2020 年 76 巻 2 号 p. I_143-I_152
疲労損傷事例は数多く報告されており,高精度な疲労寿命予測に対するニーズは高い.一般に疲労寿命は疲労き裂発生寿命と疲労き裂伝播寿命に分けて議論され,疲労き裂伝播寿命については破壊力学に基づく Paris 則を用いた手法が広く採用される.一方,著者らは近年巨視的弾性状態を含む弾塑性応答を高精度に再現可能な材料モデル(疲労 SS モデル) を採用した繰返し弾塑性 FEM 解析を活用して,局所的繰返し弾塑性応答に基づいた疲労き裂発生寿命評価手法と疲労き裂発生の連続挙動として疲労き裂伝播特性を評価手法を提案している.本研究では SM490A 材 CT 試験片を対象として疲労き裂伝播試験を模擬した繰返し弾塑性解析を行い,局所的繰返し弾塑性応答を用いて疲労き裂伝播速度評価を行った.続いて,得られた疲労き裂伝播速度を同材料の非荷重伝達型溶接十字継手に適用し,疲労き裂発生および疲労き裂伝播寿命評価を行った.実験結果と比較したところ,疲労き裂伝播速度評価結果は誤差 11%以内の予測精度が得られ,疲労寿命評価結果についても比較的良好な予測精度を得た.