2020 年 76 巻 2 号 p. I_481-I_488
建物や道路からなる都市キャノピーを模擬した加熱粗面上に発達した対流境界層における乱流輸送過程を,ラージエディシミュレーション(LES)により数値的に検討した.粗面なしの理想的な場合との比較を通じて,粗面により温度場と速度場との乱流輸送過程の非相似性が顕著となることを明らかにした.温度場の乱流フラックスは速度場のものと定性的にも一致せず,特に,建物直上において値が急増した.一方,粗面が速度場に与える影響は小さかった.このような乱流フラックスの相違に呼応して,都市キャノピーを含む境界層内に形成される組織構造についても,主流方向に伸長する筋状構造の強度など温度場は速度場と異なる特性を有した.