2020 年 76 巻 2 号 p. I_89-I_96
現在,腐食などで劣化した鋼構造物の CFRP 接着補修に関する研究が多数報告されている.軸力を受ける CFRP 接着補修鋼板では,欠損部の鋼板と CFRP との合成断面を仮定した構造計算による応力が FEM 解析やせん断遅れ理論と一致しないことが確認されている.一方,曲げモーメントを受ける CFRP 接着補修鋼板においてせん断遅れ理論による検討は行われていない.本研究では,等曲げモーメントを受ける断面欠損鋼板を CFRP で補修したモデルを対象に,せん断遅れ理論を用いて鋼板および CFRP に生じる断面力,接着剤に生じるせん断応力および垂直応力の分布特性を明らかにした.また,理論解析の結果から,断面欠損量や CFRP の補修量によっては,CFRP の接着長さを十分に確保した場合においても,合成断面を仮定した構造計算と理論解析が一致しないことを示した.