必要があり,データ整理に時間を要するという課題がある.これに対し,点検データの効率的な活用を目指して,簡易橋梁点検チェックシートと同様の項目で点検を行うことができるアプリケーションの構築を行った.点検者がいる位置情報を自動で取得し,カメラ機能を立ち上げて橋梁の状態を写真に収めることができる.アプリケーションを用いた簡易点検の円滑度合,戸惑った操作,追加してほしい機能等についてアンケート及びヒアリングを行い,改善や検討すべき点を明らかにした.

  • 佐々木 舞緒, 仲村 成貴
    2024 年 3 巻 1 号 p. 282-288
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/27
    ジャーナル フリー

     道路施設の点検は2019年度より2巡目に入り,点検結果や診断等に関するデータが蓄積されてきた.また,整備が進んできたデータベースの活用が期待されている.一方で,市町村では修繕等の措置についての着手および完了率が低水準であることや災害対応力の低下が指摘されている.本研究では,道路橋点検や避難施設等のデータを用いて,強地震動の作用により被災して通行不可となった道路橋が,避難者の避難距離に及ぼす影響を検討した.埼玉県内の市町村が管理する道路橋を対象として解析した結果,道路橋の通行不可により到達圏の面積が4割以上減少する避難施設があることが明らかとなった.本研究により,データベースの活用事例および修繕等を促進する検討事例を示すことができた.

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