抄録
津波数値解析技術の高度化およびリモートセンシング技術・地理情報システム(GIS)の普及を背景に,新しい津波被害想定指標としての津波被害関数の概念とその構築手法を提案した.津波被害関数とは,津波による家屋被害や人的被害の程度を被害率(または死亡率)として確率的に表現し,津波浸水深,流速,波力といった津波の流体力学的な諸量の関数として記述するものである.本稿では,被災地の衛星画像,数値解析,現地調査結果および歴史資料の分析を通じて被害関数を構築し,津波外力と被害程度の関係についての考察を行うとともに,被害関数の適用性や工学的利用にあたっての留意点について論じた.