土木学会論文集A2(応用力学)
Online ISSN : 2185-4661
ISSN-L : 2185-4661
応用力学論文集Vol.19(特集)
大気エアロゾルの海上現地観測
猿渡 亜由未渡部 靖憲山田 朋人大塚 淳一馬場 康之水谷 英朗久保 輝広内山 雄介森 信人二宮 順一
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2016 年 72 巻 2 号 p. I_537-I_547

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抄録
海から発生する波飛沫は大気-海洋間の熱,湿度,運動量の輸送量を決定すると共に,海塩粒子となって大気エアロゾルを構成することから,海上気象場に影響を与える重要なファクターの一つとなっている一方,その発生量は様々な要因に影響を受けることから精度良い見積もりが困難である.本研究では波飛沫発生量と気象,海象条件との関係を明らかにすることを最終的な目的とし,和歌山県田辺湾上において大気エアロゾルの粒子数密度の海上現地観測を行った.測定対象の三粒径(0.3, 1.0, 5.0 μm)のうち最も小さい粒子の数密度は観測期間を通して100 km以上のスケールの大気環境に支配され,平常時は波飛沫由来の海塩粒子の影響を多く含まないことが分かった.しかし太平洋側からの強風が卓越する気象イベント時においては何れの粒径の観測結果でも風速に対する単調増加傾向を示すことが確認された.この傾向は白波砕波が発生し始めると言われる海上風速6 ms-1以上の条件で表れ始めていることから,波飛沫由来の海洋性エアロゾル濃度の増加を観測した結果であると考える.
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© 2016 公益社団法人 土木学会
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