2020 年 76 巻 2 号 p. I_153-I_162
近年,数多くのステンレス製パネルタンクが設置されている.このタンクが東北地方太平洋沖地震や熊本地震等で,数多くの損傷被害を生じたことが報告されるに至っている.そこで,本論では 3,000×3,000 ×3,000mm のステンレス製パネルタンクを対象とし,流体と構造を連成したタンクの時刻歴応答解析を行うものである.ここでの解析は,汎用有限要素解析ソフトウェアである ADINA を用いる.時刻歴応答解析を行うに際し,まず固有振動数解析を行い,対象のタンクの固有振動数を推定する.その後,水を入れた状態における静的解析を実施する.さらに時刻歴応答解析を実施し,SUS タンクの固有振動数解析より算出した振動数での正弦波加速度での加振を行う.最後に,熊本地震(前震)益城 NS 波を入力加速度として加振する.これにより変位及びミーゼス応力を算出し,地震波がタンクに与える影響を考察する.その結果タンクの隅角部に降伏点を超える応力集中が生じ,下部隅角部が耐震上の弱点になっている可能性が高いことがわかった.さらに今後の耐震設計条件の設定で必要となる事項を検討するものである.