インフラメンテナンス実践研究論文集
Online ISSN : 2436-777X
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実践研究論文集
  • 齊藤 準平
    2025 年4 巻1 号 p. 1-10
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     橋梁の予防保全においてその健全度の低下を精度よく予測することは重要である.橋梁の健全度は交通量の増加に伴い低下するのが一般的であるが,ある特定の気象要素の基では橋梁の健全度低下に交通状況の影響が顕れない場合があることが報告されている.本研究では日本全国の国道のコンクリート道路橋533橋を対象に,健全度と交通状況(日交通量,日大型車交通量,大型車混入率)との関係に対する複数の気象要素の影響分析を行い,その影響によって交通状況に伴う健全度低下が顕れない(潜在化する)気象要素とその条件を検討した.その結果,潜在化には年最低気温が大きく影響し,その目安が-5℃以下であることがわかった.

  • 後藤 幹尚, 藤森 竣平, 近藤 冬東, 岩波 光保, 千々和 伸浩, 津野 和宏
    2025 年4 巻1 号 p. 11-20
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     中小河川に架かる橋梁の定期点検では,橋梁点検車を用いる場合が多く,特に車道の有効幅員が6.0m未満の場合には,一時的な全面通行止めを伴う交通規制が必要となり,交通管理者や消防への事務手続きの他に,地域住民に対する事前の広報が必要となっている.また,点検時には調書に変状等をスケッチした上でデジタル画像により記録し,後日PCを用いて点検調書を作成している.橋梁の定期点検の実務では,事前準備から点検調書作成までに多くの労力が必要であり,効率的な定期点検が求められている.

     そこで本稿は,都市部の中小河川に架かる橋梁を対象として,空中ドローンと画像診断サービスの導入による効率的な定期点検を目指し,これらの導入に対する課題と,この課題への対応について報告する.

  • 清水 隆史, 内海 天翼, 野々村 敏博, 玻座真 翼
    2025 年4 巻1 号 p. 21-28
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     東名高速道路逢妻女川避溢橋(単純PCT桁橋,桁長36.49m)は,供用後約55年経過した単純PCT桁橋である.上部構造の健全性を把握するためPCグラウト充填状況に関する詳細調査が実施され,複数の調査対象箇所でグラウト充填不足が確認されたことから,2023年にフェールセーフとして設置する外ケーブル補強設計を実施した.ここでは,外ケーブル補強にあたり,過補強あるいは補強不足とならないような適切な補強量を検討した実務での設計事例を紹介する.

  • 橋本 和明, 川口 貴之, 成澤 和宏, 相田 真人, 小林 義宗
    2025 年4 巻1 号 p. 29-37
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     北海道内のため池の中には,安全性の評価が行われていない個人所有の小規模なため池が数多く存在するが,これらには十分な検討費用がかけられない場合が多いため,補修の必要性や優先性の把握が困難な状況となっている.本研究では,ため池堤体の現況安定性評価で一般的に行われている比較的大がかりな地質調査を行わずに堤体土のせん断強度(cφ)を決定し,堤体の安定性評価を簡易に行う手法の提案を試みた.北海道内でこれまで地質調査を実施したため池の中から34箇所を抽出して検討した結果,簡易動的コーン貫入試験結果を用いて堤体土のせん断強度を決定し,堤体の安定性評価を簡易に行うことは十分に可能との結論を得た.この結果は,農業インフラの一つである小規模な農業用ため池のメンテナンス性向上に寄与するものと考えている.

  • 小瀬 喜巳, 細田 暁, 齋藤 誠, 宇津木 浩行
    2025 年4 巻1 号 p. 38-47
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     臨海部付近に位置する都市トンネルにおいて海水混じりの漏水に起因した塩害劣化の進行が著しく,維持管理に苦慮している.そのため,繊維入りポリマーセメントモルタルにカルシウムアルミネート系混和材の急硬材と塩分固定材を配合し,液体可塑剤を吹付設備の先端ノズル手前で添加する新たな吹付け補修工法を開発した.さらに,実構造物を用いて,施工後の補修部周辺におけるマクロセル腐食による再劣化に対する抑制効果を自然電位測定によって確認した.その結果,補修から24ヶ月後も腐食電流は制限され,再劣化の傾向はみられなかった.その後,鉄道営業線内における実構造物での補修工事に適用した.その結果,補修箇所に初期ひび割れなどの変状は発生せず,十分な付着強度も確認され,かつ鉄道営業線工事において約20%の工事費縮減を実現した.

