インフラメンテナンス実践研究論文集
Online ISSN : 2436-777X
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実践研究論文集
  • 門田 峰典, 大胡 拓矢, 富岡 昭浩, 中南 力, 渡部 剛喜, 鏡 稜平
    2026 年5 巻1 号 p. 1-9
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     北見市は,2006年に1市3町が合併し,北海道で1位,全国で4位の広大な面積を有している.現在保有している橋長2.0m以上の橋,高架橋,函渠の合計は524橋となり,合併前の倍以上となる.管理橋梁数が多く,法定点検に要する費用を縮減するため,小規模橋梁は今後職員で点検することを検討している.そこで,本研究では,効果的・効率的な点検手法の確立に向け,橋長10m未満となるPCスラブ桁橋47橋およびRC床版橋8橋を対象とし,橋梁構造物の性能を定量的に評価できる指標を検討した.車両走行実験によって得られた実測たわみと理論たわみの関係や,ヤング率の減少程度との関係から,橋梁毎の相対的な対比が容易となり,定量的なデータに基づく性能の見立てが可能となることを示した.

  • 門田 峰典, 井上 真澄, 崔 希燮, 中南 力, 日向 洋一, 菊原 歩, 名和 豊春
    2026 年5 巻1 号 p. 10-18
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     積雪寒冷地域では,路面の凍結を防止するため凍結防止剤を散布している.コストや融氷性能が優れる塩化物系の使用率が高い一方,沿道環境への影響が課題となっている.このような中,欧米諸国では,環境への影響が少ない酢酸系が使用されているが,本国では実用化には至っていない.本研究では,酢酸カリウム系凍結防止剤の冬期道路への適用を目的とし,刺激的なニオイ問題を解消するための成分改良,室内融氷性能試験,車両走行試験,実橋梁への散布試験を実施した.これらの結果,改良型酢酸カリウム系は,塩化カルシウム系と同程度もしくはそれ以上の融氷性能を示すことを確認した.また,散布によるすべり摩擦係数は,凍結路面に対して2.1倍の上昇,制動距離はおよそ3分の1の減少を確認するとともに,氷点下における路面の凍結防止効果を確認した.

  • 齊藤 準平
    2026 年5 巻1 号 p. 19-28
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     高度経済成長期に建設された多くの橋梁は,急速な老朽化が進行しており地方自治体にとってその維持管理が大きな課題となっている.橋梁の劣化は複数の要因が複雑に絡み合うため,予防保全や点検の優先順位付けが困難な現状がある.本研究は,年最低気温が低い条件で交通量の影響が認められない場合があるとの先行研究に基づき,全国のコンクリート道路橋516橋を対象に健全度指標(BHI)と日交通量の関係における年最低気温の影響を分析した.その結果,年最低気温が-5℃以下では交通量の支配性が失われる一方,-5℃から-2℃にかけては気温の上昇とともに線形的に支配性が高まることを明らかにした.これら知見は,橋梁の気象・交通条件から健全度を推定する手法を提供し,劣化リスクの効率的な評価と管理に貢献する可能性を示すものである.

  • 日和 裕介, 下里 哲弘, 新田 健太, 平野 秀一
    2026 年5 巻1 号 p. 29-38
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     鋼橋の桁端部は早期に著しい腐食が発生しやすく,利用者の安心・安全を確保するためには高耐久な防食技術の開発が不可欠である.こうした課題に対して,筆者らはCold Spray技術を用いた防食補修技術を開発し,腐食損傷が生じている実橋梁の桁端部に対して試験施工を実施した.本論文では,100ヵ月間にわたる実桁端部の腐食環境下での状態を継続的に観察し,特に塗装の弱点とされる部材エッジ部に着目して,Cold Spray防食技術の長期防食性を検証した.その結果,素地調整で除去しきれず残存したさび箇所や部材エッジ部に対しても,現場施工で高純度の亜鉛皮膜が密着し形成できるため,桁端部のような腐食が促進される環境下においても長期防食性を確保する一手段として有効であることが実証された.

  • 須藤 敦史, 兼清 泰明, 佐藤 京
    2026 年5 巻1 号 p. 39-48
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     高度経済成長期に整備されたインフラストラクチャーの老朽化が進行して,様々な損傷事例が報告されている.昨今の社会・経済情勢から,これらに対してライフサイクルマネジメント(LCM)の考え方に基づいた予防保全を前提とした長寿命化対策の早急な構築と運用が求められている.一方,構造物の定期点検結果は離散(レイティング)値で得られることが一般的であるため,連続的な概念のLCMに基づいた劣化状態の把握や将来予測への適用が難しい.本研究は,北海道の橋梁に対して一元的な劣化評価と将来予測を行う目的で,定期点検結果より得られる離散値の損傷度判定区分を連続値の劣化評価値や劣化指数に変換して劣化状態の把握と将来予測を行い,さらにそれら確率分布のばらつきと裾野部の特性および劣化遷移の二重モードに関する考察を行っている.

  • 重松 宏明, 山河 弘太
    2026 年5 巻1 号 p. 49-56
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     能登半島地震(2024.1.1)によって生じた社会インフラの被害を背景に,本研究は低比重のカキ殻を中詰め材とした軽量土嚢による復旧工法の構築を目指す.特に,圧密による沈下問題が懸念されてきた河北潟干拓地において,カキ殻の特性を活かした軽量土嚢の有効性を検証するために,未破砕のカキ殻に対して破砕値試験を,適度に破砕させたカキ殻および比較材料(廃瓦,珪藻土の切りくず)それぞれを詰め込んだ各土嚢に対して載荷試験を実施した.これらの実験結果から,カキ殻は所定の荷重を閾値として破砕状況が大きく異なることを確認した.また,土嚢の剛性の指標となる割線変形係数は,すべての中詰め材の場合において圧縮応力の増加に伴って著しく上昇した.ただし,土嚢の剛性には袋の張力と載荷の過程で緻密化した中詰め材の強度が密接に関係している.

