抄録
2011年3月11日の翌朝,筆者は国土交通省関東地方整備局のヘリコプターに搭乗し,関東から東北南部にかけて山岳部や湾岸部の至る所で土砂崩壊や津波が発生し,変わり果てた国土の情景を目の当たりにした.あの東日本大震災から6年,その後も関東・東北豪雨,熊本地震等の大規模な自然災害,また,中央道笹子トンネルの天井板崩落等のインフラの老朽化に起因する事故が後を絶たない.これらの対策として,国土交通省では,道路法の改正,定期点検要領の策定,技術基準の策定,地方公共団体との道路メンテナンス会議の開催など様々な取り組みを行っている.更に,2013年をメンテナンス元年,2016年を生産性革命元年と位置づけ,人口減少化社会を見据えた様々な施策にも取り組んでいる.しかしながら,現場の実態としては,慢性的な人員不足の状況の中で,通常業務に加え,目の前の現場で発生する災害等の対応に追われており,新しい施策についても十分な対応が図られていない状況にある.
本研究は,筆者が現在所属する研究機関における活動と過去に所属した国の研究機関や道路行政機関における経験,及び土木学会の委員会活動等で得られた知見に基づき,道路行政分野を事例に,これからの防災やメンテナンスの対応を中心としたインフラマネジメントの方向性について,自主的に研究・考察したものである.