  • 田井 政行, 白旗 弘実, 青木 工, 芦田 洋祐, 髙木 千太郎
    2025 年4 巻1 号 p. 48-57
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     本研究では,橋梁点検における「損傷・劣化の見過ごし,見誤り」や「損傷程度の誤判定」を防ぎ,信頼性の高い点検実施のために,デジタル野帳を開発し,実橋梁での実装検証を行った.デジタル野帳を用いることで,タブレット端末に構築した橋梁3Dモデル上に,類似橋梁の損傷事例や,損傷・変状が生じやすい個所を表示することができるため,従来手法と比べて塗膜割れの点検漏れ防止に有効である傾向が得られた.また,点検1個所当たりの作業時間や点検調書の作成時間についても,従来手法と比較して短くなる傾向を示しており,デジタル野帳を使用することで,点検精度の向上による信頼性の確保と作業の効率化に有効である可能性を示した.

  • 木下 義昭
    2025 年4 巻1 号 p. 58-68
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     市町村は約7割の橋梁を管理しているが,修繕実施状況は措置完了率62%に留まっている.2023年度において我が国の橋梁定期点検は2巡目を完了しているが,財源不足を抱える市町村においては自主財源を多く必要とする定期点検のコスト縮減は重要である.本稿では,玉名市役所における橋梁定期点検の実務を事例とし,法令に基づき定期点検が今後も繰り返される点に着眼し,1巡目から3巡目における点検業務の段階的な改善を立案した上で,1巡目での記録の拡充により2巡目において劣化進行有無の調査を実践するなど,最前線の実務者の立場で1巡目から3巡目までの定期点検を段階的に改善しながらスパイラアップしたボトムアップによる実務改善のプロセスについて述べるとともに,3巡目点検時において橋梁定期点検費用を約3割縮減した最前線の実務事例について示す.

  • 山田 凱登, 遠藤 敏雄, 森 弘継, 三浦 幸治, 小野 憲司
    2025 年4 巻1 号 p. 69-78
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     軟弱な埋め立て地盤上に整備された東京国際空港では,空港機能を適切に維持するために,滑走路や誘導路等の舗装の標高を計測・管理する夜間測量作業(空港舗装動態観測)を過去30年以上にわたって継続して実施してきた.しかし,近年の働き方改革に伴う労働環境の改善や労働力不足への対応が求められる中で,夜間の人力による測量作業の軽減が重要な課題となっている.本研究は,空港制限区域への夜間の人の立ち入りを最小限度にとどめることが可能な新たな測量手法の検討とその空港舗装動態観測への具体の適用方法を提案することを通じて,東京国際空港における夜間測量作業の最小化と,併せて空港舗装動態観測データのデジタル化を図り,もって空港舗装維持管理業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の一助とすることを目的とする.

  • 廣尾 智彰, 中村 貴久, 河野 昭子
    2025 年4 巻1 号 p. 79-84
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     軌道構造と支持構造が同一の区間でも,つき固め作業後に軌道変位が徐々に元の形状に戻る事象が確認されているが,そのメカニズムの詳細は明らかになっていない.軌道検測データより,本事象の実態を調査した結果,マルチプルタイタンパよりもハンドタイタンパによるつき固め作業後に本事象が生じやすいことがわかった.また,本事象の発生メカニズムを検討するため,バラスト軌道の1/5縮尺模型を用いて,つき固め作業後に移動載荷試験を実施した.その結果,軌道のこう上量が局所的に大きい箇所で局所的な沈下が大きくなり,こう上量が局所的に大きくない場合は局所的な沈下が抑制されることがわかった.さらに,不連続体解析の結果,こう上量が大きい場合につき固め作業後のまくらぎ下100mmまでのバラスト密度が低下し,沈下が大きくなることがわかった.

  • 栄 翔太, 横井 芳輝, 藤田 憲二, 河野 晴彦, 後藤 稜平, 溝上 善昭, 石川 敏之
    2025 年4 巻1 号 p. 85-94
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     センターステイは,大規模地震時に損傷を許容する部材であるが,来島海峡第一大橋では疲労による損傷も発生している.このため,定期的に近接目視を行うとともに超音波探傷による検査を行っている.しかし,これらの間欠的な点検等ではき裂の発生や進展,破断について早期に把握することは困難である.一方で,近年,IoT技術を活用した無線ひずみ計測機器による疲労き裂の発生・進展をモニタリングする手法も提案されている.そこで,センターステイの常時遠隔監視手法の確立のため,実橋のセンターステイロッドに無線ひずみ計測機器を設置し,WEBプラットフォーム上で監視を行った.その結果,監視中にセンターステイロッドの破断が生じ,破断の兆候のモニタリング,破断の検知が可能であることを確認した.

  • 三森 章太, 木ノ本 剛, 日和 裕介, 和田 尚人, 後藤 幹尚, 岩波 光保
    2025 年4 巻1 号 p. 95-104
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     我が国の道路橋は,高度経済成長期に集中的に整備され,今後急速に高齢化を迎える.道路橋のうち鋼橋では点検によって疲労き裂が確認されることがある.疲労き裂の調査は,磁粉探傷試験による調査が一般的である.近年,長距離無線通信が可能なLPWA(Low Power Wide Area)無線モジュールが開発されているが,実橋で適用された報告事例は少ない.そこで,本論文では,交通規制や現場作業に制約がある実橋で発生した疲労き裂に対し,動ひずみ計測を行い,発生原因を推定した.また,疲労き裂の対策を施す前後を含んだLPWAによるモニタリングを行い,対策効果について検証した.計測の結果,発生原因の推定と対策効果の確認が可能であることが示され,LPWAを活用した計測の有効性が確認できた.