  • 葭田 理子, 津田 誠
    2026 年5 巻1 号 p. 57-65
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     近年,老朽化橋梁の増加に伴い,特に技術者不足の地方自治体における維持管理が課題となっている.本研究では,石川県津幡町で地域住民参加型の簡易橋梁点検を実施し,劣化状況の把握と評価精度を検証した.点検には,日本大学工学部のチェックシートを改良した石川高専版を用い,産官学と住民が協力して行った.また,令和6年能登半島地震を踏まえ,橋台背面の段差に着目した新たな管理指数を新たに導入し,測量結果の沈下量との対応を分析した.さらに,複数の劣化指標を用いて経年的な劣化傾向を評価した.加えて,アンケートにより防災意識と維持管理への認識向上を確認した.これらの結果から,住民参加による橋梁点検の有効性と継続的実施の重要性が示された.

  • 田中 俊史, 本野 貴志, 楠田 将之, 高尾 賢一, 若月 修
    2026 年5 巻1 号 p. 66-74
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     コンクリート製踏切舗装版の一つである総研型踏切舗装版は,安価に製造および敷設が可能であり,軌道整備やレール交換時には脱着可能な構造であるが,重量が大きく,部品点数が多いことから作業性の向上が課題となっている.本検討では,作業性の大幅な向上を目的として構造を変更したNW型踏切舗装版を開発した.開発した舗装版を組み立て,荷重載荷時の部材の応答値を確認した.また,軌道に敷設し作業性を確認するとともに保守用車を走行させた際の部材の応答値を測定した.これらの結果を踏まえ,さらに構造改良を施したNW型踏切舗装版について提案する.

  • Yandee GAMAYO, Natsumi ISHIBASHI, Ichiro IWAKI
    2026 年5 巻1 号 p. 75-82
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     The Philippines continues to face challenges in maintaining its national bridge network due to increasing traffic demands, exposure to harsh environmental conditions, and limited technical manpower. Engineers typically conduct routine inspections, while maintenance foremen and laborers remain underutilized despite being constantly present on site. Building upon the Simple Bridge Inspection Check Sheet developed by Wakana Asano and applied in Hirata Village, Japan, this research focuses on adapting, using, and localizing the approach within the Philippine context. This study aims to develop a practical Bridge Routine Inspection Check Sheet that allows non-engineering personnel to perform systematic visual inspections. The tool incorporates standardized defect codes and severity classifications to improve defect identification and documentation. This approach supports early maintenance interventions, complements engineers’ roles, and strengthens maintenance workers’ involvement towards a sustainable bridge maintenance system.

  • 藤川 祥汰, 水谷 健人, 坂本 達朗, 小寺 健史
    2026 年5 巻1 号 p. 83-91
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     高度経済成長期に建設された50年以上経過の橋梁が増加しており,ライフサイクルコスト低減のため防食塗料の長期耐久性が求められている.飛来塩分や凍結防止剤の影響で異常腐食した橋梁では,ブラスト処理後も塩分が残存し,塗膜劣化が早期に発生し,期待される耐久性が得られないことが課題である.これを受けて,筆者らはブラスト処理後に残存する塩分の低減を目的とした塩分低減剤を開発した.本論文では,同材料の特徴を述べるとともに,室内試験や屋外の実鋼橋を対象として塩分低減剤の性能を評価した結果を報告する.

  • 並松 沙樹
    2026 年5 巻1 号 p. 92-100
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     本研究は,自治体の橋梁維持管理を対象に,マネジメント能力と建設年代分布を統合的に分析し,持続可能性を評価することを目的とした.愛知県54市町村を事例に,橋梁点検結果,財政・人口等のデータを用いて主成分分析とクラスター分析を実施し,7類型の維持管理能力と5類型の建設年代分布を抽出した.さらに両者を組み合わせることで35類型の総合評価を提示し,地域特性や地理的近接性に応じた傾向を明らかにした.その結果,データ欠落型自治体の存在や更新需要の集中リスクが示され,類型に応じた戦略的な対応の必要性が示唆された.

  • 原田 紹臣, 貝戸 清之
    2026 年5 巻1 号 p. 101-110
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     近年,埼玉県八潮市で下水道管に起因する大規模道路陥没が発生し,予防保全の重要性が高まっている.一方,社会資本整備審議会等は複数インフラを「群」として管理する地域インフラ群再生戦略マネジメントを提起しており,それに向けたインフラの老朽化に伴ったリスク評価や合理的な維持管理手法は重要であると考えられる.本研究では,これまでの既往事例を再整理し,下水道管に起因する陥没発生に影響を与える気温変化や地盤の内部侵食等による影響について考察した上で,新たに平均気温から陥没件数を推定する式を提示した.さらに,地盤分野やインフラ施設の維持管理等に関係する熟練者へのアンケート等により診断項目やランクの重み係数を定量化し,陥没予防に資する評価手法を提案した.

  • 西尾 昭希, 木村 定雄, 大塚 努, 荻野 竹敏
    2026 年5 巻1 号 p. 111-120
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     本論文は,供用されている鉄道開削トンネルの建設記録として明文化されていない,または詳細に解説されていない設計法の変遷を分析した上で,鉄道事業に係る法律および省令と現行の性能評価法との整合について整理した.また,採用された土留め壁工法の施工技術の進歩や周辺地盤の変化,すなわち,駅部の深度化や地下水位の上昇などによって,躯体に適用される設計法の合理化が図られたことを明らかにした.既存の鉄道構造物の設計事例を対象に,性能評価法が異なる場合,部材の断面力算定に及ぼす影響を分析した.

