抄録
2011年東北地方太平洋沖地震の際,GPS観測点による地殻変動量やGPS波浪計による津波時刻歴などの観測値が得られた.本検討では,これらを用いて震源断層におけるすべり量を求める震源インバージョンを実施した.ここで,震源のすべりモデルとしてマルチタイムウィンドウを採用した.破壊伝播速度とタイムウィンドウ数を変えてインバージョンした結果,破壊伝播速度が遅くタイムウィンドウ数が多いほど観測記録との適合性が向上し,モデルとして適切であるとの結果が得られた.しかし,この条件下の解では断層破壊運動の継続時間が増大し,地殻変動の時間変化に関する観測結果との整合性に齟齬を生じる.本検討の結果では,破壊伝播速度が2.5~3.0km/sでタイムウィンドウ数5の場合が,現実的な条件における適切な解との結論を得た.