  • 小田 収平, 太田 一行, 小田 耕平, 荒尾 慎司
    2025 年4 巻1 号 p. 105-114
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     本技術の効用は,合流式下水道緊急改善事業後も管路システムの課題で残る雨天時越流水(CSO)問題の解決,豪雨流量の不完全な分水制御で機電設備や貯留管増設等の対応で計画が進む防災事業の改善である.著者らは既往研究において,分水施設での流量調整槽の複数化によって分水制御の管理精度を格段に高める技術を考案し,この流量制御管理技術に基づいて公共用水域環境の保全対応を図る管路システムを提案した.また,豪雨時にも正確な自然分水で対象流域の治水安全を図れる設計事例を提示し,その水理現象を数値流体力学解析で立証してきた.本稿はこれ等を受け,分水施設の付属設備(スクリーン,阻流壁)の効果を新たに追加検証し,新たな分水施設の設計法のマニュアル化に向けた要点を総合的に取り纏める.

  • 佐々木 良, 北村 啓太朗, 松本 康寿
    2025 年4 巻1 号 p. 115-123
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     実鉄道空間のセンシングデータと線路情報からなるサイバー空間の構築は,在来線の大半を占める土構造物(以下,土工等設備という)のメンテナンス業務における生産性向上に寄与する.本研究では,土工等設備の系統分類表を作成し,反射強度表示の三次元点群データを閲覧する方法で各種設備が識別可能かどうかを検証した.識別した設備には面・線構造に応じたポイント,ラインのベクターデータを生成し,共通表記の名称ラベルを付与した.このラベルデータは,時間軸において設備検査・維持管理の経時記録と現在,次の計測データをつなぐ役割に加え,顕著な異常領域の情報可視化やキロ程と同じ固有識別情報としてコミュニケーションの円滑化にも役立つと期待する.

  • 野中 潔, 住吉 裕次郎, 森 寛晃, 池田 茜
    2025 年4 巻1 号 p. 124-129
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     温度履歴を無線通信で取得できる温度センサRFIDタグを利用した養生管理システムをコンクリート舗装打換え工に適用し,初期目地切削作業時期の判断指標として養生時の積算温度を活用することを検討した.切削作業時の積算温度は初期目地切削の目地美観や作業性と強い関連性があることが確認された.また,温度タグを鋼製型枠の内側に貼り付けて使用する方法により,版体の外観への影響を残さず撤去できることを確認した.初期目地切削作業の工程管理に養生時の温度履歴を活用することで,施工品質の安定,現場関係者の待機時間の短縮に繋がると考えられる.

  • 小島 太朗, 家田 仁
    2025 年4 巻1 号 p. 130-139
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     事業費の変動は,目に見えない地盤の不確実性等のため,とりわけ地盤に起因する要因が多いとされている.そこで,本研究では,まず,道路事業を対象に事業費の地盤に起因する変動特性を定量的に把握し,その実態をつかむことを目的に,事業評価の再評価レポート(518件)等による統計的分析を行った.分析結果より,事業費増加の約2/3は地盤に起因することと,その増加特性は対数正規分布で近似可能であることを示した.また,増加の要因の約2/3は,地盤の強度,岩盤の硬度等の地質条件の見込み違いによることと,その一方で,工種に応じた特徴的な要因が見られることを示した.次に,地形判断に関するケーススタディ調査及び事業費算定に関する海外事例調査を実施の上,インフラマネジメント方策の一環として,今後の対応方策のあり方に関する検討を行った.

  • 岩野 聡史, 後藤 幹尚, 後藤 朋子, 岩波 光保
    2025 年4 巻1 号 p. 140-146
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     筆者らは,大田区の橋梁の長寿命化修繕計画において,より確実で合理的なメンテナンスの実現を目的とした様々な工夫を検討して実践している.今回はこの工夫の一環として長寿命化修繕工事を計画した橋梁に対して,設計に必要となる情報を把握するために非破壊試験を適用した.しかし,一部の非破壊試験において,この構造物が適用できる条件を満足していなかったことから,非破壊試験による推定結果が構造物の実際の状態と一致していないことが長寿命化修繕工事において確認された.この状況に対して,有効な対策を検討するために再度異なる非破壊試験を適用した.本稿では,橋梁の維持管理への非破壊試験の適用についてこの失敗事例と活用事例を示し,非破壊試験を活用した取組みを実践する時の留意点を明らかにしたのでその結果について報告する.