  • 中田 悠貴, 渡辺 健, 松﨑 晋一朗
    2026 年5 巻1 号 p. 121-126
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     持続可能な鉄道の実現には会社規模に関わらず,安全性を確保したうえでの維持管理業務が不可欠である.本論では,鉄道事業者を対象に維持管理の実態を把握するためのアンケート調査を実施し,特別全般検査の実施状況や昨今各所で活用がされているUAVの導入状況や利活用の場面について把握した.その結果,UAVを導入している事業者は12%近くに上ることが分かった.一方で,費用対効果の不透明さ,撮影条件が提示されていないことにより,技術的な課題があることが判明した.そこで,一眼レフデジタルカメラや,UAVに搭載されたデジタルカメラで所定の精度でひび割れを取得するための撮影フローを提案し,実在する橋りょうを対象に撮影を行った.その結果,UAVによる撮影で画像解析を行うことにより,作業効率が従来の検査方法と比較して2倍近くに向上した.

  • 小山内 佳彦, 内田 雅人, 鵜澤 星一, 大嶋 啓
    2026 年5 巻1 号 p. 127-135
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     本稿は,JR 東日本のコンクリート橋梁の検査周期延伸の要件の拡大を検討したものである.法体系上,鉄道構造物の全般検査は2年周期が原則であるが,詳細な検査等により耐久性が確認された場合はコンクリートで最大6年まで周期延伸が可能である.一方で,「鉄道構造物等維持管理標準・同解説」の解説文に示される検査周期延伸要件(健全度がSランク限定,初回検査後10年以上等)に従うと,業務削減効果は限定的となる.そこで,過去10年分の検査データを用い,数え上げ法による遷移行列で変状進展割合を分析した結果,検査周期を6年に延長してもAランクへの進展割合の増加は僅少であることが確認された.また,軽微な変状を有する実構造物を対象に,耐力照査を実施したところ,10年後も所要の機能を満足することから延伸可能と判断できることが分かった.

     検討結果より,軽微な変状を有する構造物であっても,所要の機能を有することを確認する前提で,6年を上限に延伸できる可能性があると考えられる.

  • 遠藤 心和子, 伊藤 始, 栗橋 祐介, 柳田 龍平
    2026 年5 巻1 号 p. 136-145
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     自治体の橋梁の維持管理において,すぐに措置できない健全性IIIの橋梁を中期的に管理するための区分方法が必要となっている.本研究では,ボックスカルバート形式と床版形式の短支間橋梁を対象に,構造解析を用いて鉄筋腐食が生じた場合の橋梁形式による耐荷性能や破壊形態の違いを検討した.それを踏まえて,鉄筋腐食による耐荷力低下を考察し,安全余裕診断への活用方法を検討した.その結果,ボックスカルバートは鉄筋腐食本数が多い場合でも耐荷力が大きく減少しない構造であることを確認した.それにより,頂版下面の鉄筋腐食に対するボックスカルバートの耐荷性能は短支間橋梁の床版に比べて優れることを確認した.加えて,ボックスカルバートの耐荷力の概略計算値(耐荷力マスターカーブ)は,解析値と同程度以上になり,安全側の評価になることを確認した.

  • 上野 和広, 岡本 貞二, 岡本 貞人, 加川 順一
    2026 年5 巻1 号 p. 146-155
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     アルカリ骨材反応(ASR)を発症した橋台へ適用された内圧充填工と表面含浸工法(シラン系撥水材)を対象に,補修効果やその継続期間について検討を行った.補修前後でコンクリートの膨張挙動を比較した結果,補修前に顕著な増加を示していた膨張量は,補修後温度変化に応じた僅かな変動に留まった.この膨張抑制効果は,ひび割れ内部に残存する水を樹脂との置換によって排除したこと,ひび割れへの樹脂充填によって外部からの水の侵入を低減したことが大きな要因であると推察された.ただし,橋台背面からの水分供給や躯体深部に残存する水分によって長期的には膨張量が累積する傾向にあり,補修から約4年で軽微なひび割れが発生した.これらの結果から,今回対象とした橋台で適用した補修工法は,恒久的な対策とはならないものの,ASRの進行速度を抑制して残存耐用期間を延長する効果を発揮したと言える.

  • 宮下 泰成, 藤田 孝康, 武田 真典, 三上 信雄, 三神 厚
    2026 年5 巻1 号 p. 156-165
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     本研究は,全国の漁港施設の点検診断結果を基に,マルコフ連鎖モデルを用いて遷移確率を算出し,漁港施設の老朽化傾向を分析することで,維持管理に関する新たな知見を蓄積することを目的とするものである.まず,漁港施設の遷移確率と類似施設である港湾施設の遷移確率を比較した結果,防波堤においては漁港施設の約半数が港湾施設よりも高い遷移確率を示し,両者の老朽化傾向に違いがあることが示唆された.次に,漁港施設においては,施設種類や構造形式の違いが遷移確率の平均値に影響を及ぼし,老朽化の進行に差異が生じる結果となった.一方で,漁港施設全体としては,遷移確率の分布形が施設種類や構造形式には依存せず,概ね同様の傾向を示すことも確認された.

  • 山口 真, 丹羽 雄一郎, 内田 純平, 公門 和樹, 石川 敏之
    2026 年5 巻1 号 p. 166-173
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     近年,鋼橋の溶接部およびき裂部近傍において,無荷重時の静ひずみを経時的に計測し,疲労き裂の発生や進展を評価するモニタリング手法が提案されている.しかし,実橋では,1日の温度変化等による部材間の変形差によっても静ひずみが変化する場合があり,疲労き裂を評価する際の妨げとなっている.そこで,本研究では,温度影響などによって生じるひずみを低減するため,着目箇所に2枚のひずみゲージを貼付して,それぞれの位置で計測した静ひずみの差分によって評価する方法を提案した.疲労試験や実橋モニタリングによる検証の結果,本方法を適用することによって,き裂の発生や進展による静ひずみの変化を捉えつつ,温度影響などによって生じるひずみの変化を大幅に低減できる可能性が示された.

