抄録
本研究は,交通路線における落石の危険度評価と落石対策工の最適設計とを直結させた事前対策手法の提案を目的とする.まず,落石シミュレーション手法を用いて路線に到達する落石のデータを収集する.次に,路線を仮想的に分割した区間ごとの落石危険度を示す定量的指標を定義し,シミュレーション結果に基づく落石危険度,および対策工を設置することによる危険度の低減効果を評価する.最後に,全路線区間の危険度低減効果の総和を予算制約内において最大化する最適化問題を定式化する.この問題を解くことで,対象路線における対策工の最適配置が示される.なお本研究では,仮想的な路線上で落石シミュレーション結果が得られているという条件の下,提案手法を適用して有用性の検証を行った.検証結果から,落石の到達確率と運動エネルギーの空間分布特性に応じた対策工の最適配置が,提案手法により柔軟に得られることが確認できた.