  • 山本 清仁, 金山 素平, 倉島 栄一
    2025 年4 巻1 号 p. 147-156
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     混和材料を添加したポリマーセメントモルタルの一軸圧縮載荷において,AEセンサから得られる電圧波形の周波数領域振幅データの分布特性を把握した.まず,短時間フーリエ変換によりAEセンサ波形データから振幅スペクトルを算出した.次に,時間ごとの周波数領域の振幅データからヒストグラムと4つの統計量(平均振幅,標準偏差,歪度及び尖度)を算出した.その結果,軸応力が急減する破壊時のヒストグラムの頂点度数は減少し,頂点より振幅が大きい方の勾配は緩やかになることが観察された.また,最大体積ひずみから最大応力までの載荷段階においては,空隙の破壊やき裂の進展が増大すると考えられ,平均振幅が徐々に増加し,様々な規模のAEが発生することにより,振幅データ分布は変化し,標準偏差と歪度が増加するものと考えられる.

  • 松本 直樹, 石川 敏之
    2025 年4 巻1 号 p. 157-166
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     鋼床版の疲労損傷は目視が困難な箇所にも発生する.筆者らは,既往の研究において,疲労き裂が発生・進展すると,溶接によって導入された残留応力が解放され,内部応力のつり合いが変化し,荷重が作用していない時のひずみが変化することを利用して,静ひずみを経時的にモニタリングすることで疲労き裂を検出する方法を提案している.本研究では,実橋において計測可能な,Uリブ・横リブ交差部近傍のUリブ外側デッキプレート下面およびUリブ側面の静ひずみ計測により,鋼床版の目視点検が困難な箇所の一つであるデッキプレートと縦リブ・横リブ交差部から発生するデッキプレート貫通き裂の発生・進展を検出できることを明らかにした.また,IoTデータロガーを用いたモニタリングを実施し,低コストな疲労損傷モニタリングが可能であることを示した.

  • 大島 博之, 吉川 正治, 横井 太一, 下古谷 将義
    2025 年4 巻1 号 p. 167-174
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     JR 東日本では,疲労き裂など微細な損傷を捕捉するため,塗装塗替え時の足場を活用して近接目視検査を行っている.中路プレートガーダーの近接目視検査で,主桁下フランジの首溶接などに疲労損傷を発見した.主桁の疲労損傷は落橋に繋がる重大変状であり,列車の正常運行を脅かす恐れがあることから,同種の変状の未然防止が求められる.本取組みでは疲労損傷の発生原因を推定し,同じ損傷が発生しやすい構造上の特徴を整理し類似橋りょうの調査を行った.発生した疲労損傷に対しては補修を行うとともに,同種変状の予防のため補強構造を提案した.

  • 齋藤 和也, 塩永 亮介, 津田 誠, 廣井 幸夫
    2025 年4 巻1 号 p. 175-181
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     予算等のリソースが不足する地方公共団体では,健全性区分III橋梁を一律に補修対応することが困難であるため,新しい維持管理方法の確立が必要である.そこで,新しい評価軸『措置優先度値:K値』を導入し,詳細調査が必要と判断される橋梁の性能評価を行い,措置を補修/モニタリング/経過観察,健全性区分見直しに分類する新しい再評価方法を提案した.本法実現のためには,K値の決定要因,詳細検討領域の設定,耐荷性・耐久性の詳細調査方法・評価基準の確立が必要である.本研究では,特定の地方公共団体を対象とし,本法の有効性,実用性を検討し,課題を抽出した.その結果,K値の見える化,詳細調査が必要な橋梁の選定方法の可能性を示した.一方,K値配点比率や決定要素の再検討,詳細検討領域の設定方法の必要性が明らかとなった.

  • 山本 尚毅, 竹内 康, 高田 航希, 若林 由弥, 桑原 正明, 渡邉 一弘
    2025 年4 巻1 号 p. 182-190
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     道路管理者は予算制約のもと効率的な舗装管理が求められている.アスファルト舗装における1つの管理方針として,粒状路盤層を半永久的に使用し続け,アスコン層の打換えを繰り返すことが考えられる.こうした管理を実現するには,粒状路盤層にかかる負荷を一定以下に抑えることが重要であり,この負荷を把握する指標には,粒状路盤層上面の鉛直方向圧縮ひずみが考えられる.本研究では,直轄国道の同一路線内の路盤の圧縮ひずみが異なる3箇所で開削調査を行い,アスコン層および粒状路盤層の損傷度と路盤の圧縮ひずみの関係を検証した.検証の結果,圧縮ひずみが大きい箇所ほどアスコン層の損傷度は大きい傾向であった.一方,粒状路盤層は密度に差がみられなかったが,圧縮ひずみが大きい箇所ほど粒状路盤層以下の支持力が小さい傾向が確認された.