  • 西岡 秀祐, 代島 隆夫, 伊吹 武人, 別所 和希, 東原 大樹
    2026 年5 巻1 号 p. 174-182
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     我が国の道路橋における技術基準は,2001年度以降,基準変遷の中で性能規定化され,新設橋のみならず,既設橋の補修時においても性能確保の観点での計画・措置が求められている.性能に着目した補修計画は浸透しつつあるが,部材単体での性能評価が主体的で,損傷進行により構造単位でどのような壊れ方をするかも含めて評価した上で計画した事例は少ない状況である。

     そこで,本稿では,竣工年の古いプレストレストコンクリート(以下,PC)T桁橋について,橋の状態把握や構造単位も含めて性能を評価した上で,補修計画を立案した事例を紹介する.また,性能評価が困難な部材に対して,現状よりも性能を低下させない措置に加え,万が一性能が低下した際の橋の状態を想定した上で,それを察知するための日常点検も併せた補修計画を立案した事例を紹介する.

  • 杉本 恒美, 杉本 和子, 歌川 紀之, 黒田 千歳
    2026 年5 巻1 号 p. 183-190
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     橋梁やトンネルおよび地下空洞といったインフラ構造物の点検には,叩き点検が用いられることが多いが,少子高齢化の進展に伴い,熟練点検者の不足が問題となっており,点検作業の効率化が求められている.既に様々な手法が開発されているが,多くの手法は検査表面に接近して使用する必要があるために,作業効率の改善には結びついていない.そこで本研究室では,遠距離から非接触で叩き点検と同様な検査を可能とする音波照射加振とレーザドップラ振動計を用いた非接触音響探査技術を開発した.既に供試体や実構造物に対する検証実験が行われて,本手法の有効性が明らかにされているため,本稿では本手法の概要と実施例について述べる.

  • 岩野 聡史, 後藤 幹尚, 藤森 竣平, 岩波 光保
    2026 年5 巻1 号 p. 191-198
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     大田区が管理する橋梁は感潮河川に架設されたものが多く,より確実で予防的なメンテナンスの実現が求められている.そこで,鉄筋腐食をより初期の段階から検出することを目的として,レイリー波速度を測定する衝撃弾性波法の新しい試験方法を考案した.塩害が懸念される実構造物でこの試験方法を適用し,コア削孔による内部鉄筋の腐食状況との比較を行った.さらに,2次元弾性体波動方程式に基づく数値解析により,コンクリート内部に空隙が存在する状況を模擬し,空隙の存在により測定値が変動するメカニズムを検証した.その結果,コンクリート内部に空隙が存在すると,健全部とは異なる振動が受信点に混入し,これにより位相スペクトルが変化し,最終的にレイリー波速度の測定値が健全部とは乖離することが確認された.

  • 井上 雅夫, 長山 智則
    2026 年5 巻1 号 p. 199-208
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     鋼道路橋および鋼歩道橋には,小断面箱桁等の内部が目視困難な閉断面部材(以下「内部目視困難部材」という)が多く用いられているが,その腐食の実態が十分に把握されていない.第一著者は,鋼歩道橋の3巡目点検において初めて2橋の内部目視困難部材の内部腐食(一部材で板厚が約2mm減少)を見つけた.一部材の内部でのACMセンサによる腐食性モニタリングに基づく腐食速度は,既往の塩害環境下道路橋箱桁内の腐食速度の最大値並であった.歩道橋に限らず,道路橋においても条件により内部が腐食性を有すると判断し,点検において内部腐食を見つけられていない原因の分析に基づき点検の改善を提案した.そして,内部腐食の有無・程度,腐食速度の計測方法および新規設計における配慮について提案した.

  • 室谷 真翔, 津田 誠, 上田 信二
    2026 年5 巻1 号 p. 209-217
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     近年,日本の構造物においてコンクリート片の落下に関する事故が各地で報告されており,高度経済成長期に建設された構造物の老朽化が深刻な社会問題となっている.また,健全度IIIの橋梁は全体の約1割を占めており,全ての橋梁を補修するには5年間では間に合わない可能性がある.そこで,本研究では,簡易かつ緊急時に対応可能な補修工法として,耐久性が優れており,安価で紫外線に強いバサルトネットを悪条件の実構造物に適応させ,性能及び耐久性について検証した.建硏式接着試験機を用いて付着力を測定した結果,ほとんどの条件において基準値を上回る結果が確認された.

  • 木下 義昭, 中島 道浩, 横田 敏広, 天野 承介
    2026 年5 巻1 号 p. 218-228
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     インフラメンテナンスにおける労働力不足,特に地方自治体での技術系職員不足は深刻な課題である.データ駆動型のインフラ維持管理が求められる中,本研究では,技術系職員が維持管理部署に不在の熊本県玉名市の土木課維持係を対象に,日常維持管理業務の改善を試みた.3年間の住民要望や巡回対応記録に加え,新たに巡回の走行軌跡等を取得し,これら形式の異なる情報をGIS上で統合・分析するデータ基盤を構築した.このデータ基盤により,要望と対応の地理的傾向の違いや,長期間対応されていない路線の存在といった,これまで担当者の経験則に頼っていた管理の実態が可視化された.本研究は,経験則に依存していた従来の管理手法から,客観的データに基づく戦略的な日常維持管理へ移行を促すEBPMの実践を示すものである.

