2017 年 73 巻 2 号 p. I_105-I_113
豪雨時における斜面崩壊の発生は,斜面内への雨水浸透に支配される.筆者らはこれまでに粒子フィルタ(PF)を用いて,現地計測結果に基づく浸透解析モデルのデータ同化を行い,雨水浸透シミュレーションにおけるその有用性を明らかにしてきた.ところで,PFによる浸透解析モデルのデータ同化,特に,土壌水分特性パラメータの推定を実用化するためには,それに特有な問題点を解決し,効率的なデータ同化手法を提案する必要がある.本研究では,それら特有な問題点である観測ノイズの標準偏差の値とアルゴリズムの違いによるデータ同化の効率性について考察した.すなわち,観測ノイズの標準偏差の値は体積含水率の変動幅に対し,約60%の値であれば妥当であることを明らかにした.また,データ同化のアルゴリズムとしてSampling Importance Resamplingを用いる際の効率的なデータ同化手法を提案した.さらに,データ同化手法として,融合粒子フィルタの有効性を実際の現場計測事例への適用を通じ明らかにした.