  • 小林 巧, 浅子 卓也, 大住 道生
    2025 年4 巻1 号 p. 191-200
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     道路橋等インフラの予防保全型維持管理の必要性が議論されている.しかし,道路橋支承部は事後保全的に維持管理が行われる場合が多い現状がある.本研究ではその現状を招く要因が支承部の劣化メカニズム及び劣化と機能の関係が明らかでない点にあると考え,それらを明らかにするための研究を行った.方法として橋梁に設置された鋼製支承を対象にその可動部に塩水を吹きかけることで腐食を促進し,温度変化に対する変位追随機能等の変化を約半年にわたりモニタリングした.その結果,腐食の進行に伴い変位追随量が変化するメカニズムが明らかとなり,加えて,支承可動部の腐食と変位追随機能の変化の関係を実証的に示した.

  • 景山 隆弘, 伊藤 壱記, 池本 宏文, 瀧野 千歳
    2025 年4 巻1 号 p. 201-208
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     鉄道のバラスト軌道において,隣接区間より路盤剛性が低下する箇所では,列車荷重によりバラスト軌道が局所的に沈下することがある.このような場合,保守頻度が増大しやすいため,路盤改良により路盤剛性を増加させる必要がある.また,夜間の列車の施工時間が短い都市部では,短時間で施工が可能な透水性スラグモルタルを用いた路盤改良工法が用いられる場合がある.しかし,適切な路盤改良厚を算定する方法がなく,これまでは列車荷重や路床の条件に関わらず一定の路盤改良厚が設定されていた.そこで,本研究では,透水性スラグモルタルを用いた路盤改良工法を構造物境界部に適用するため,列車荷重で生じる路盤変位の目標値を提案し,その目標値を満たす路盤改良厚を設計した.また,設計した路盤改良厚を基に路盤改良を実施し,路盤改良前後の高低変位進みを評価した.

  • 尾場瀬 美綺, 原田 隆郎, 大﨑 康弘, 大久保 克紀
    2025 年4 巻1 号 p. 209-219
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     高度成長期から集中的に建設された橋梁の老朽化の進展により,集約・撤去を老朽化対策の選択肢の一つとする動きが進められている.しかし,集約・撤去を判断するための具体的な評価指標は未だ示されていない.そこで本研究では,既存橋梁の集約・撤去を検討するための基礎検討として,既存橋梁が保有する撤去または継続利用に関する潜在的可能性(ポテンシャル)を定義し,撤去または継続利用のポテンシャルに関する評価項目を提案した.そして,各評価項目の評価区分と設定値を仮定し,茨城県の既存橋梁の一部に対してシミュレーションを行った結果,撤去ポテンシャルと継続利用ポテンシャルの差から,既存橋梁の撤去または継続利用の判断ができる可能性を示した.

  • 岸村 和守, 勝木 太
    2025 年4 巻1 号 p. 220-229
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     凍結防止剤散布量の多い地域の橋梁上部工及び下部工を対象として,第三者被害予防措置後の変状進行のシナリオを構築し,漏水,伝い水等の違いにより変状の進行には差異が見られた.また,変状進行の有無の違いによる累積損傷面積の増加勾配の違いを明らかにした.最小かぶりが規定された後に建設された橋梁はかぶり不足を原因とする変状が減少,設計基準に耐久性の検討が章立てられた後に建設された橋梁は耐久性検討に関連する変状が減少した可能性がある.かぶり不足を原因とする損傷判定区分の遷移を,マルコフ遷移確率行列による状態確率分布を用いて予測し,かぶり規定の有無による差異を明らかにした.

  • 高津 惣太, 穴吹 まほろ, 長内 公彦, 関谷 龍都, 青木 泰一郎, 後藤 幹尚, 永野 尚保, 岩波 光保
    2025 年4 巻1 号 p. 230-239
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     鉄筋コンクリート床版の診断に対して重要となる情報としては,ひびわれの有無,幅,長さ,方向の4つである.このため,点検作業においてはこれらの情報を正しく記録することが求められるが,その一方で,より忠実に記録するためには時間を要することとなる.特に点検作業が夜間に限定される跨線橋の場合においては,一般的な橋梁点検に比べて点検作業に確保できる時間が3割程度となる.したがって,より多くの情報を正しく記録するための点検手法を導入することが求められている.そこで本報告は,点検の作業時間や光源が限られる跨線橋の定期点検において,デジタル画像を活用した橋梁点検を実施し,この取組みからデジタル画像を取得するための機材の仕様や撮影条件の違いによる影響を明らかにするとともに,これらが画像診断サービスに与える影響について報告する.