  • 末光 功治, 東田 典雅, 三浦 佑, 睦好 宏史, 澤本 武博, 森濱 和正, 岩野 聡史, 相澤 雅俊
    2026 年5 巻1 号 p. 229-238
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     鋼繊維補強コンクリートで上面増厚補強した床版は,経過年数の増加に伴う老朽化の進展や,大型車交通による疲労の影響など,厳しい使用環境により著しい変状が発生している.しかし,外観から内部の変状発生を把握することは難しい.本論文は,衝撃弾性波法による内部劣化の検出手法が,供用中の高速道路橋鉄筋コンクリート床版において適用できるかを検証した.その結果,弾性波が音響インピーダンスの異なるコンクリートとアスファルトの境界を透過することが示唆された.供試体を作製して検証した結果,鉄筋コンクリート床版に直接アスファルト舗装が敷設されている場合には,弾性波がコンクリートとアスファルトの境界を透過し,アスファルト天端で反射することが明らかとなった.なお,今回の取り組みを踏まえ,衝撃弾性波法を用いた内部欠陥検出における課題や今後の展開についても示した.

  • 岩田 昌也, 河西 勇二, 野里 博和, 大屋 貴生, 佐々木 厳, 百武 壮
    2026 年5 巻1 号 p. 239-245
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     本論文では,実構造物の連続繊維シート補修箇所に対する点検方法として,点検員の技術に左右されず正確に損傷の検出が可能な打音検査技術の確立を目的として開発した「AI打検システム」を用いる方法について述べる.本システムは,点検ハンマーによる打音の違いを機械学習し,構造物の異常箇所と異常の度合いを自動検知する.さらにレーザー光による測域センサで人手によるハンマーの打撃位置を簡便に取得し,打音解析結果と統合することで異常度マップを自動で生成する.これにより,打音検査後の図面化を含めた作業工数が削減される.本稿では,AI打検システムの構成,機能,学習アルゴリズムについて述べ,本システムを用いた実橋床版裏での打音試験結果について報告する.

  • 小瀬 喜巳, 細田 暁, 中川 伸行
    2026 年5 巻1 号 p. 246-255
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     インフラ事業者が,限られた予算の範囲で効率的に維持管理を行っていくためには,変状のメカニズムを把握したうえで,既存の補修工法の適切な活用や新たな補修工法の開発を行って,中長期的な計画を立案し,管理していく必要がある.本研究では,塩害によって劣化したRC造のトンネルを対象に,外観目視・打音調査とかぶり,鉄筋の腐食グレードに着目して現場調査を実施し,かぶりが鉄筋の腐食グレードに与える影響が大きいことを確認した.また,塩害加速期から劣化期の開削トンネルにおいて変状の特性を把握したうえで鉄道特有の制約条件に基づいて実効性の高い対策工法を選定した.その上で,現場調査結果と選定した対策工法をふまえ,合理的な塩害対策フローを提案し,持続的かつ効率的な維持管理の仕組みを構築した.

  • 藤本 大輝, 坂本 達朗, 清水 悠平, 吉田 幸司, 他谷 周一
    2026 年5 巻1 号 p. 256-263
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     2025年8月に鋼構造物塗装設計施工指針が改訂され,新たな長期耐久性型の塗装系SiEが追加された.この塗装系は,従来の長期耐久性型塗装系と遜色ない防食性を有するが,実橋への導入実績は少なく,長期耐久性の観点から経年劣化の影響を確認する必要がある.そこで,実橋の切出し片から素地調整別に塗装系SiEを塗装して,60年相当分の熱老化試験を行い,塗膜の外観と付着性を確認した結果,旧塗膜を全て除去した場合には,塗膜割れは確認されず,十分な付着力を有することがわかった.また,3年間の屋外暴露試験結果から上塗り塗膜の減耗速度を推定した結果,減耗速度は1.1μm/年で標準膜厚に対して34年程度の耐久性を有する可能性を得た.2つの試験の結果,塩分などの影響の少ない一般環境下では,塗替え周期を30年程度以上にできる可能性を得た.

  • 片山 直道, 全 邦釘, 田所 良太, 中山 大翼
    2026 年5 巻1 号 p. 264-269
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     近年,道路橋点検では新技術の活用が促進され,市町村管理橋梁でも画像解析技術やデジタル調書が導入されつつある.一方で,桁下空間が狭隘な橋では,人の侵入が容易ではなく画像の撮影方法が課題となっている.それらに対し.ラジコンボートなど新たな技術が開発されているが,水流の影響,高コストなどにより活用が進んでいない.そこで,本研究では,狭隘空間における橋梁点検の効率化を目的として,低コストかつ安定した画像撮影を可能とするガイドワイヤー式撮像システムを開発した.実地試験の結果,プロトタイプでは作業性および架台の傾斜が課題として確認された.これらに対処するため改良モデルを製作し,再度の実地試験により,作業性の向上と安定した撮影性能を確認した.以上により,本システムは市町村管理橋梁における狭隘空間点検への適用可能性を有することが示された.

  • 松本 健太郎, 伊須田 遼, 飼馬 弘至, 石川 敏之
    2026 年5 巻1 号 p. 270-279
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     鋼製フィンガージョイント(FJ)の櫛付根部から生じる疲労き裂の検出法として,フェーズドアレイ超音波探傷法(PAUT)を実施している.しかし,き裂が浅い場合には検出困難で,またFJ上面から探査する必要があるため,交通規制を要するといった課題がある.本研究では,撤去したフィンガージョイントに対してPAUTの検出精度の検証と,新たな維持管理手法として,IoTデータロガーによるき裂進展モニタリングの適用性について検証した.その結果,FJのき裂深さが6.4mm以上はPAUTで検知可能で,それよりも浅いき裂は検知困難であることを確認した.未検知となるのは,溶接表面のエコー反射がき裂先端部のエコー反射と重畳することが原因であることを明らかにした.また,IoTデータロガーを活用することでFJのき裂進展モニタリングが可能であることを明らかにした.

