2020 年 76 巻 2 号 p. I_247-I_257
安定化 ISPH 法は,非圧縮性流れに対する粒子法の一種であり,圧力ポアソン方程式に粒子配置を平滑化するための安定化項を付加した粒子法である.固液混相流解析においては,固液の境界付近で生じる粒子密度の誤差を補正するため,安定化項の影響を大きくする必要がある.一方で,安定化項は物理変数に非物理的な影響を与えるため,激しい流れを伴う固液混相流解析では物理変数の誤差が影響して計算が不安定化する.そこで本研究では,物理変数の更新に用いる流速(物理速度)と粒子の位置更新に用いる流速(輸送速度)を区別し,輸送速度にのみ安定化項の影響を与える選択型デュアル流速 ISPH 法を提案する.提案手法の精度検証としてダム崩壊混相流れの再現解析を行い,実験および従来手法と比較することで提案手法の妥当性と有効性を確認した.