2009 年 65 巻 1 号 p. 136-150
地震時における迅速な被害の把握は,災害軽減・リスクマネジメントの観点から極めて重要である.その実現には,信頼性が高くかつ簡易な地震動および被害の指標が求められる.地震動については,計測震度やSI値など,多くの簡易で迅速な判断が可能な指標が提案されてきたが,個別の構造物の応答,特に構造性能と関連が深い変位を簡易に評価することは困難であった.そこで,安価で信頼性の高い加速度センサによる記録から最大応答変位を推定することを目的として研究を行った.本研究では,不規則振動理論を援用して,地震動特性,応答加速度,応答変位の統計量間に成立する代数的関係を導出し,積分操作によらずに最大変位を簡易に推定する方法を構築した.また,併せて,この応答間の統計関係と理論的に整合的な地震動速度の簡易指標も提示した.