  • 藤田 博樹, 湯野 和樹, 柿木原 幸司
    2026 年5 巻1 号 p. 280-289
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     横断歩道橋は,都市活動を支える社会基盤として高度経済成長期に整備され,歩行者の安全性の確保に寄与してきた.一方,横断歩道橋は老朽化による利用者の安全性低下,第三者被害への懸念に加えて社会情勢の変化による利用者の減少やバリアフリー化に伴う平面化などにより,取り巻く状況は変化している.さらに,少子高齢化により税収が低下する中で持続可能なマネジメントの推進は重要である.本論文では,富山市における横断歩道橋の実践的なマネジメントとして,構造物の健全性や耐荷性等による評価(技術的性質)と横断歩道橋及び周辺の横断歩道の利用状況や都市の将来像を見据えた立体化の必要性等による評価(社会的性質)の考え方を示し,本市が実施した安野屋横断歩道橋の撤去・機能転換の実践事例の考え方を提案する.

  • 佐藤 弘規, 本野 貴志, 楠田 将之
    2026 年5 巻1 号 p. 290-297
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     分岐器ポイント部の転てつ棒は,トングレールとの接続のために,接続ボルトを転てつ棒の下部から挿入し,トングレールに設置された連結板を介して,ボルトナットにより締結する構造となっている.そのため,保守作業や検査に伴い解体・組立を行う場合には,狭隘部での作業や締結時のトルク管理が必要となり,労力を要している.また,構成部材が非常に多く,これにより組立作業がより煩雑となっている.そこで,分岐器ポイント部の保守省力化を目的として,接続ボルトの代替品として連結板との接続をピンによって行う,ボルトレス構造の転てつ棒を開発した.また,開発品を営業線の分岐器2組に敷設し,追跡調査および各種試験を実施した.

  • 鍛治 秀樹, 関 雅樹, 森川 昌司, 吉田 幸司, 穴見 健吾, 北原 武嗣
    2026 年5 巻1 号 p. 298-307
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     我が国の経済の大動脈を担う東海道新幹線は,1964年の開業以来長期間供用されている.今後とも将来にわたり土木構造物の健全性の維持は重要課題である.1987年の民営化後には,部外有識者も含めた調査委員会を設置し,土木構造物の長寿命化を目指して,健全性の評価と課題を抽出した.正確な実態把握を目的とした検査専門組織の創立および「鉄けた特別検査」の追加による検査体制を整備した.2002年には,鋼橋の取替等の大規模改修が近い将来必要であると判断した.大規模改修のための多大な工事費に対し,国による民営企業に対する財政的な措置として「新幹線大規模改修引当金制度」が創設され,初めて認可された.本稿では,鋼橋に焦点を当て,2013年度に着手,今年度完遂した「予防保全」による大規模改修の当初計画と変更内容,政策・法制度の整備並びに運休・徐行を伴わない改修内容とその効果を報告する.

  • 中野 紗希, 美甘 大地, 原田 隆郎
    2026 年5 巻1 号 p. 308-318
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     高度経済成長期に建設された多くの鋼製起伏堰が老朽化しており,定期的な点検や診断によって堰の劣化損傷や点検結果に基づく更新の必要性などが判断されている.この定期点検では,鋼製起伏堰が水位調整のために起伏する際の可動性も確認され,この可動性の評価が堰本体の劣化損傷に関係することから,堰の起伏時異常検知の必要性が高まっている.そこで本研究では,鋼製起伏堰の起伏時に生じる異常を簡易に一次スクリーニングするため,オプティカルフローを適用した起伏時異常検知手法を提案した.工場内および実堰での実証試験によって本提案手法の有用性を確認した結果,堰を可動させる油圧シリンダの起立時の動画から,鋼製起伏堰の起伏時の正常可動と異常可動を検知する可能性を示した.

  • 山﨑 彬, 波田 雅也, 木村 浩之, 粟屋 紘介
    2026 年5 巻1 号 p. 319-327
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     筆者らは,注入式接着系あと施工アンカー工法において,あらかじめアンカー筋に装着するだけで施工品質の確保と施工効率の向上に寄与するクリップ型の固定部材(以下,クリップ型ばね)を開発した.クリップ型ばねは,全ねじボルトと異形棒鋼の両方のアンカー筋に装着でき,アンカー筋を孔の中央に設置する「スペーサー機能」と,接着剤が硬化するまでの落下やずれを防止する「ストッパー機能」を発揮する.本論文では,クリップ型ばねの技術概要と性能試験の一例について述べた後,実際の橋梁耐震補強工事に適用した事例について示す.当該工事では,既設コンクリートに水平力分担構造や落橋防止構造を取り付けるためのあと施工アンカー工法にクリップ型ばねが適用され,従来に比べて工期短縮や人工縮減を達成し,施工効率が向上したことが確認された.

  • 藤門 裕武, 松本 敏, 岩佐 卓実, 中市 翔也
    2026 年5 巻1 号 p. 328-332
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     地すべり地の長期的な安定確保のためには,地すべり対策工の機能維持が重要であるが,地すべり対策工の一つである集水井工は,施工後長期間が経過すると,老朽化により施設の機能が低下することがある.集水井工内に立ち入っての作業は,酸欠や有毒ガス中毒,転落,管理用階段の老朽化などの危険性があり,安全管理面で課題がある.これらの課題点を解決する点検手法として,集水井工内へカメラを下ろして井筒内壁や集水管の状況を撮影,確認する手法が考案されており,従来の手法よりも安全かつ容易な点検が可能となってきた.大分県にて,360度カメラを用いて集水井工内の撮影を行い,撮影動画から静止画を切り出して繋ぎ合わせることで展開写真を,SfM 解析技術(Structure from Motion)を用いることで3Dモデル(3次元点群データ)を作成した.展開写真からは,ライナープレートの腐食・変形や集水管の詰まりを,3Dモデルからは井筒の変形状況を確認することができ,施設機能の評価において効果的であることが分かった.