  • 浅子 卓也, 小林 巧, 大住 道生
    2025 年4 巻1 号 p. 240-248
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
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     道路橋の支承部は上部構造と下部構造の設計上の境界条件を与える役割であり,可動を想定していた部位の機能が低下した際には設計の前提を破綻させ上下部構造に想定外の応力等を生じさせるおそれがある.そのため,支承部の点検時には,活荷重や温度変化等による上部構造の水平変位や回転変位に追随可能であることを確認する必要がある.しかし,一般に支承可動部の機能を外観目視のみで把握することが困難である.そこで本研究では,一支承線を構成する各支承相互の車両走行に対する応答変位の差に着目し,変位計等を用いて支承可動部の機能の状態を把握する方法について検討した.その結果,健全な場合は各支承の設置位置とその応答変位の間に相関関係があり,機能の低下に伴いその関係が変化することが明らかとなった.

  • 窪田 諭, 鶴田 駿, 安室 喜弘
    2025 年4 巻1 号 p. 249-257
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     建築物を適切に維持管理するためには,その建築物に備えられた施設や設備についての情報を把握することが必要であり,これには設計図書が必要とされる.しかし,設計図書が保管されていない建築物が多く存在することや法定の15年を超えた場合に設計図書が破棄される可能性があることに課題がある.本研究では,設計図書のない既存建築物の維持管理に資するために,地上型レーザスキャナやカメラなどを用いて作成した点群データを元に3次元モデルを構築し,それに属性情報を付与してBIMデータを構築した.そして,維持管理業務に係わる点検者と管理者間でデータの連携と共有を実現にするために,IFCデータを用いる活用方法を提案した.

  • 大森 将樹, 栗本 修史, 佐藤 幹, 山口 勝史, 早川 和也, 小西 真治
    2025 年4 巻1 号 p. 258-267
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     佐世保市にとんねる横丁と呼ばれる,戦中に作られた地下壕を現在も店舗等として活用している市場(戸尾市場)がある.店主は,地下壕の地主である佐世保市へ借地料を支払い,毎年審査を受けて店を運営している.地下壕の上には,統合によって廃校となり,今は,地元のNPO法人が運動施設として運営管理しているグラウンドや旧校舎,旧体育館があり,市街地に位置することもあって利用者は多い.廃校が決まるころから学校跡地をどのように活用するか市,地元,が継続的に協議・検討をしている.本論文では,市場を存続させた場合に問題となる地下壕の健全性を評価するために行った調査や評価の手法と結果について述べる.また,この歴史的な地下構造物を維持管理するための今後の点検手法等を提案する.

  • 川邉 翔平
    2025 年4 巻1 号 p. 268-274
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     ゴム引布製起伏堰に用いられるゴム引布の疲労破壊メカニズムについて,引張試験を実施し,実験的に検討した.その結果,補強繊維の継ぎがある接合部ではゴム引布の破断強度は低下し,疲労破壊に対する強度も小さくなった.また,ゴムや補強繊維の接着部を起点としてせん断はく離破壊が生じる可能性があり,その場合,補強繊維の疲労破壊よりも小さい応力レベル,または,少ない繰返し載荷回数で破壊に至る可能性がある.そのため,接合部近傍で外層ゴムの亀裂等が確認されたときはゴム引布の内部状態に注意し,接合方法等も併せて確認する必要があると考えられた.

  • 小山内 佳彦, 髙山 充直, 鵜澤 星一, 大嶋 啓
    2025 年4 巻1 号 p. 275-284
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     JR 東日本では,コンクリート橋梁に生じる凍害やアルカリシリカ反応(ASR)をはじめとする水の作用による変状対策として,諸種の防水塗膜を施工しているが,過去に施工された防水工の長期的な効果を経年調査した例は少なく,対策工の有効性や長期耐久性に影響を与える要因について整理されていなかった.

     そこで,机上調査および現場での実態調査を通して既存対策工の長期的な効果を評価し,対策工の課題を整理した.またそれらの結果を踏まえ,多様な現場条件に応じた対策方針を示すことができるよう,複数の条件から整理が可能なネットワーク図を取り入れた対策工の選定方法を検討した.

  • 長谷 啓司, 内田 慎哉, 森本 亮, 舘田 英里香
    2025 年4 巻1 号 p. 285-293
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     本研究では,道路橋RC床版での舗装打換工事の際に打音法を適用し,得られたスカログラムを,RC床版供試体で構築した事前学習済み畳み込みニューラルネットワークによる欠陥分類モデルで自動分類することを試みた.事前学習済みモデルにはVGG19_bnを,モデルの学習にはファインチューニングを利用している.道路橋RC床版で得られたスカログラムを分類した結果,健全部の正答率は98.4%と非常に高かったものの,欠陥部の正答率は46.8%と低かった.そのため,欠陥分類モデルの精度,特に欠陥部の精度について課題を残す結果になった.今後は,モデル構築において道路橋RC床版のデータを活用することで,十分な精度を担保できるように改善する必要がある.

