2022 年 78 巻 1 号 p. 49-63
本研究は,近代京都を代表する20編の随筆の中の風景記述を対象として,感覚表現に着目して表現の内容を分析し,風景記述の表現上の特徴を明らかにすることを目的とする.風景記述から589の感覚表現を抽出・分析することで,写実性や色彩,明暗などの視覚的表現,触覚や聴覚などの身体感覚的表現,様態から受ける印象や興味・快,気分の投影や追憶,季節感の感受に関わる主観的感覚の表現,文学や歴史性,宗教的意味に関わる連想的表現などの,多様かつ豊富な感覚表現の表現内容を整理し,その具体的内容を明らかにした.さらに,感覚表現の共起性について分析を行い,視覚的表現を中心とした複数の感覚による表現の組み合わせの傾向と表現上の特徴を明らかにした.