  • 林 奈津子, 伊豫部 勉, 神谷 弘志, 中村 一樹, 上石 勲, 仲条 仁
    2026 年5 巻1 号 p. 333-340
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     鉄道においては,多量の降雪時に雪害の影響を受けるため,列車巡視による積雪状況の把握が行われている.しかし,従来の方法では人的負担が大きく,今後の生産年齢人口の減少を考えると効率化が課題となっている.そこで本研究では,スマートフォンで撮影した前方画像とAI画像判別モデルを組み合わせた積雪状況判定システムを開発した.線路上の積雪状況を6区分で自動判定し,多様な環境下でも高精度な判定が可能である.実証試験では,Webアプリによる地図上へのリアルタイム表示と情報共有の利便性を確認し,人的負担軽減への有効性を示した.今後は,除雪作業により線路両側に寄せられた側雪(がわゆき)や雪庇の判定機能を追加することで,さらなる業務効率化が期待される.

  • 草開 俊介, 中村 大輔, 栗林 健一
    2026 年5 巻1 号 p. 341-346
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     高齢化・人口減少下において,多大な労力を占める目視検査の省力化は急務であり,変状データの効率的取得に向けた画像撮影手法および変状自動抽出手法の確立が喫緊の課題となっている.本研究では,新幹線線路内の土木構造物変状に対し,画像認識AIによる変状抽出の適用可能性を検証したうえで,新たな新幹線さく内連続画像撮影機器の開発に取り組んだ.その結果,一定条件で撮影した画像を学習させたAIモデルにより,変状を一定精度で抽出できることを確認した.あわせて,効率的な画像データ取得のため,線路内を連続的に撮影可能かつ軌道自転車による推進走行が可能である撮影機器仕様を開発し,営業線での走行の結果問題なく機能することを確認した.

  • 原島 亮汰, 関屋 英彦, 吉田 郁政
    2026 年5 巻1 号 p. 347-355
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     日本の地下トンネルにおいてシールド工法は広く採用されているが,供用年数の増加によって漏水やひび割れの発生が報告されている.既往研究ではMEMS加速度センサを用いた列車荷重作用時の変位計測手法や影響線の算出が提案されている.そこで有限要素法における数値解析を実施し,影響線に基づくセグメントや地盤の健全度評価の可能性について検討した.トンネル下部のセグメントの剛性が低下したケースでは,健全時のケースと比較し,有意な差が確認され,その異常を検知できる可能性を示した.また,トンネル下部の地盤空洞を想定したケースにおいても,その異常を検知できる可能性を示した.

  • 牛込 連志郎, 櫻井 霞, 齋藤 賢人, 前島 拓
    2026 年5 巻1 号 p. 356-361
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     本研究では,上層路盤を含めたアスファルト舗装の塑性変形抵抗性を評価し得る新たな試験方法の開発を目的に,粒状路盤上にアスファルト混合物を設置した供試体の塑性変形抵抗性を評価した.路盤材の粒度と締固め度,アスファルト混合物のバインダ種,試験温度をパラメータとした試験を実施した結果,路盤材の粒度が細かい場合や,路盤の締固め度が低下した場合においてアスファルト舗装の塑性変形抵抗性が低下する傾向を把握できた.この結果から,本手法によって室内検討において粒状路盤層の性状がアスファルト舗装の塑性変形抵抗性に及ぼす影響を評価し得ることが示唆された.

  • 白川 龍生
    2026 年5 巻1 号 p. 362-369
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     鉄道踏切のフランジウェー部には,湿雪の堆積により通路が閉塞し,車輪フランジの通過を妨げて脱線事故を引き起こすリスクがある.本研究では,このリスクを定量的に評価するため,推定閉塞高さを指標とする簡便なモデルを導入した.降雪の水当量に加え,雪質補正,湿雪の圧密,交通荷重の影響を補正項とし,モデルによる閉塞リスク評価を行った.過去の脱線事例に気象庁アメダス観測値を適用した結果,いずれも実効空間高さを超過し,手法の妥当性が確認された.本モデルは降水量・気温・交通状況など基本情報のみで適用でき,気象予測と組み合わせた事前の閉塞リスク評価にも展開可能である.本研究は,気象情報と踏切閉塞リスクを定量的に結び付け,鉄道維持管理の高度化に資する知見を示した.

  • 浅野 和香奈, 井林 康, 大平 龍臣, 岩城 一郎
    2026 年5 巻1 号 p. 370-376
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     本論文では,市民が橋梁の専門知識を持たずとも簡易な橋梁点検を行えるアプリケーション「橋ログ」の実装事例を示す.橋ログはWebアプリケーション化によりスマートフォンのOSに依らず利用でき,位置情報を活用した橋梁選定,簡易点検,緊急通報,結果の閲覧・修正等の機能を備える.福島県平田村での住民主体のセルフメンテナンスや工業高校の課題研究に導入した結果,高齢世代ではアカウント登録の負担が課題となる一方,若年層は積極的に活用し教育的効果も確認された.これらの実装から得られた意見を踏まえ,PDF出力やオフライン記録などの機能改善を行った.以上より,橋ログは定期点検の間を補完する日常的な状態把握を支援するとともに,市民参加や教育と連動した橋梁維持管理を支えるICTツールとしての可能性を有することを示した.

  • 新村 祐一, 関谷 龍都, 高津 惣太, 長内 公彦, 菅野 晶夫, 後藤 幹尚, 岩波 光保
    2026 年5 巻1 号 p. 377-384
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     5年に1度の橋梁の定期点検が法令化されて3巡目を迎える中,従来点検に代わる効率的な点検方法が求められている.その中で飛行型ドローンによる点検は,リフト車や足場の設置が不要であることや,高架下条件に関わらず点検可能であるというメリットによって,現場作業の効率化や点検困難箇所の解消に役立つなど,接近点検の代替手法として注目されている.一方で,導入されて間もない技術であることから,経験不足に起因する人的ミスや機器トラブルなど,従来点検では想定していなかったリスクが生じる場合がある.本稿では,橋梁定期点検において飛行型ドローンを実践運用した経験に基づき得られた知見をもとに,実践上生じうるリスクとその対応について整理し,運用上の留意点について報告する.

