2019 年 75 巻 2 号 p. I_71-I_81
超音波非破壊検査の高度化のために,数値解析を援用した時間反転法に基づく欠陥映像化手法が提案されている.この手法は,はじめに欠陥に入射波を送信し,アレイプローブで欠陥からの散乱波を受信する.それを時間反転させて,数値モデル中に再現した位相共役鏡から送信する.数値シミュレーションの中で時間反転した受信波は欠陥に向かって伝搬し,欠陥で集束することから,各時間ステップで出力された波動場のスナップショットから集束位置を判定することで,欠陥の位置を推定する.実際の検査では,計測波形の特性やモデル化誤差の影響で,必ずしも欠陥位置で超音波の振幅が最大になるとは限らないため,欠陥の位置を一意に定めるために,入射波と逆伝搬波の相互相関を利用した方法を導入する.論文の前半で,本手法の原理を詳細に説明し,後半では試験体を用いて実験的に検証を行う.ここでは,数値モデルを詳細に作成するため,弾性スティフネスを Wavefield データから求め,これを有限要素解析で用いる.この結果,一方向凝固結晶材の裏面に設けたスリットの位置と高さを精度良く推定できた.欠陥イメージング範囲は入射波の送信に依存し,また相互相関値に適用する周波数が欠陥形状に大きく寄与することがわかった.