  • 久保寺 貴彦, 郭 慶煥, 粟津 篤
    2025 年4 巻1 号 p. 294-302
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     地中レーダ探査において,埋設管の存在は,上に凸な曲線の縞の有無から画像判読する.現実には,この縞は明確でないことと小口径管の場合は見落としてしまうことが課題である.また,地中レーダは,水の影響を受けることがわかっており,降雨直後には基本的に探査が行われていない.著者らは,前者の課題についてアルミテープ付埋設管により有効性を示してきたが,本研究は,降雨直後を想定したアルミテープ付埋設管の画像判読への効果を検証するため,散水前後の舗装構造において地中レーダ探査を行った.この結果,舗装構造の含水比の上昇に伴う電気的性質の変化が見られたが,アルミテープ付埋設管は散水後でも画像判読の効果が保持されていた.

  • 伊藤 壱記, 高橋 成汰, 高橋 貴蔵, 大石 翼
    2025 年4 巻1 号 p. 303-307
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     スラブ軌道は定期的な保守を必要としない軌道として開発され,新幹線をはじめ,一部の在来線で適用されている.しかし,環境条件が厳しい箇所に敷設されたスラブ軌道の一部では,欠損や隙間等の劣化がてん充層に生じている.てん充層の劣化度は夜間に実施される欠損幅および隙間量の定期検査等で判定されている.劣化度の判定はてん充層外周部の情報のみで実施されており,てん充層内部の劣化状態を反映した定量的な指標は用いられていない.そこで,本研究では定量的な指標に基づいて劣化箇所を判定することを目的に,軌道支持剛性測定装置を用いた重錘落下試験によりてん充層の支持状態を評価する方法を検討した.その結果,軌道ばね係数および応答変位遅延時間を用いることで,てん充層の支持状態を評価できる可能性があることを確認した.

  • 寺下 善弘, 髙𣘺 信貴, 小納谷 優希, 伊藤 太初, 弟子丸 将
    2025 年4 巻1 号 p. 308-317
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     1979年にドイツから日本に導入されたテルミット溶接法は,普通鉄道では最も適用されている溶接法である.しかしながら,テルミット溶接部の曲げ疲労強度は,エンクローズアーク溶接法など他の溶接法に比べて低いなどの理由で,新幹線高速走行区間への適用はこれまで制限されてきた.一方で,新幹線の現場溶接法であるエンクローズアーク溶接法は,技術者不足などの課題がある.そこで本研究では,新幹線高速走行区間にテルミット溶接法を導入するために,曲げ疲労強度を向上させることができる工法を開発するとともに,開発した工法で施工した溶接部を高速走行区間に試験敷設し,溶接部の継手性能を調査した.その結果,累積通過トン数約7250万トン経過時点において,問題が発生することなく良好に推移していることを確認した.

  • 大野 健太郎, 岩野 聡史, 後藤 幹尚, 岩波 光保
    2025 年4 巻1 号 p. 318-327
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     本稿では,1960年代に架設されたPCポストテンションT桁橋のグラウト充填調査を超音波法により行った.グラウト充填の判断指標には,超音波法によるウェブ厚推定値と設計上のウェブ厚との誤差率を使用した.ウェブ厚推定には,超音波の縦波多重反射周波数による推定方法を新たに提案した.提案法では,ウェブ厚推定に使用する速度を透過法により取得した速度と,透過法の速度の±10%程度の変動を許容する場合の2種類を提案し,前者では誤差率10%未満,後者では誤差率1%未満をグラウト充填の判断基準とした.その結果,それぞれの手法の誤差率分布状況が対応し,グラウト充填の判断基準を超える箇所ではグラウトの充填不足が生じていることがX線透過法から確認され,本手法によりグラウト充填状況が誤差率分布として把握できることが示された.

  • 青島 亘佐, 常門 大祐
    2025 年4 巻1 号 p. 328-337
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     社会インフラの維持管理において,現状把握のための点検・調査の省力化及び効率化を図ることが近年の喫緊の課題の一つとなっている.この課題に対して,深層学習等のAIを用いた技術が注目を集めている.しかし,深層学習はデータの質と量への依存度が高く,実用に供する精度の達成がボトルネックとなっている.そこで,本稿では,下水道管渠を対象として深層学習による損傷検出の精度の向上を図り,そのうえで実務的な活用方法の検討を行った.検討の結果,深層学習を用いた損傷の検出が,下水道管渠のスクリーニング調査へ適用可能であることを確認できた.

  • 酒本 知幸, 野村 昌弘, 亀田 浩昭, 熊谷 善明, 青山 敏幸, 柳田 龍平, 深田 宰史
    2025 年4 巻1 号 p. 338-347
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     石川県の日本海沿岸部に位置し,塩害劣化を生じたプレテンションPC桁の架替えに伴い,外観変状の異なる2本の桁を選定して静的載荷試験を行った.その結果,目視により顕著な剥離,鉄筋腐食が見られない桁の方が,コンクリートの剥離とPC鋼材の腐食がかなり進行した桁に比べて耐荷力が低下していた.本研究では,両桁の外観変状と耐荷力との整合性を検討するため,材料調査および各種試験を行ったところ,両桁ともに塩害とASRによる複合劣化を生じていたことがわかった.これらの結果をもとに,塩害による鉄筋腐食が顕著な桁を対象として,数値解析からPC鋼材の腐食範囲と曲げ耐荷力の関係を明らかにした.

