2021 年 77 巻 2 号 p. I_13-I_24
本研究では,19 種類のベンチマーク関数の最適化問題を通して,比較的新しい群知能であるカッコウ探索アルゴリズムとハイイロオオカミ最適化の探索性能を比較した.その結果,ハイイロオオカミ最適化は探索初期の収束速度の良さに特徴を有する点,カッコウ探索アルゴリズムは多くの短いステップとごく少数の長いステップによるレヴィフライトにより解空間を探索しつつ,局所解から脱却している点について確認できた.次に,群知能の実サイトへの適用として,喜界地下ダム流域を対象に透水係数の空間分布を推定した.実サイトの地質状況を基に,解析領域を 10 区画にゾーニングし,観測水位に適合するように逆推定した結果,カッコウ探索アルゴリズムの方がハイイロオオカミ最適化よりもやや優位な結果を得た.さらに,逆解析の同定結果を溶質輸送解析に連結し,施肥による地下ダムの硝酸汚染リスク算定に応用した.集水井の水質に影響する農地をリスクマップとして可視化する方法を提案し,冬季の施肥が硝酸性窒素の高濃度化を招くことを示唆した.