  • 張 晋軒, PENH Otdom , 前島 拓, 永塚 竜也, 渡邉 真一, 田中 俊輔, 内藤 英樹
    2026 年5 巻1 号 p. 385-392
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     本研究は,局所振動試験を用いたアスファルト混合物層の弾性係数評価手法について検討したものである.実物大のアスファルト舗装を対象とした疲労実験の各段階で局所振動試験とFWD試験を行い,得られた弾性係数を比較検証するとともに,局所振動試験結果に基づきアスファルト混合物層の劣化程度を評価し得る手法について検討した.その結果,局所振動試験によりアスファルト混合物層の弾性係数を現地にて直接的に評価し得ることを明らかとした.また,局所振動試験で得られた弾性係数を20℃に補正し,相対弾性係数として整理することで,アスファルト混合物層の劣化度を定量評価し得る可能性を示した.

  • 関谷 龍都, 新村 祐一, 高津 惣太, 長内 公彦, 菅野 晶夫, 後藤 幹尚, 岩波 光保
    2026 年5 巻1 号 p. 393-402
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     我が国では, 老朽化が進む橋梁の維持コストの低減を図るため定期点検の高度化や効率化が求められており, 従来の点検方法に代わる点検手法の実践が進められている. 特に, 飛行型ドローンによる点検は, 交通規制や足場条件の緩和が期待できるため, 従来の点検手法の代替として期待されている. しかしながら, 実践内容の報告事例は少なく, 点検計画の策定から作業着手までの手順が手探り状態である. 実際に, 法令による飛行の規制や許可・申請手続きは複雑であり, 飛行する場所により協議先も異なる. 本稿では, 橋梁定期点検にドローンを採用する場合の法令上の要件を整理し, 点検着手までの課題と改善策について論じる.

  • 伊藤 太初, 小納谷 優希
    2026 年5 巻1 号 p. 403-412
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     主要なレール溶接方法であるガス圧接法において,圧縮量の低減による押抜き工程の省略およびそれに伴う装置の軽量化を目的として,新たなレールガス圧接工法について検討した.また,各種自動化装置を検討すると共に,営業線における試験施工及び敷設試験を実施した.その結果,変圧法を用いることで圧縮量を6mmとしても実用上十分な継手強度を有する低圧縮量レールガス圧接工法を開発すると共に,加熱開始から圧接終了までの作業工程の自動化が可能な自動ガス流量・油圧制御装置を試作した.開発した工法を用いた試験施工及び敷設試験により,簡単なトレーニングのみで現場適用が可能であることを確認した.

  • 稗田 拓海, 髙橋 幸太郎, 米田 涼華, 中西 彩水, 緒形 侑美, 古野 昌吾, 井上 雅夫
    2026 年5 巻1 号 p. 413-422
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     富山県高岡市は約1,160橋の橋を管理しており,定期点検要領の合理化に取り組んでいる.PCスラブ桁生産初期にあたる1960年代頃の橋を含め,PC床版橋が123橋ある.点検結果に基づく耐荷性能の概略評価において,完成図が無く内部構造が不明,ASRによるひびわれの耐荷性能への影響程度が不明,という課題があった.そこで,本調査において代表橋について内部構造把握,桁下全面の近距離からのレーザー計測,載荷試験を行った.橋の各桁におけるASRによるひびわれ本数とたわみに相関関係はなく,そして,載荷試験結果は,ASRによる膨張が一定の範囲内ではPC梁の耐荷性能はそれほど低下しないという既往調査と符合した.

  • 真田 拓磨, 富山 和也, 盛 祥平, 吉田 昴, 横山 昂洋, 森石 一志
    2026 年5 巻1 号 p. 423-432
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     近年,自転車通行空間の整備が進められており,利用者の走行環境に対するニーズが高まっている.このような中,自転車運転者の乗り心地指標Bicycle Ride Index(BRI)が提案されているものの,幼児同乗自転車における同乗者の快適性を考慮した路面評価指標の構築には至っていない.そこで本研究では,同乗者の快適性に着目した路面評価指標を構築し,実道での適用可能性について検討を行った.その結果,構築した指標は,ISO2631-1(1997)に基づく快適性指標との高い相関を示し,BRIとは異なる新たな指標であることが明らかとなった.また,実道において10m区間ごとに算出した指標は,路面に存在するひび割れといった快適性低下要因となる局所的な損傷を検出可能であり,適用可能性があることを示した.

  • 山本 義幸, 古木 宏和, 中村 吉男
    2026 年5 巻1 号 p. 433-442
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/18
    ジャーナル フリー

     インフラ維持管理の導入教育では,暗黙知的技能を初学者でも体験的に学べる形での提示が求められる.本研究ではスマートフォンアプリを組み合わせた全4回の打音検査実習を大学生に実施し,19項目アンケートで教育効果を検証した.短時間の体験でも多くの受講者が理解感と音の違いの手応えを得ており,可視化支援がその理解を支えた.現地・教室・動画を組み合わせた体験構成がもっとも効果的である一方,教室中心でも一定の成果を確認できたことから,場面構成を目的や制約に応じて調整する余地が示唆された.理解感の向上は点検意識と関連する一方で,単一の体験場面では意識が伸びにくい層も存在し,体験の重ね方が意識変容の鍵となった.今後は,研修等への展開や理論補完教材等の整備を検討する必要がある.

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