2017 年 73 巻 2 号 p. I_661-I_669
損傷した鋼構造物の当て板接着補修が適用され始めているが,一方で,脆性的なはく離破壊が懸念されている.一般に接着剤の品質管理として,1.6mmの薄い鋼板を用いて,接着によるラップ長が12.5mmのシングルラップ接着接合の引張せん断強さ試験が行われ,平均せん断応力(引張せん断接着強さ)が利用されている.しかし,この試験では幾何学的非線形状態となること,平均せん断応力では,はく離破壊が適切に評価できないなどの課題がある.そこで,本研究では,幾何学的非線形を考慮したシングルラップ接着接合継手の接着端部に生じるせん断応力と垂直応力を数値解析により算出し,はく離破壊時のそれらの値が,これまでに提案されているはく離に対する破壊基準に適用できる可能性があることを示した.