  • 林 和彦, 飛鷹 政亘, 酒井 凌, 福山 裕史, 渡井 忍
    2025 年4 巻1 号 p. 348-357
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     劣化した既設ガードレール支柱に対して,鋼管内部に鉄筋コンクリート部材を3つに分割挿入し,内部で1つの部材に接合して支柱を補強する方法を提案した.高さ10mmの台形状のせん断キーを用いた分割部材の一体化について検討した結果,部材の曲げ破壊まで達し,鋼材の強度と鋼材量を確保した場合において設計耐力を満足することができた.定性的な解析の結果,分割部材の鋼管による拘束が効果的に機能し,部材界面に設けられたせん断キーがせん断力を伝達することで,一体化部材として曲げモーメントに抵抗すると推察した.

  • Le Trung Kien , 湊 俊彦, 佐藤 健一, 野村 昌弘, 深田 宰史
    2025 年4 巻1 号 p. 358-367
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     本研究の対象橋梁は,1959年(2024年現在,65年経過)に竣工された橋長15.0mの単純鉄筋コンクリートT桁橋である.対象橋梁は,近接目視点検により,主桁,支承および下部構造において健全性 IIIの判定を受けた.このような劣化した中小規模の橋梁に対する補修・補強や撤去・更新の最終判断は,非常に難しい問題である.本研究では,このような問題に対して,コンクリートの材料調査からのアプローチに加え,試験車2台を用いた静的載荷試験と有限要素解析の両面から主桁の構造性能評価を行い,残存耐荷力を明らかにすることで補修・補強や撤去・更新の判断材料の一つを提供した.

  • 栗林 健一, 大島 竜二, 佐藤 保大, 久田 真, 皆川 浩, 宮本 慎太郎
    2025 年4 巻1 号 p. 368-377
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     国内の鉄道構造物は老朽化が進む中,高齢化・人口減少に伴う鉄道の運輸収入の減少や技術者不足が予想される今日において,鉄道構造物の維持管理は省力化が喫緊の課題となっている.本研究では,メンテナンスデータのデジタル化とサイバー空間上への集約化,さらにデジタルツイン技術を活用することによる維持管理手法の省力化を目標とし,現状の目視検査の課題を指摘し,AIを活用した画像認識技術による変状データの自動抽出・分類に関する方法,保守用車によるコンクリート表面の自動撮影の方法,そして3D GISプラットフォームによるデータ管理を提案した.

  • 梶山 大貴, 水野 光一朗, 保坂 直道, 向井 鷹則, 増井 洋介
    2025 年4 巻1 号 p. 378-386
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     東日本旅客鉄道株式会社では,膨大な数量の地下・トンネル構造物を維持管理している.これらのトンネルでは,供用開始後に軌道構造を支持する路盤に変状が発生することがある.トンネルの路盤部の安定性を維持するためには,デジタルツールを用いて路盤の変状を精度よく把握し,効率的に維持管理していく方法の確立が求められる.本稿では,鉄道トンネルの路盤の沈下に関する調査の効率化について,技術者による路盤の沈下に起因する変状の状態及び変化の把握に,軌道整備の履歴やMobile Mapping Systemで取得した三次元点群データを活用することで,技術者による調査の精度的な補完や調査の範囲を拡充させる方法を検証した.一連の検証により,提案する方法による路盤の沈下に関する調査の効率化の可能性について論じ,期待される効果を示した.

  • 森 伸一郎, 長井 春希, 今井 美文, 三浦 夢乃, 中畑 和之, 松田 敏, 須賀 幸一, 野上 武志
    2025 年4 巻1 号 p. 387-396
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/22
    ジャーナル フリー

     愛媛県内のあるPC床版橋において,横締めPC鋼棒の破断・突出事例が発生した.突出の有無にかかわらず破断の判定をする必要があった.近接目視,打音検査,透過法超音波試験による全数調査を実施した.明らかに破断・分離している鋼棒においても,鋼棒端部から入射した超音波が,振幅が低減されながらも鋼棒の他端部のセンサーで検出された.鋼棒を伝播した超音波が破断部で周辺コンクリートをバイパスして鋼棒に再入射するというメカニズムが想定された.そこで,そのバイパスメカニズムを確認するための小型の鋼棒コンクリート梁模型を用いて実験を行った.鋼棒が破断・分離していても透過超音波が他端で検出できた.梁模型をモデル化した数値解析を行い,波動バイパスメカニズムを検証し,横締めPC鋼棒破断検出のための透過超音波試験方法として成立する可能性を示した.

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